リハビリテーション評価

脳卒中の機能障害評価法であるSIASの方法と点数、カットオフ値について!

 

脳卒中の機能を総合的に評価するツールとして脳卒中機能障害評価セット(stroke impairment assessment set: SIAS)があげられます。
今回はこのSIASによる脳卒中の評価方法と点数配点、カットオフ値についてまとめてみました。

SIASとは?



SIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能障害評価法)は脳卒中発症による機能障害を定量化するための総合評価指標の一つで、1989年に開発されています。
同じような評価方法にNIHSSFMAがあげられますが、この二つの評価では運動に関する評価のみで、高次脳機能障害などについては触れられない評価方法でした。
SIASは運動機能障害のみならず、高次脳機能障害も評価対象項目であることから、総合的に評価することができます。

SIASによる評価の目的について

前述したように脳卒中発症後のクライアントの機能障害を定量化し評価することが目的と言えます。
きちんと数値として評価することで、2回目以降のSIAS結果によって経時的変化を確認することができますし、統計処理を行うことができます。

使用物品

SIASを実施する際に必要な物品としては、

・評価用紙
・打鍵器
・握力計
・メジャー
…などがあげられます。

SIASの評価項目について

SIASは以下の9種類の機能障害に分類される、22項目から構成されています。

①麻痺側運動機能(5項目)
②筋緊張(4項目)
③感覚障害(4項目)
④関節可動域(2項目)
⑤疼痛(1項目)
⑥体幹機能(2項目)
⑦視空間認知(1項目)
⑧言語機能(1項目)
⑨非麻痺側機能(2項目)

また各項目ともに3点or5点満点で評価され、障害の程度が軽い程得点は高くなります。

運動機能

①上肢近位(knee-mouth test)

評価方法としては、

・座位にて、麻痺側の手を非麻痺側の膝(大腿)上より挙上し、手を口まで運ぶ(肩は90°外転)させる。
・膝上まで戻す×3回
・肩、肘関節に拘縮が存在する場合は可動域内での運動をもって課題可能と判断する。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:全く動かない。
1点: 肩のわずかな動きがあるが手部が乳頭に届かない。
2点:肩肘の共同運動があるが手部が口に届かない。
3点:課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり。
4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり。
5点:健側と変わらず、正常。
…となります。

②上肢遠位(finger-function test)

評価方法としては、

・手指の分離運動を、母指~小指の順に屈曲、小指~母指の順に伸展する

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:全く動かない。
1点:1A:わずかな動きがある。または集団屈曲可能。
   1B:集団伸展が可能。
   1C:分離運動が一部可能。
2点: 全指の分離運動可能なるも屈曲伸展が不十分である。
3点: 課題可能(全指の分離運動が十分な屈曲伸展を伴って可能)。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり。
4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり。
5点:健側と変わらず、正常。
…となります。

③下肢近位(股)(hip-flexion test)

評価方法としては、

・座位にて股関節を90°より最大屈曲させる。
・3回くりかえす

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:全く動かない。
1点: 大腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない。
2点: 股関節の屈曲運動あり、足部は床より離れるが十分ではない。
3点:課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり。
4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり。
5点:健側と変わらず、正常。
…となります。

④下肢近位(膝)(knee-extension test)

評価方法としては、

・座位にて膝関節を90°屈曲位から十分伸展(-10°程度まで)させる
・3回繰り返す

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:全く動かない。
1点: 下腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない。
2点: 膝関節の伸展運動あり、足部は床より離れるが、十分ではない。
3点:課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり。
4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり。
5点:健側と変わらず、正常。
…となります。

⑤下肢遠位(foot-pat test)

評価方法としては、

・座位または臥位、座位は介助しても可
・踵部を床につけたまま、足部の背屈運動を協調しながら背屈・底屈を3回繰り返し、その後なるべく早く背屈を繰り返す。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:全く動かない。
1点:わずかな背屈運動があるが前足部は床から離れない。
2点:背屈運動あり、足部は床より離れるが十分ではない。
3点:課題可能。中等度のあるいは著明なぎこちなさあり。
4点:課題可能。軽度のぎこちなさあり。
5点:健側と変わらず、正常。
…となります。

筋緊張

⑥上肢筋緊張 U/E muscle tone

評価方法としては、

・肘関節を他動的に伸展屈曲させ、筋緊張の状態を評価する。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:上肢の筋緊張が著明に亢進している。
1点:1A:上肢の筋緊張が中等度(はっきりと)亢進している。
   1B:他動的筋緊張の低下。
2点:上肢の筋緊張が軽度(わずかに)亢進している。
3点:正常、非麻痺側と対称的。
…となります。

⑦下肢筋緊張 L/E muscle tone

評価方法としては、

・膝関節の他動的伸展屈曲により評価する。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:下肢の筋緊張が著明に亢進している。
1点:1A:下肢の筋緊張が中等度(はっきりと)亢進している。
   1B:他動的筋緊張の低下。
2点:下肢の筋緊張が軽度(わずかに)亢進している。
3点:正常、非麻痺側と対称的。
…となります。

⑧上肢健反射 U/E DTR(biceps or triceps)

評価方法と点数配点は、

0点:“上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射が著明に亢進している。あるいは容易にクローヌス(肘、手関節)が誘発される。
1点:1A: “上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射が中等度(はっきりと)に亢進している。
   1B: “上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射がほぼ消失している。
2点:“上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射が軽度(わずかに)亢進。
3点:“上腕二頭筋”あるい“上腕三頭筋”反射とも正常。健側と対称的。
…となります。

⑨下肢反射 L/E DTR(膝蓋腱反射:PTR orアキレス腱反射:ATR)

評価方法と点数配点は、

0点:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”が著明に亢進している。あるいは容易にクローヌス(膝、足)が誘発される。
1点:1A:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”が中等度(はっきりと)に亢進している。unsustained clonusを認める。
  1B:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”がほぼ消失している。
2点:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”が軽度(わずかに)亢進
3点:“膝蓋腱反射”あるいは“アキレス腱反射”とも正常。健側と対称的。
…となります。

感覚

⑩上肢触覚 U/E light touch(手掌)

評価方法と点数配点は、

0点:強い皮膚刺激もわからない。
1点:重度あるいは中等度低下。
2点:軽度低下、あるいは主観的低下、または異常感覚あり。
3点:正常。
…となります。

⑪下肢触覚 L/E light touch(足底)

評価方法と点数配点は、

0点:強い皮膚刺激もわからない。
1点:重度あるいは中等度低下。
2点:軽度低下、あるいは主観的低下、または異常感覚あり。
3点:正常。
…となります。

⑫上肢位置覚 U/E position(母指or示指)

評価方法としては、

・指を他動的に運動させる。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:全可動域の動きもわからない。
1点:全可動域の運動なら方向がわかる。
2点:ROMの1割以上の動きなら方向がわかる。
3点:ROMの1割未満の動きでも方向がわかる。

⑬下肢位置覚 L/E position(母趾)

評価方法としては、

趾を他動的に運動させる。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:全可動域の動きもわからない。
1点:全可動域の運動なら方向がわかる。
2点:ROMの5割以上の動きなら方向がわかる。
3点:ROMの5割未満の動きでも方向がわかる。

関節可動域、疼痛

⑭上肢関節可動域 U/E ROM

評価方法としては、

・他動的肩関節外転を行う。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:60°以下
1点:90°以下
2点:150°以下
3点:150°以上

⑮下肢関節可動域 L/E ROM

評価方法としては、

・膝伸展位にて他動域足関節背屈を行う。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:-10°以下
1点:0°以下
2点:10°以下
3点:10°以上

⑯疼痛 pain

評価方法と点数配点は、

0点:睡眠を妨げるほどの著しい疼痛
1点:中等度の疼痛
2点:加療を要しない程度の軽度の疼痛
3点:疼痛の問題がない

*脳卒中に由来する疼痛の評価にて行うので、既往としての整形外科的(腰痛など)、内科的(胆石など)疼痛は含めない点が注意。
また過度でない拘縮伸長時のみの痛みも含めない。

体幹機能

⑰垂直性 verticality test

評価方法と点数配点は、

0点:座位がとれない。
1点: 静的座位にて側方性の姿勢異常があり、指摘・指示にても修正されず、介助を要する。
2点: 静的座位にて側方性の姿勢異常(傾で15°以上)があるが、指示にてほぼ垂直位に修正・維持可能である。
3点:静的座位は正常。

⑱腹筋 abdominal MMT

評価方法としては、

・車椅子または椅子に座り、臀部を前にずらし、体幹を45度後方へ傾け、背もたれによりかかる。
・大腿部が水平になるように検者が押さえ、体幹を垂直位まで起き上がらせる。
・抵抗を加える場合には、胸骨上部を押さえる点に注意

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:垂直位まで起き上がれない。
1点:抵抗を加えなければ起き上がれる。
2点:軽度の抵抗に抗して起き上がれる。
3点:強い抵抗に抗して起き上がれる。

高次脳機能

⑲視空間認知 visuo-spatial deficit

評価方法としては、

・50cmのテープを眼前約50cmに提示し、中央を健側指で示させる
・これを2回行い、中央よりのずれの大きい値を採用する。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:15cm以上。
1点:5cm以上。
2点:3cm以上。
3点:3cm未満。

⑳言語 speech

評価方法と点数配点は、

0点:全失語症。まったくコミュニケーションがとれない。
1点:1A: 重度感覚性失語症(重度混合性失語症も含む)。
   1B:重度運動性失語症。
2点:軽度失語症。
3点:失語症なし。
*失語症に関して評価する。構音障害はこの項目には含めない。

健側機能

㉑握力 gripstrength

評価方法としては、

・座位で握力計の握り幅を約5cmにして計測する。
・その際非麻痺側の具体的kg数を記載すること

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:握力0kg。
1点:握力10kg以下。
2点:握力10~20kg。
3点:握力25kg以上。

㉒健側大腿四頭筋力 quadriceps MMT

評価方法としては、

・座位における健側膝伸展筋力を評価する。

点数配点とそれぞれの内容ですが、

0点:重力に抗しない。
1点:中等度に筋力低下。
2点:わずかな筋力低下。
3点:正常。

SIASのカットオフ値について

SIASは脳卒中のリハビリテーションにおいての予後予測としても活用される点から、その点数によって歩行が自立できるか否か先行研究も多くされています。
しかし、論文によってそのカットオフ値には変動があり、明確なカットオフ値は設定されていないというのが事実のようです。

参考値の一つとしてあげるならば、

SIAS項目 カットオフ値
SIAS総点 59点
SIAS-LE(運動機能・下肢) 9点
SIAS Trunk(体幹機能) 3点
SIAS-S(感覚機能) 9点

*参考論文:脳卒中患者の退院時歩行自立のための入棟時 SIAS カットオフ値の算出

リハビリの様々な検査のカットオフ値についての記事一覧はこちら

SIASのエビデンスグレードについて

日本理学療法士協会が発表している『推奨グレードの決定およびエビデンスレベルの分類』によれば、SIASは推奨グレードAであり、信頼性、妥当性のあるものとして決定されており、motricity indexBrunnstrom stageNIHSS よりも反応性がよいともされています。

まとめ

脳卒中の発症時より、その機能を点数化し予後予測を立てることは、クライアントの生活再建、社会参加支援まで行う作業療法士にとっては非常に必要なことと言えます。
ある程度の予測を立てたることで、早期の段階でそのクライアントに必要な環境設定や代替手段の“準備”をしておくことも重要なんだと思います。

作業療法士は語りたい!

予後予測っていう観点では、多くの事例データと客観的な数字によって成立するけど、
結局は確率的な話になっちゃうと思うんだよね。
だからこそ、その数字やカットオフ値に目の前のクライアントの状態を当てはめるのではなく、
あくまで参考値…としておく意識も必要かもしれませんよね。
 

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
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