「あの子は物覚えが悪いから」
「どうやって理解力が低い子に教えたらいいのかわからない」

それが教育現場でも仕事でも、「誰かに何かを教える」ってことは非常に難しいことです。
ましてや理解力が低かったり、物覚えが悪いとされる相手の場合はなおさら…。

指導や教育に関して、「その人なりの方法」や「経験」に任せてしまうと非常に人によって差がでてしまい致命的とも言えます。

そこで今回は指導する、教育することを体系的にした手法である「システマティックインストラクション」について解説します。

想定読者は

  • 就労支援関係者
  • 教育関係者
  • 企業での研修や指導担当者
  • …といった方々を想定しています。

    システマティックインストラクションとは?

    システマティックインストラクションとは、

    経験や思いつきで物事を教えるのではなく、相手の理解度に合わせて介入の度合いを順序だてて系統的に教える事

    …とされています。

    対象

    システマティックインストラクションの対象ですが、この手法は就労支援に関するジョブコーチや職業リハ関連で使用されるため、

    • 発達障害
    • 知的障害
    • 精神障害

    …といった障害を有する人を対象にしています。

    しかし、障害で対象とするよりは「作業手順が理解しにくい」「物覚えが悪い」といった状態の人に対して効果的な点も考慮すると、非常に幅広い人を対象とすることができます。

    効果

    システマティックインストラクションは指導や教育する人の経験や知識、方法などに関係なく“体系化”されている方法のため、指導、教育における人的差異を軽減することができます。
    つまり「Aさんの指導はいいけど、Bさんの指導はよくない」という状態を避けることができるとされています。

    システマティックインストラクションの方法について

    では、実際にシステマティックインストラクションとはどのような方法になるのでしょうか?

    “指示の階層”という考え方から解説します。

    4つの指示の階層

    システマティックインストラクション
    システマティックインストラクションは次の4つの指示方法の階層で構成されています。

    1. 言語指示
    2. ジェスチャー
    3. 見本の提示
    4. 手添え

    この4つは①が介入度が一番低い指示で④が一番高い介入度となります。

    以下に詳しく解説します。

    言語指示

    “言語指示”はシステマティックインストラクションでも一番介入度が低い指示方法です。
    ABA(応用行動分析)での“言語プロンプト”になります。

    また、言語指示は『間接言語指示』と、『直接言語指示』の2段階に細分化されます。

  • 間接言語指示:「次はなんですか?」「それを取ってください」
  • 直接言語指示:「ロープを取ってください」「蓋をあけてください」
  • ジェスチャー

    その次の段階の指示方法は“ジェスチャー”になります。
    ABA(応用行動分析)では“視覚プロンプト”の一つになります。

    ジェスチャーは『指差し』と『動作を見せる』の2段階に細分化されます。

    見本の提示

    3段階目の指示方法は“見本の提示”となります。
    これも視覚プロンプトの一つです。

    さらに見本の提示も、『先行モデリング』と『同時モデリング』に細分化されます。

  • 先行モデリング:実際に先にやってみせる
  • 同時モデリング:一緒にやって見せる
  • 手添え

    最後の指示の段階としては“手添え”になります。
    ABA(応用行動分析)では“身体プロンプト”とされています。

    この手添えは『シャドーイング』と『直接手添え』に細分化されます。

  • シャドーイング:直接身体には触れないで、数cm離して指導者が手を添える手法
  • 直接手添え:指導者が手を添えて、正しい動きをするよう誘導する手法
  • まとめ

    作業の指示や教育において、ただ闇雲に経験則で教えることは相手によっては非常に非効率的になってしまいます。
    そこでこのシステマティックインストラクションと呼ばれる体系化された手法を用いることが有効になります。

    システマティックインストラクションとは…

    • 相手の理解度に合わせて介入の度合いを順序だてて系統的に教える事
    • ジョブコーチによる就労支援の現場で使われている手法
    • 発達障害や知的障害を対象にしているが、利用次第では幅広く可能
    • 体系化された方法のため、指導、教育における人的差異を軽減させる効果がある
    • 方法としては4つの指示方法の階層で構成されている

    作業療法士は語りたい!

    山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」って名言はまさにこのシステマティックインストラクションの手法に近いと思うよ。
    ただ闇雲に、一方的に教えたり指導したって、それで理解できていないのなら、
    教える側が方法を変える必要がありますよね。
    物事を教える立場の人は「わからない相手が悪い」のではなく、
    「わかりやすく教えられない自分が悪い」という心がけが必要だろうね!
    上手な教え方の教科書 ~ 入門インストラクショナルデザイン

    上手な教え方の教科書 ~ 入門インストラクショナルデザイン

    向後 千春
    2,138円(08/19 17:57時点)
    発売日: 2015/08/05
    Amazonの情報を掲載しています