復職や就労支援を目標にしたクライアントに対して、実際どのような作業療法プログラムを行えばよいのかって非常に迷ってしまうようです。
ADLやAPDLに対しては慣れているものの、「仕事」となるとどのように支援すればよいのかイメージがつきにくいってのも理由かと。
そこで今回は、職業リハにおける作1つの業療法プログラムの過程について解説します。

本記事のテーマと目的
  • 職業リハでの評価や訓練プログラムの流れが理解できる
  • 就労支援や職場復帰支援に関わる方

「復職支援なんてどうしたらいいの?」って方には読んでイメージを付けるための一助になればよいかなと思います!

職業リハのプロセス

まず結論から言えば、就労支援や復職といった職業リハのプログラムは評価に始まり、就労後のフォローで終わると言えます。
プロセスとしては次のとおり。

  1. 情報収集
  2. 面接
  3. 観察
  4. 身体・精神機能評価
  5. 作業能力評価
  6. 作業課題による評価
  7. 職務や職場環境の評価
  8. 就労生活の維持(職場定着)

以下に詳しく解説します。

①情報収集

まず情報収集についてですが、次のようなポイントを押える必要があります。

  • 本人の現在の情報だけでなく、家族背景や社会的背景も知るようにする
  • 人格形成期である幼少児期やそれ以降の生活史といった精神・身体発達の状況を知ることも重要
つまりは今現在の対象者本人を形成した過程と環境についても情報収集するってことになります!

ちなみに、本人に関する情報収集の項目をまとめるとこんな感じになります。

  • 病歴(障害歴):既往歴、現病歴、発生の時期、障害受容の程度など
  • 生活史:生育歴、学歴、学校生活、友人関係、趣味、現在の生活形態
  • 職業歴:就労経験の有無、職務内容、就労期間、離・転職とその理由、その回数、職業観、職業興味、免許(資格)の有無
  • 家族歴:家族の構成、本人との関係、協力の有無、本人に対するニード(期待)、過去・現在の生計維持者、現在の収入の有無(本人)
  • 住宅:住居の有無、持ち家or賃貸、改修の要不要、交通の便、同居人の有無
  • その他:性格傾向、職業発達段階、職業興味、社会資源、本人の反応や態度

②面接

対象者本人の情報収集をした後、実際に面接をしてこの情報をさらに深めていきます。

この面接の目的についてですが2つあります。

  • あらかじめ得た情報の確認を行い、問題点をはっきりさせることと
  • 信頼関係の確立を図ること

意外と最初の面接で信頼関係を上手く築けるかどうかって決まるので注意が必要かもしれません。

この信頼関係を築くためには、支援に必要であるという質問の意図を明確にしておく必要もあります。
内容によっては、「なんでそんな失礼なこと聞くんだ!」なんて思われてしまう可能性もありますからね。

この質問の内容ですが、将来の就労自立を踏まえた、心理、行動、学習などの各機能全般にわたる内容ですとベストです!

つまり面接のポイントとしては、

  • 作業療法の支援についてのオリエンテーションを行う
  • 自己洞察(客観化):障害受容、生活目標、職業観や価値観、家族との関係などを知る
  • 社会的能力:対人関係機能、問題解決能力、言語表現力(思考の内容、論理性)、人格の習熟度、感情の安定性、余暇への関心の有無・度合い
  • その他:性格傾向、希望や不満、困っていることなど
…とまとめられます!

*それでも“面接”ってなんだか苦手…という方はこちらの記事も参照にしてください!
»作業療法における面接の2つの目的とは?
»臨床での面接における4つの記録の方法とは?
»作業療法士が面接を行う上での 6つの注意点とは?

③観察

“面接”の最中でも当てはまりますが、より多くの情報を得るためにはこの“観察”が重要だったりします。

職業リハにおける作業量の場合、作業療法士自身が観察すべき対象者とともに活動に参加しながら観察を行う“参加観察法(自然観察法)”が採られます。
この観察方法は、治療計画の立案を前提とする診断的な行為であり、現実場面の中から課題を拾い上げていく目的で行います。

それらを踏まえたうえでの観察のポイントとしては、

  • 作業課題を提示したときの反応
  • 作業に取り組んでいる最中の態度
  • 自立的or依存的
  • 集中性
  • 耐性
  • 能率(速度)
  • 習熟能力
  • 臨機応変性
  • 応用能力
  • 疲労の程度
  • 服装や身だしなみ
  • 完成時の満足度
…などがあげられます。

ただぼんやりと対象者の様子を観察していても得られる情報は限られてしまうので、このようなポイントを押えた上でしっかりと様子を観察する必要があります。

④身体・精神機能評価

対象者の情報収集を得たあとに、身体・精神機能の評価を行います。

これはただ体が動く、歩くことができる…ではなく、あくまで働くために必要な身体、精神機能を評価することになります。

働くこと=心身機能両面の統合的活動とされていますから、身体と精神の両面からみる必要があるでしょうね。

身体機能

身体機能に対する評価項目としては、主に次のようなものがあげられます。

  • 身体計測:身長、体重(肥満度)、胸囲などの計測
  • 生理学的機能検査:血圧、脈拍、視力、張力、肺活量、平衡機能、知覚-感覚機能
  • 運動機能検査:筋力、筋持久力、握力、関節可動域、巧緻性、協調性、体力

精神機能

精神機能に対してですが、「心が強いor弱い」という短絡的な評価をするのではなく、「ストレスやトラブルに対してどのように柔軟的に捉えることができるか?」というある種の知的機能を評価することになります。
この知的機能とは、因果関係推察力や判断力、本質の直観力なども含まれています。

リハビリテーションでよく評価対象にあがる記憶力、集中力、持続力、運動機能、言語機能…といった機能は、就労生活に必要な知的機能を発揮するための予備的条件として位置づけがされます。
就労生活には得られた知識に対して推理、判断、考察を加えることが求められるということです。

つまりここでいう知的機能とは、

  • 高度の抽象的思考力
  • 問題解決学習に効果的に働く能力
  • 新しい環境への適応能力
…などがあげられます。

⑤作業能力評価

就労生活においては単純な運動能力ではなく、実際の作業に対しての能力が必要とされます。
またこの作業能力というのも、生活動作能力と作業動作能力に分けてみる評価する必要があります。

生活動作能力

就労生活は様々な“生活動作能力”を必要としますので、この能力も評価する必要があります。

  • 職場における日常生活動作
  • 身辺処理動作能力:起居、食事、入浴、排泄、更衣、器具使用など
  • 家事、家庭管理能力:炊事、洗濯、掃除、裁縫、金銭管理、整理整頓
  • 自己管理能力:血圧、生活習慣病などへのリスク管理、服薬管理、栄養管理、精神保健の管理、余暇活動への関心
…こういった項目を評価していきます。

作業動作能力

実際に就労生活に求められる作業や職業能力の中心は、作業遂行能力(能率、量、質)になります。
ただできるorできないだけではなくいかに多く、良質な、かつ効率的に作業の遂行を行えるか?が問われます。

作業能力の程度によって就労自立の成否が左右されたり、職場不適応の原因になったりするので非常に重要な項目とも言えます。

就労生活に必要な基本的能力としては次の通りになります。

  • コミュニケーション能力:会話、電話や郵便物の処理、読解、書字
  • 数理能力:計算、金銭の取り扱い
  • 通勤能力:自転車、電車、バスなどの利用(自動車運転、混雑時の歩行)

また、就労生活に必要な基本的作業動作としては次の通りになります。

  • 作業耐久性:剤、立位の他に心理的耐性を含めた作業体制、疲労の程度
  • 作業習慣:遅刻、早退などの出席状況、規則順守、整理整頓、安全への配慮
  • 作業態度:作業に対する要求水準、興味、人・集団・組織に対する適応性、責任感、自信、自己の認識、指導性(or支配性)の有無
  • 作業技術:作業遂行速度(能率)、正確性、巧緻性、機械器具の操作能力、作業手順、要領の理解
これらの作業能力はどんな職種であれ求められる能力であり、職業リハにおける作業療法支援の目標になります。

⑥作業課題による評価

職業リハでの作業療法において、作業課題による評価とは次のものがあげられます。

  • 一般職業適性評価:対象者の職業遂行能力を9つの項目に分けて評価する
  • 職務分析:作業者の従事する職務を分析し、職務遂行上の必要条件を1つ1つ明らかにするもの
  • 作業療法課題観察法(OTTOS):対象者の参加状況、道具、材料の用い方、指示理解、作業の質といった作業遂行上の問題を評価する
  • 作業課題の準備
  • 標準化:具体的かつ実際的な検査や訓練計画を実施するために行う
作業能力評価は、職業リハの作業療法の支援んで最も中心となるものといえるね!
評価結果は、現実的、具体的で、他職種や他機関に理解されるようなものである必要があるなんても言われていますよね?
そのために作業療法士は作業課題を組んで、実際的な結果を出すことが必要なんだね!

⑦職務や職場環境の評価

就労や復職は本人の能力だけでなく、雇用する側である事業主の配慮も必要不可欠になります。

作業療法士が得る必要のある情報としては、

  • 企業の業種
  • 規模
  • 所在地
  • 通勤所要時間
  • 配属される部門と職務
  • 職場環境
これは、現職復帰、もしくはある程度の就労先が絞れる場合に必要とされます。
また、職務の内容については、対象者の能力との適合性を評価するために職務分析を行い、同時にそれをもとに作業課題を組んで実際的評価を行う必要があります。

⑧就労生活の維持(職場定着)

無事に就労することができても、その就労生活を維持することができなければ支援は不十分になってしまいます。
一度就労しても、離職や転職してしまう理由としては大きく分けると次の3つになります。

  • 仕事についていけない(量)
  • 仕事がうまくできない、能力に合ってない(質)
  • 職場に嫌な人がいる(人間関係)
これらの理由を踏まえ、いかに長く就労生活を維持できるようにするか?を考え支援するのも、職業リハに関わる作業療法士の務めと言えます。

まとめ

就労支援、や復職を目標にした職業リハ関連の支援って、多くの作業療法士にとっては不慣れなことから非常に戸惑ってしまうことが多いようです。
基本的な流れやプログラムの過程を把握することで、就労や復職、そして定着につなげることができるのだと思います。

作業療法士は語りたい!

ADLやAPDLの獲得といった、作業療法プログラムとは大きく異なりますね。
在宅復帰や身辺自立とは違い、雇用する事業主っていう環境面にも配慮した支援でないといけないからね。