Rehabilitation

STEF(上肢機能検査)-目的・対象・検査方法・注意点・平均値・カットオフ値など

 
STEF(上肢機能検査)の目的や検査対象、検査方法、実施における注意点、平均値やカットオフ値など

上肢機能検査でも頻繁に作業療法の臨床や現場で使われるものとして“STEF”があげられます!
今回はこの“STEF”による検査方法、カットオフ値や注意点についてまとめてみました!

STEF(上肢機能検査)について

画像引用:簡易上肢機能検査 ステフ STEF(Simple Test for Evaluating Hand Function

簡易上肢機能検査(Simple Test for Evaluating hand Function:STEF)は10種類の下位テストから構成されています。
それぞれ大きさや形の異なる物品を把持して移動させる…という一連の動作に要した時間を計測し、決められた点数(1~10点)を加えて右手と左手との差を左右別に合計点数を算出します。
また多くの臨床データもあるため参考値と被験者であるクライアントととの比較検討も可能となっています。

目的

STEFの検査目的としては上肢の動作能力、特に動きの早さを客観的に、しかも簡単に短時間で把握することとされています。

開発背景

STEFは、1969年頃に東京都心身障害者福祉センターに作業療法士として勤務していた“金子 翼”氏が考案し、上肢の動作能力、特に動きの速さを客観的に把握する目的で開発され、5年後の1974年に「理学療法と作業療法 Vol.8 No.3」にて発表されました。
その後1986年に市販され広く作業療法の臨床や現場で使われるようになりました。

対象

STEFによる検査の適応対象としてですが、特に疾患に限定されるものではありません。
あくまで上肢機能が低下している者とされています。

作業療法の臨床や現場で多いSTEFの適応例としては以下のようなケースがあげられます。

  • 脳卒中による片麻痺(麻痺側と非麻痺側上肢の比較・麻痺側上肢機能の経時的変化)
  • 頸髄損傷による上肢機能低下
  • リウマチによる上肢(特に巧緻性)機能低下

頸髄損傷やリウマチの場合は、平均値との点数の比較をすることで現段階がどの程度の上肢機能なのかを判断することができること、また課題項目においてどのような動作が苦手なのかを把握することができます。

この客観的評価と、下位テスト実施中の上肢機能への観察を行うことで、作業療法訓練プログラムの立案要素としたり、日常生活活動上で起こりえる問題の想定と対策、上肢機能の経時的変化(回復過程)への評価につなげることができます。

同じSTEF検査を行うとしても、被験者の疾患や状態、そして検査目的によって検者側の視点が変わってくるので注意が必要です!

所要時間

約20分

特徴

STEFの検査の特徴としては、なによりも課題遂行に必要な“作業スピード”が重視される点があげられます。
決められた大きさや形、重さや素材が異なる10種類の検査物品をそれぞれ移動させ、その移動に要する時間を測定することで被験者の上肢動作機能を客観的に評価することが求められるので、検査物品も標準化されたキットを使用する必要があります。

STEFのメリット・デメリット

では、ここでSTEFを実施する際ののメリットとデメリットについて触れてみます。

メリット

  • STEFによる臨床検査データがあるため、世代別での比較、健常者との比較がすぐに可能な点
  • 定期的に検査を行うことで被験者の上肢機能の経時的な変化を追うことが可能
  • 10種類の大きさや形の異なる物品を把持して移動させるという下位テストで構成されていることから、被験者の上肢のどの部分に制限があり、どのような動きが苦手なのか、どの運動方向に問題を抱えているのかという定性的な評価も行うことができます。
  • 対象が限定的でなく、幼児から高齢者まで幅広いこと
デメリット

  • 上肢に重篤な麻痺がある場合は検査項目の実施が困難なため検査不可能となり、STEFにはそれを拾い上げる代替手段がないこと
  • 脳卒中による片麻痺を呈したクライアントに対して実施する場合、重篤な注意障害、半側空間無視といった高次脳機能障害がある場合は純粋な“上肢機能”としてのデータとは言えない場合があること
  • 臨床検査データと比較するためにも、販売されている決められたSTEFの検査用具を使用しなければならないこと
  • 検査を実施する際に“爪の長さ”によって誤差が生じる場合もあるため、検査を行う際に注意や配慮が必要なこと

注意点

STEFを行う際の注意点としては以下のとおりです。

  • すべての下位検査では、開始位置の手を上図の印の位置にします。
  • 測定時間の単位は小数点1位秒まで
  • 被検手の順は、利き手or非麻痺側、もしくは障害の程度が軽い側から行います
  • 対象物を落としてしまったり、所定の場所に移すことを誤った場合はやりなおします
  • ただし3回とも失敗した場合はその下位検査は「不能」と判断されます

方法

ではSTEFの10種類の検査について詳しくまとめてみます。
*執筆の便宜上“左片麻痺”の場合を想定しています

検査1:大球

   
開始配置 上図のように大球を枠内に配置
指示 「このボールを右手で反対側に入れましょう。
どのボールからでもかまいませんが、できるだけ早く行いましょう」
デモ 3個を右枠内から左枠内へ移動
終了基準 5個目のボールが所定の位置に入れられた瞬間
制限時間 30.0秒

検査2:中球

   
開始配置 上図のように中球を近位枠内に3個ずつ適当に配置
指示 「この球をこうやって、ここに入れましょう。
右の球から順番に、できるだけはやくやりましょう」
デモ 検者が右側の中球3個を近位枠内から右枠内に移動
終了基準 左右3個の中球が近位枠内へ移動
制限時間 30.0秒

検査3:大直方体

   
開始配置 大直方を左枠内の外側・上側につめて配置
指示 「これを右手でこうやって反対側に入れましょう。
どれからでもかまいませんが、できるだけ早く行いましょう」
デモ 検者が大直方3個を左枠内の一番下から順に右枠内の上から順に移動する
終了基準 5個の大直方を右枠内に移動
制限時間 40.0秒

検査4:中立方体

   
開始配置 中立方を右枠内の上線と下線に3個ずつ配置
指示 「これを右手でこうやってここに入れましょう。
どれからでもかまいませんが、できるだけ早く行いましょう」
デモ 検者が中立方3個を右枠内から近位枠内の左側に移動する
終了基準 6つの中立方を近位枠内に移動
制限時間 30.0秒

検査5:木円板

   
開始配置 近位枠の右外に6個配置
指示 「これを右手でこうやって順番にここに入れましょう。
できるだけ早く行ってください。」
デモ 検者が左側の木円板3個を順に近位枠内の左側に移動
終了基準 6個の木円板を近位枠内に移動
制限時間 30.0秒

検査6:小立方体

   
開始配置 小立方を遠位枠外の右に6個配置
指示 「これを右手でこうやってここに入れましょう。
きっちり並べる必要はありませんし、どれからでもかまいません。
ただできるだけ早く行ってください。」
デモ 検者が小立方3個を近位枠内の左半分に移動する
終了基準 6個の小立方を近位枠内に移動
制限時間 30.0秒

検査7:布

   
開始配置 ビニール布を検査代のほぼ中央に上下3枚ずつ枚配置
指示 「これを右手で裏返しましょう。
裏返した後はきっちり並べる必要はありません。
どれからでもかまいませんからできるだけ早く行いましょう。」
デモ 検者がビニール布3枚を裏返す
終了基準 6枚のビニール布を全て裏返す
制限時間 30.0秒

検査8:金円板

   
開始配置 近位枠内に左右3枚ずつ配置
指示 「これを右手でこうやってここに入れましょう。
どれからでもかまいませんが、できるだけ早く行いましょう。」
デモ 検者が金円板3枚を遠位枠内に移動
終了基準 6枚の金円板をすべて遠位枠に移動
制限時間 60.0秒

検査9:小球

   
開始配置 小球6個を遠位枠内に配置
指示 「これを右手でこうやってここに入れましょう。
どれからでもかまいませんからできるだけ早く行いましょう」
デモ 検者が小球3個を近位枠内に移動
終了基準 6個の小球がすべて近位枠内に移動
制限時間 60.0秒

検査10:ピン

   
開始配置 ピン6本を近位枠内に右傾させて配置
指示 「これを右手でこうやってここに差し込みましょう。
どれからでもかまいませんからできるだけ早く行いましょう。」
デモ 検者がピン3本を遠位枠下線にある所定の穴にさしこむ
終了基準 6本のピン全て穴に差し込む
制限時間 70.0秒

*その検査項目の制限時間に達した場合は「ハイ」と声掛け、ストップウォッチを停止し、どの程度までできたかを記録します。

STEFの満点について

STEFの10項目の下位テストはそれぞれが10点満点のため、10項目の合計で100点満点とされています。

カットオフ値と平均値

STEFの場合、カットオフ値での判断というよりは、年齢平均値で考えたほうが妥当のようです。


引用:STEF公式マニュアル

リハビリの様々な検査のカットオフ値についての記事一覧はこちら

差の指標について

STEFの下位テストにはそれぞれ“差の指標”が設定されています。
これは検査、再検査を行った場合その間に差があるかどうかをみるために設定されています。
例としてあげれば、
検査1(大球)の測定値が1回目は9.6秒(7点)、2回目の再検査の際は9.1秒(8点)の場合、得点上は1点上昇したものの、その測定値の差は0.7秒になります。
この検査1の“差の指標”は1.2秒なので、1回目と2回目の測定値の差はこの差の指標以下ということで、上肢機能として「早くなった」とは言えないと判断されます。

作業療法の臨床や現場でSTEFを使用して経時的な検査を行い、その結果をクライアントにフィードバックする際に、ただ「全体の点数が上がったから上肢機能が向上した」という表現ではなく、差の指標と測定値を照らし合わせ、10種類の下位テスト別に分けて結果を伝えることが重要です。

観察事項

STEFの検査表にある観察事項欄には、測定中に観察された被験者の状況について記録します。

評価用紙・記録用紙(pdf)について

STEFの検査用紙は別で追加購入可能になってます(20枚綴り・¥550)

STEF計測ソフトウェアについて

STEF計測ソフトウェアが酒井医療株式会社より無料でダウンロード可能になっています。

まとめ

上肢機能…特にその作業スピードを定量的に検査する方法としてはSTEFが代表的な検査だと思います。
多くの検査データを有している点からも比較検討しやすいということも非常に魅力的です。
作業療法士にとってクライアントの上肢機能の把握は避けては通れない課題でもあるので、しっかりとこの検査方法と解釈について知っておかないといけないでしょうね!

Q&A

    

STEFによって検査物品が木製の場合と樹脂の場合があるのですが、どうしてでしょうか?
1986年に市販された段階では検査2(中球)、検査2(大直方)、検査4(中立方)、検査5(木円盤)、検査6(小立方)は木製でしたが、温度や湿度などによる経年劣化の可能性があるため、2006年からは劣化しにくい樹脂製に変更したSTEFを販売しているようです。
検査物品が木製の場合と樹脂製の場合とでは、臨床検査データに差ができるのではないか?
樹脂製の検査物品に変更したバージョンのSTEFを販売するにあたって、新旧の両検査の併存的妥当性を検討した結果、全てのサブテストにおける点数に有意差がみられないこと、新・旧検査結果の相関についてもp=0.0001以下の高い相関を示していることがわかり、データ上問題がないことが公表されています。

作業療法士は語りたい!

STEFは10種類の代表的な“手の動作”項目で構成されている点からも、非常に応用的に使えそうですよね!
STEFを実施して被験者の苦手な動きを把握し、
その動きを伴った動作や活動、作業を用いて訓練的な要素に加えていく…って手法が理想的かもね!
もちろんその訓練もクライアントにとって意味があって面白い作業でないといけないんですよね!

 

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