Rehabilitation

リハビリ難民の急増の原因と附帯する課題について – 超高齢化社会を迎えるにあたって作業療法士ができることとは?

 
リハビリ難民

先日、『脳卒中 リハビリ難民が急増』というニュースをみつけました。
脳卒中のクライアントに対してのリハビリテーションに関わっている身としては非常に興味深く読んだのですが、改めて早急に対策しなければならない課題だとも思いました。
今後さらに増加する“リハビリ難民”に対して、作業療法士としてなにができるのでしょうか?

リハビリ難民について

そもそも“リハビリ難民”ってどのような方を指すのでしょうか?

“難民”の定義から考える

“難民”の意味としては次のように定義されています。

(戦争・天災、また人種や信条などでいためられて)困難におちいった人民。特に、戦禍・迫害等を避けて流浪(るろう)する人民。

一般的には戦争や天災などの影響で生活が困難な状況下に置かれた人を指すかと思います(シリア難民などなど)。

リハビリが受けれない人を“リハビリ難民”と呼ぶ?

では、今回のテーマのリハビリ難民の方はどういった方になるでしょうか?

上記の定義から考えると、端的に言えば次のようになるかと思います。

リハビリテーションを受けることができず、困難におちいった人

…こんな感じ。

もっと詳しく言えば、

(様々な原因によって)リハビリテーションサービスを受けることができず、日常生活を送ることが困難におちいった人

…こんなふうにまとめられるかと思います。

リハビリ難民に附帯する課題について

さて、そんな“リハビリ難民”が問題になっています。
超高齢化がピークとなる2025年には、このリハビリ難民が150万人まで上ると言われ、その“受け皿”が足りなくなることが予測されているからです。

「リハビリを受けたくても受けられない」

そんな時代がすぐそこまで来ているということです。

リハビリ難民に附帯する課題について

実際、僕自身の臨床でもこのリハビリ難民と呼ばれるケースには頻繁に出会います。
そのため非常に歯がゆい想いをすることも多々あります。

経験も踏まえて、このリハビリ難民の方に附帯する課題を次の3つにまとめてみます。

  1. 国の“医療制度”による課題
  2. “環境”による課題
  3. 本人の“意識”による課題

①“医療制度”による課題

この「国の“医療制度”による課題」はいま社会的に取り上げられているリハビリ難民の原因の主たるものでもあると言えます。
少しこの制度も含めた状況を説明します。

入院中のリハビリは日数制限がある

脳卒中を発症して病院に入院し、受けることができるリハビリテーションは“医療保険”によるものです。
でもこの医療保険によるリハビリには“日数制限”があり、これは発症してから最大180日(約6か月)と決められています。
言い換えれば、発症してから180日経過するまでにいくら体が病前のように思い通りに動かなくても退院せざるを得ない…ということになります。

退院後のリハビリをどうするか?

では退院後のリハビリをどうするか?
この選択肢が、現状では非常に様々な“縛り”を受けることになっています。

多くの退院予定の患者さんは、長く入院リハビリを受けていて、自分の状態を良く知っているセラピストに外来でリハビリを受けたい!と願っています。
しかし診療報酬改定の影響もあり、要介護の人はリハビリで医療保険を使うことができなくなったことから、結果として外来リハビリを受ける選択肢は選べなくなってしまいました。

外来がダメならデイケアorデイサービス?

要介護の状態の方がリハビリを受けるには、医療保険以外のサービスを利用するしかありません。
そこで選択肢としてでてくるのが“介護保険”によるリハビリサービスです。

しかし、デイケアやデイサービスで受けられる個別リハビリ…つまりマンツーマンでのリハビリテーションサービスは、最大でも40分受けれればよい方で、しかもデイケア、デイサービスを利用日のみですから明らかに入院中と比べるとリハビリを受ける時間数は減ってしまいます。

訪問リハビリという選択肢

介護保険で受けることができるリハビリで、訪問リハビリがあります。
これは利用するクライアントの自宅にセラピストが訪問し、1時間マンツーマンの個別リハビリを受けるというものです。
実際に生活している環境でのリハビリということもあり、在宅生活を送る上で困っている課題に対して直接指導、トレーニングすることができることが一番のメリットとも言えます。

しかし、この訪問リハビリも基本的には“いつまでも”受けれるものではなく、あくまで短期間でのリハビリとされています。

これらの現状が起因して、リハビリ難民の増加につながっていると考えられます。

“環境”による課題

2つ目の課題としては、“環境”によるものです。
脳卒中といった病気を発症し、入院中にリハビリを受け、ADLが自立のレベルになって退院となっても、退院先の環境によって健康状態の維持が困難になる場合があります。

様々な劣悪な生活環境がリハビリの必要性を高めてしまう

高齢者の独居や、同居している家族が高齢の配偶者のみの“老々介護”の状態、経済状況が悪く最低限の健康的な生活を送ることすらできない状態など、様々な劣悪とも言える“生活環境”が原因で健康状態の悪化を招くケースが多くみられます。
入院中は『病院』という守られた環境下であったから維持できた健康状態ですが、退院後の劣悪な生活環境や状況によってすぐに“リハビリが再度必要な状態”になる可能性が高くなります。

SDH(Social Determinants Health)という考え方

この環境が原因という視点は、僕自身“SDH(Social Determinants Health:健康の社会的決定要因)”という概念を学んでから身につけました。
そもそもリハビリを受ける必要がある状態に至った根本の原因は、その人が生活する環境にあるのではないか?という視点です。

リハビリを受ける必要がない健康な状態で長く生活できるようにすることも、リハビリ難民の増加対策としては必要なことだと考えます。

“意識”による課題

3つ目の課題としては、根本的な本人の“意識”によるものです。
これは個人の考え方、障害の捉え方に左右されるものですが、それだけに対策も難しい印象を受けます。

そもそもリハビリは永続的に受けるものではない

そもそもリハビリは、あくまで病気を発症し障害を有した身体でもなんとか生活を送れるようにするための“一時的な”ものであって、永続的に受けるものではないと考えます。
“リハビリを受ける前提での生活維持”ではなく、“リハビリを受けなくても維持できる生活”が理想であり、ここがクライアントもセラピストも本来目指すべきゴールと言えます。
あくまでセラピストによるマンツーマンの個別リハビリは“一時的なもの”であるべきだと思います。

リハビリ≒頓服薬のようなイメージ

薬で例えれば、症状に関係なく予防的な目的で毎日飲む“定期薬”ではなく、症状が現れたときに飲む“頓服”のようなイメージだと思っています。
また、これも大事な視点なんですが、人によっては頓服をお守り代わりに持っていて、持っているだけでも安心という方がいます。
リハビリも同じかもしれません。
なにかあったらすぐに連絡できて、すぐにリハビリを受け対応してくれることができる環境や社会的なシステム。
永続的にリハビリを“受ける”のではなく、すぐ近くにいつでも受けようと思えば受けれるリハビリがあるということが重要なのかなとも思うんです。

リハビリ依存という闇

印象ですが、このリハビリを永続的に求め、「リハビリがなければ自分は生活できない!」といういわば“リハビリ依存”の状態に陥りやすいクライアントの方って、“機能回復”に固執している傾向が強い場合が多い気がします。
発症前と比べるとほんのわずかに肩が上がらない状態や、軽度のしびれ、痛みに対して固執してしまい〝できないこと”ばかりに意識が向き、すでに現在の能力でも“できること”に気づかない。
リハビリは障害を“治す・治療する”のではなく、障害を抱えていたとしても望んだ生活にいかに“適応させる・馴染ませる”かが重要なんだと、臨床を通して強く感じています。

リハビリ依存者が難民化することでの弊害

このようなリハビリ依存に陥っている方も、リハビリ難民としてカウントされていることも事実としてあると思います。
その結果、本当にリハビリが必要な方まで適切な期間受けることができなくなってしまうという弊害が起こっているのではないでしょうか?

リハビリ難民の増加対策とは?

では、これらの原因がもとで増加しているという“リハビリ難民”ですが、今後どのような対策が求められるのでしょうか?
あくまで提案であり、理想論、絵空事かもしれませんが、次のような項目が考えられます。

  1. 自費リハビリサービスの充実化
  2. 医療に頼らない健康維持、疾病予防の充実化
  3. コミュニティの充実化
  4. 健康、障害などに対してのリフレーミング

①自費リハビリサービスの充実化

これはすでにいくつかの株式法人が参入しているサービスですし、今後発展していく分野でもあると思います。
医療保険でも介護保険でもなく、自費によるリハビリを受けるという選択肢。
自費のため日数や時間、回数といった制限は公的にはないため、利用者側の時間と費用次第とも言えます。
ただしその分、この自費の選択肢を選ぶことができる層とできない層とがはっきり分かれてしまう点で、何かしらの補助や制度、もしくは民間の保険会社のサービスといったものが必要になってくるかもしれません。

②医療に頼らない健康維持、疾病予防の充実化

上記の項目はあくまで自費でリハビリテーションサービスを受けるという選択肢。
リハビリ難民の増加予防…医療費圧迫対策そのものには、そもそも「医療サービスを必要としない健康な状態を長く維持すること」も重要と考えます。
いかに健康で、元気で、病気知らずな生活を保っていられるか?という課題にもなるため、非常に生活習慣に根差した対応が求められます。
疾病予防はもちろん、転倒予防や生活上のトラブルの防止まで非常に多岐に渡ります。
でも、この部分って非常に生活を軸に見る作業療法士が関われる領域なのでは?とも思っていますし、可能性を感じてもいます。
こういったサービスは現在は行政がメインで行っているイメージがありますが、今後民間の業者が参入してきてもよい気もします。
こういった健康生活の維持のための支援も、結果としてリハビリ難民対策(だけでなく医療費問題全体)に繋がるかと思います。

③コミュニティの充実化

ICFの観点からみても、健康的な生活には何かしらの役割や社会参加機会が必須だと考えます。
それが地域のコミュニティでも、インターネットによる交流でも、方法はなんであれ誰かと繋がっている、誰かに必要とされているという感覚、認識は非常に重要です。
上記の医療に頼らない健康維持、疾病予防の充実化にも通じることですが、医療機関、行政、民間、そして住民そのものが“共助”の姿勢を持ち、コミュニティを充実していくことが”リハビリ難民”問題の解決につながるんだと思うんです。
これを地域レベルで行っているのが、地域包括ケアシステムなんでしょうけどね!

④健康、障害などに対してのリフレーミング

健康でいること、生活の質、障害を有すること。
そういったごく当たり前の生活を脅かす要因に対しての認識を捉えなおすことも重要かと思います。
捉え方一つ変えるだけで、健康も不健康も紙一重ですし、障害も健常も表裏一体なんです。
これは“教育”的な視点からも必要ですので、作業療法士が小学校や地域の公民館などでお話をする機会を得られればいいんでしょうけどね!

まとめ

“リハビリ難民”というキーワードから、いままでの臨床経験、知識、見識を踏まえて解説してみましたが、もちろん様々なご意見があるかと思います。
でもあながちこの考え方は不正解ではないような気もします。
リハビリ難民対策も含めた医療費圧迫への対策の中心に、もしかして作業療法士が持つ考え方や捉え方がはまり込めばいいんじゃないかな?なんて思ったりしてもいます(笑)

作業療法士は語りたい!

増加するリハビリ難民の中でも、本当に必要としている層を見極めないといけないのかもしれませんね。
機能回復に軸を置いたリハビリテーションって、実はもう時代遅れでもあるし、今後の多様化する社会には対応しきれなくなっていくと思うんだ。
だからこそ、幅の広さ、臨機応変さを持つ作業療法士が、声を上げて行かなければならないのかもしれませんね!

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