「職業リハビリテーション」という言葉は、作業療法士なら誰でも知っていると思います。
でも実際この職業リハに関わっている人数って実はけっこう少ないんです。
個人的にはこの領域ってすごい作業療法士としての知識、技術、センスが生かされると思っています。
職業リハビリテーションとは?
職業リハビリテーション(以下職リハ)はその言葉からもイメージとしては浸透していると思います。
ちなみに国際労働期間(ILO)の定義によると、
職業リハビリテーションとは、継続的かつ総合的リハビリテーション過程のうち、障害者が適当な就業の場を得、かつそれを継続することができるようにするための職業的サービス、例えば、職業指導、職業訓練、および選択的職業紹介を提供する部分を言う。
(1955年「障害者の職業リハビリテーションに関する勧告」(第99号勧告)より)
とあります。
その後1983年に「障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約」(第159号条約)及び「勧告」(第168号勧告)では、
職業リハビリテーションの目的は、障害者が適当な雇用(employment)に就き、それを継続し、かつ、それにおいて向上することができるようにすること並びにそれにより障害者の社会への統合または再統合を促進することにある。
と規定されています。
職リハに関わるOTは少ない?
作業療法白書2015によると、全国の作業療法を実施している4,519施設のうち…
全てのOTの59.8%を占める医療施設(2703施設)でも、
・就労前訓練:120(5.9%)
職業リハは需要がないのか?
こういう統計データがでると、「職業リハは需要がないのでは?」と感じる方もいるかと思いますが、実際ジョブコーチや他の障害者就労関連の領域では、「OTはもっと障害者雇用の分野で活躍すべき」という意見を多く聞きますし、実際OTの強みを生かせる点からも職業リハの領域はもっと重要視していく必要があると思っています。
むしろ職業リハに関しては“需要がない”というよりは、OT自身が「よくわからない」「難しそう」と苦手意識を持っていることが最大の要因なんじゃない?とも思っていますが(苦笑)
作業療法士が職業リハで活躍できる理由とは?
ここで少し、OTが職業リハという領域で活躍できる理由について考えてみたいと思います。
そもそもOTはクライアントの「生活」を支援する立場にあります。
この「生活」には、
・動作、活動
・精神、心理
・コミュニケーションや人間関係
・道具や機器、環境
これらの基本的な事項をOTは
・面接
・評価
・分析
・治療的介入
・環境の調整
加えて、上記の基本的な事項を基礎に、その人それぞれの「社会参加」という面にまで目を向けて支援していく必要がありますし、この総合的な支援を得意としているとも言えます。
社会参加…というのはその形も人それぞれではありますが、広義の意味では「他者に貢献できる役割を持つ」ということとも言えます。
それがたとえ個人であっても家庭内であっても、その規模が大なり小なり「他者=社会」に貢献する…と考えるとやはり“職業リハ”という領域は避けては通れなくなってしまいます。
まとめ
とある論文で「その作業療法は病院の中を向いているのか、外を向いているのか」というような一文があったのを強く覚えています(文言は少し違うかもしれませんが)。
どうしても今の作業療法は“上辺だけの作業”によって行われ、理学療法との差別化がはっきりしていない印象も受けます。
もっと「病院の外を向いた作業療法」が必要ですし、そこにOTは強みを見出す必要があると思います。