メンタルヘルスに対しての社会的な認識は徐々に変わってきてきています。
医療機関が中心となる治療から、当事者本人が中心となって支援する形が求められてきています。

その一つである“リカバリーモデル”はここ10年で精神医療、メンタルヘルスケアの標準になりつつあります。

今回はこの総合的かつ、クライアント中心のアプローチでもある“リカバリー”について解説します。

本記事の想定読者ですが…

  • 作業療法士
  • 精神科医
  • 精神保健福祉士
  • 就労支援関係者

…となっています。

リカバリーとは?

リカバリー(recovery)を日本語訳すると、

  • 回復
  • 治癒
  • 立ち直り
  • 再起
  • 挽回

…といった意味がでてきます。

この語からのみだと、どれも“症状の除去”、“障害からの脱却”といった従来の精神科医療がイメージできます。

精神障害における“リカバリー”とは?

実は、この“リカバリー”はアメリカで1980年代後半より登場した概念であり、そのプロセスは多種多様になります。
それ故に、様々な定義が多くの当事者や専門家によってなされています。

Patricia E.Deegan(パトリシア・ディーガン)による定義

心理学博士であり、統合失調症の当事者でもあった“パトリシア・ディーガン”によると、次のように定義されています。

リカバリーとは、病気からの快復ではなく、人々の偏見、精神医療の弊害によりもたらされる障害、自己決定を奪われていること、壊された夢などからの回復である

この定義をかみ砕くと、

「病気の症状の有無に関係なく、よく生きてゆけること」

…と解釈できます。

その人らしい人生が送れる=リカバリー

結論ですが精神障害領域における“リカバリー”の意味としては次のようになります。

精神障害のある人が、それぞれ、自分が求める生き方を主体的に追求すること

つまり、リカバリーは「その人がその人らしく自分でも納得のいく人生を送れるようになる」ということを意味することになります。

リカバリーモデルとは?

では、このリカバリーモデルとはどのようなものになるのでしょうか?

分かりやすい説明としては次のような文言で表されます。

苦悩の経験から発生したメンタルヘルスを理解するためのフレームワーク

障害や症状を“治療”や“克服”ではない点がポイントです。
あくまで“理解”するためのフレームワークということになります。

特徴

リカバリーモデルの特徴としては次のようなものがあげられます。

  • 専門家が症状を取り除くという発想ではなく、当事者自身の経験を自ら理解し管理する方法を見つける
  • 問題や困難に注目する方法ではなく、当事者が自分の強みや技能を武器として目標を達成できるようにする
  • 医療と福祉を分離する方法ではなく、連携、選択、機会を増やし、互いに支援しながら人生の希望を達成する

これらの特徴の文言から、非常に当事者中心であることがわかります。

目的

リカバリーの目的は、決して症状をなくすことではありません。
治療によって症状を和らげることはもちろん必要です。
しかし、何より大切なのは、当事者本人が「こういう生活がしたい」という自主的な希望を持ち、それを関わる周囲が支えることになります。

リカバリーモデルの目的は、このような支援の仕組みを作ることと言えると思います。

リカバリーに必要な4つの要素

この当事者本人を軸とした支援のモデルである“リカバリーモデル”ですが、次の4つの要素が必要とされています。

  • 健康
  • 目的
  • コミュニティ

以下に詳しく解説します。

健康

自分の病気や症状を“管理”し、身体的および精神的な幸福を支える情報に基づいた健康的な選択をすること

安定かつ安全な環境である居住する場所にいること

目的

毎日、有意義な活動を行い、社会に参加するための自立性、収入、および資源を持つこと

コミュニティ

自身をサポートする人、家族や友人、恋人、そして希望を提供する関係やソーシャルネットワークを持つこと

リカバリーに必要な10の指針

アメリカの“SAMHSA(薬物乱用および精神保健サービス管理局)”では、リカバリーに必要な10の指針を定義しています。
*わかりやすいように意訳してあります

  1. 自主的であること
  2. 当事者が中心であること
  3. エンパワーメント
  4. ホリスティックであること
  5. 非線形のプロセスであること
  6. 強みに基づいていること
  7. ピアサポートの充実
  8. 尊敬されること
  9. 責任をもつこと
  10. 希望をもつこと

これらの指針を周囲の支援者が関わり方、支援の仕方に取り入れる事で非常にリカバリーモデルに近づくころができると考えられます。

リカバリーの概念は非常に汎用的?

こうしてリカバリーという考え方について深堀りしていくと、

リカバリー=自己実現

という解釈でも腑に落ちます。

このリカバリーの概念は主に精神障害やメンタルヘルス領域で発展してきたものですが、捉え方によっては非常に汎用的な概念であると思います。

  • 自分の理想とは大きく異なる現実
  • やりたいことが見つからない毎日
  • 追われるような生活
  • 毎日の自己嫌悪
  • 将来への絶望

少なくてもこういった“生きにくさ”を感じている人に対して、このリカバリーモデルというものは非常に有益な概念であり、物事の捉え方のパラダイムシフトに繋がるのだと思います。

まとめ

本記事では精神障害への支援の考え方でもある“リカバリー”についてその定義や特徴、目的、そして構成している要素や必要な指針について解説しました。

リカバリーとは…

  • 病気の症状の有無に関係なく、よく生きてゆけること
  • その人がその人らしく自分でも納得のいく人生を送れるようになること
  • 苦悩の経験から発生したメンタルヘルスを理解するためのフレームワークが“リカバリーモデル”
  • 当事者本人が自主的な希望を持ち、それを周囲が支える仕組み
  • 健康・家・目的・コミュニティの4つの要素が必要
  • “自己実現”という解釈だとどんな人にでも当てはめることができる有益な考え方

作業療法士は語りたい!

精神科医療、メンタルヘルスの領域は今後ますます当事者中心のモデルに変化していくんでしょうね。
従来の方法では目に見える効果が得られなかったこと、一定の効果が得られたとしても一時的なこと、
そして非常に非効率的であることが理由としてあげられるだろうね。
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