棘上筋は回旋筋腱板の筋の一つで、肩の外転作用に働く重要な筋です。
しかし、非常に損傷しやすい筋にもなります。
本記事では、棘上筋の…
- 解剖学(起始・停止・働き・神経・血管)
- 働き、機能、役割
- 回線筋腱板について
- トレーニングやエクササイズ方法について
- インピンジメント症候群との関係
…などについて解説します。
目次
棘上筋の起始・停止について
棘上筋の起始、停止についてですが…
- 起始:棘上窩、棘上筋膜の内面
- 停止:上腕骨大結節の上部
…となります。
以下に詳しく解説します。
起始
棘上筋は棘上窩、棘上筋膜の内面を起始として、長い三角形を形成します。
そして肩峰の下を外方に走ります。
停止
棘上筋の腱は、関節包に癒着しながら関節の上を越え、上腕骨大結節の上部に付着し停止します。
位置
棘上筋の位置についてですが、回旋筋腱板で浅層に位置します。
またその上層には、肩峰下滑液包、烏口肩峰靭帯、三角筋が存在しています。
棘上筋の支配神経について
棘上筋の支配神経は…
…となります。
棘上筋への血液供給動脈につい
棘上筋へ血液供給を行っている動脈は…
…になります。
棘上筋の主な働き
では、棘上筋は主にどのような働きを担うのでしょうか?
結論から言えば、棘上筋は三角筋と共に…
…の作用に働きます。
また、肩甲上腕関節の下方の固定性と上腕骨の「転がり」「滑り」を担うことになります。
つまり、肩関節外転時の三角筋による上腕骨骨頭の上方移動を防ぐ役割を担っています。
⽇常⽣活動作
日常生活において棘上筋は…
…に作⽤します。
スポーツ動作
スポーツ動作において棘上筋は…
…などで主に作用します。
棘上筋の表記・読み方について
英語
棘上筋は英語で…
…と表記します。
ラテン語
またラテン語では…
…と表記します。
読み方
棘上筋の英語やラテン語での読み方としては…
…となります。
棘上筋と回旋筋腱板
棘上筋は…
- 棘下筋
- 肩甲下筋
- 小円筋
…と共に回旋筋腱板(ローテーターカフ)を形成しています。
ちなみに、この4つのなかでは棘上筋が機能上、最も重要な筋⾁ですが、同時に最も傷害を受けやすい筋⾁になります。
棘上筋のトレーニング・エクササイズ
棘上筋の筋力を強化するためのトレーニングやエクササイズについて解説します。
代表的なものには…
- Empty Cans Exercise
- Full Cans Exercise
…があげられます。
以下に詳しく解説します。
Empty Cans Exercise(エンプティカンエクササイズ)
“Empty Cans Exercise”の肢位ですが…
- 肩関節外転90°
- 水平内転30°
- 肘関節伸展0°
- 前腕回内位
…になります。
棘上筋の筋力強化エクササイズの最初の提案として、1982年に“Jobe”と“Moynes”が報告しています。
Full Cans Exercise(フルカンエクササイズ)
“Full Cans Exercise”の肢位は…
- 肩関節外転90°
- 水平内転30°
- 肘関節伸展0°
- 前腕回外位
…になります。
“Empty Cans Exercise”とは、前腕が回外位という点で異なります。
“Empty Cans”と“Full Cans”の違いについて
肩関節の動的な安定性を保証するためには、棘上筋の働きが必要不可欠です。
理由としては、腱板構成筋のひとつである棘上筋によって、肩関節外転時の三角筋による上腕骨骨頭の上方移動を防ぐ作用を担うからになります。
“Empty Cans”エクササイズは、肩関節が内旋位である点から疼痛の誘発と肩峰下インピンジメントを起こしやすいとされています。
そのため、肩関節を外旋位で行う“Full Cans”エクササイズの方が、疼痛の誘発が少ないトレーニング方法として優秀と言えます。
棘上筋に関連疾患
棘上筋が主な原因で起こる疾患として…
- 腱板損傷
- 腱板炎
- 肩峰下インピンジメント症候群
- 肩関節不安定症
- 肩甲上神経⿇庫
…などがあげられます。
棘上筋とインピンジメント症候群
インピンジメント症候群とは…
…を言います。
前述したように、棘上筋は回旋筋腱板の筋の中では機能上、最も重要な筋⾁です。
しかし、同時に最も傷害を受けやすい筋⾁ともされています。
インピンジメント症候群の症状
インピンジメント症候群の初期は…
- 手を真横に上げづらい
- 結帯動作(⼿を腰の後ろにまわす)がしづらい
- 結髪動作(⼿を後頭部にもっていく)がしづらい
…といった疼痛を伴う動作困難の症状があげられます。
しかし、重症化すると疼痛が悪化し、どの姿勢でいても常に肩が痛い…という状態になり日常生活への大きな支障となる場合があります。
脳卒中片麻痺のインピンジメント症候群について
繰り返しますが、棘上筋の筋力低下などによる機能の低下によってインピンジメント症候群を引き起こす場合が多くあります。
これは、脳卒中を発症し片麻痺を呈した患者にも多くみられます。
麻痺によって棘上筋を含めた肩周囲の筋力の弱化の結果、麻痺側の肩関節の下方亜脱臼となり疼痛につながっている…ということになります。
棘上筋の断裂について
棘上筋腱はしばしば完全に断裂してしまうことがあります。
野球の投球動作や水泳など、肩を酷使する人に多いだけでなく、転倒や外傷によっても起こる場合があります。
まとめ
本記事では棘上筋について解剖学やトレーニング方法などについて解説しました。
- 棘下筋、肩甲下筋、小円筋と回旋筋腱板(ローテーターカフ)を形成する
- 棘上窩・棘上筋膜の内面を起始とし、上腕骨大結節の上部に停止する
- 肩甲上神経の支配を受け、肩甲上動脈によって栄養供給される
- 主に肩関節外転の働きを担う
- トレーニング方法としては、Empty Cans Exercise・Full Cans Exerciseがある
- 棘上筋が原因で疼痛やインピンジメント症候群を引き起こす場合がある