「年をとって目が見えづらくなった…」というのは高齢の方からよく聞かれますし、多くの人がイメージできるかと思います。
しかし、しっかりと生理機能の観点から加齢に伴う視覚機能の変化についてはなかなか説明できないかもしれません。
そこで今回は高齢者の視覚機能についてまとめました。
目次
高齢者の視覚機能について
高齢者の視覚機能についてですが、次のような特徴があげられます。
- 視力低下は40歳から始まる
- 老眼の原因は水晶体と毛様体筋が原因
- 視野は20歳代に比べ6割程度になる
- 60代の8割が白内障
- 高齢者は見える色が変化する
- 高齢者は明暗順応度も低下する
- 静止視力よりも動体視力の方が低下する
視力低下は40歳から始まる
一般的に視力の低下は40~50歳くらいから始まると言われています。
そして60歳~70歳代で急激に低下すると言われています。
この視力低下ですが、生理的な老化現象によるものと、高齢者によく起こる眼疾患によるものとにわけられます。
老眼の原因は水晶体と毛様体筋が原因
高齢に伴う視力の低下の原因としては、
- 瞳孔の縮小(老人性縮瞳)による光量の現象
- 水晶体の屈折力の変化
- 水晶体の光透過性の低下
…などの加齢変化があげられます。
その他に視細胞数や視神経数の減少を原因とする場合もあります。
このような状態を“老眼”と言い近くのものが見えにくくなる傾向があります。
視野は20歳代に比べ6割程度になる
高齢者には見えている範囲…つまり視野の低下も多くみられます。
その体積や面積においては、20歳代の60~80%となります。
最近社会問題になっている高齢者の自動車運転事故の原因の一つとしてこの視野の低下もあげられます。
60代の8割が白内障
高齢者に多い白内障ですが、実は早ければ40代からその症状が現れるケースがあります。
また、60歳代では8割の方がこの白内障による生活のしづらさを訴えているようです。
そもそもこの白内障とは、水晶体が加齢に伴って白く濁ることで起こる視力低下の病気です。
水晶体は通常は透明な組織ですが、この白内障では白く濁ることで光がうまく眼底に届かなくなり、
- 視界が全体的にかすんだように見える
- 視力の低下
- 光をまぶしく感じる
- 暗いときと明るいときで見え方が異なる
…といった症状が現れます。
高齢者は見える色が変化する
高齢者特有の視覚機能の変化として、見える物が黄色味を帯びてしまう…ということがあげられます。
この原因は加齢に伴う水晶体の白濁化がさらに進行し黄変化(褐色化)していくことや角膜の黄変によるとされています。
その結果、青-紫および黄-緑の飽和度識別が困難になってきます。
高齢者は明暗順応度も低下する
暗い場所から明るい場所へ移動した際に目が慣れる事を“明順応”、逆に明るい場所から暗い場所へ移動した際に目が慣れることを“暗順応”と言います。
加齢に伴うことで高齢者の方は、この“明暗順応の低下”も起こります。
一般的に“暗順応”の方が“明順応”にくらべて時間がかかりますし、高齢者は若年層に比べてもこの暗順応に時間がかかります。
静止視力よりも動体視力の方が低下する
静止している対象物をみる視力を“静止視力”、動いている対象物をみる視力を“動体視力”と呼びます。
一般的に静止視力も動体視力も加齢に伴って下がっていきますが、動体視力の方が著しく低下することがわかっています。
まとめ
高齢者の視覚障害、視力低下の特徴を把握することは、作業療法士による生活支援にも非常に重要なことと言えます。
これからの超高齢化社会に対応するためにも、加齢に伴う変化については把握しておく必要があります。