臨床でクライアントの認知機能に対して、“年齢相応の物忘れ”という表現をすることがあります。
HDS-RMMSEではカットオフ値以上の点数なものの、やっぱり健常とは言えない状態…。
今回はこの“認知症の前駆症状にあてはまる概念”について解説します。

認知症の前駆症状にあてはまる概念

認知症の前駆症状にあてはまる概念としては次のように複数のものがあげられます。

  • AAMI(age-associated mental impairment)
  • ACMI(age-consistent memory impairment)
  • late-life forgetfulness
  • AACD(aging-associated cognitive decline)
  • MCD(Mild cognitive disorder)
  • MNCD(Mild neurocognitive decline)
  • CIND(Cognitive impairment no dementia)
  • MCI(Mild cognitive impairment)
以下にそれぞれ詳しく解説します。

AAMI(age-associated mental impairment)とは?

aami

AAMIは1986年に米国国立精神保健研究所のグループによって提唱された概念で、年齢相応の記憶障害のことを言います。

AAMIの定義、基準について

このAAMIの定義、基準ですが次のように発表されています。

  1. 年齢は50歳以上(後にBlackfordらにより“50~79歳”と改訂)
  2. 日常生活の中で記憶の衰えが徐々に侵攻
  3. 標準的な記憶検査で若年成人の平均点から1標準偏差(SD)以上下回っている状態
  4.  例)Benton視覚記銘検査:6点以下
       WMSの論理記憶検査:6点以下
       WMSの連合学習検査:13点以下

  5. WAIS語彙検査が少なくとも9点で、知能は正常に保たれていること
  6. MMSEは24点以上で認知症でないこと

AAMIの除外基準

また、AAMIの除外基準については次のように定められています。

  1. せん妄、混乱およびその他の意識障害の存在
  2. 認知障害を呈する神経疾患の存在(病歴、神経診察あるいは神経放射線検査による)
  3.  例)アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、脳出血、腫瘍、正常圧水頭症

  4. ウイルス、真菌、梅毒等の中枢性感染および炎症疾患の病歴
  5. 優位な脳虚血病変の存在
  6. くりかえす軽度の頭部外傷
  7. DSM-Ⅲ基準によるうつ病、躁病、あるいはその他の精神疾患の現症
  8. アルコールあるいは薬物依存症の現症あるいは病歴
  9. Hamilton うつ病評価尺度13点以上によるうつ状態
  10. 腎疾患、呼吸疾患、心疾患、および肝疾患、コントロール不良の糖尿病、内分泌・代謝性疾患、血液疾患、2年以上寛解のない悪性腫瘍による認知機能障害
  11. 向精神薬や認知機能に影響を与える薬剤の使用
つまり、これらの項目に当てはまるものはAAMIの診断としては当てはまらない…ということになります。

ACMI(age-consistent memory impairment)とは?

acmi

ACMIとは、

標準的な記憶検査のうち施行した70%以上の検査で年齢に対して確立した平均から1標準偏差(SD)以内にあるもの

…を言います。

late-life forgetfulnessとは?

late-life-forgetfulnessとは

late-life forgetfulnessとは、

標準的な記憶検査のうち施行した50%以上の検査で年齢に対して確立した平均から1~2標準偏差(SD)の間にあるもの

…を言います。

つまり、“Blackford”らによって“AAMI”、“ACMI”、“late-life forgetfulness”の3つに区別されたってことになります!

AACD(aging-associated cognitive decline)とは?

aacdとは

AACDは、1994年に国際老年精神医学会のグループにより提唱された概念です。

AACDの定義、診断基準について

AACDの定義や診断基準については次のとおりになります。

  1. 個人または信頼性のある情報による認知機能低下の報告があること
  2. 発症は緩徐で、少なくとも6か月間存在すること
  3. 記憶・学習、注意・集中、思考、言語、視空間認知のいずれかの障害
  4. 年齢や教育歴を考慮した認知機能検査の正常平均から少なくとも1標準偏差(SD)低下していること

AACDの除外基準について

AACDの除外基準については次のとおりになります。

  • Mild cognitive disorder(ICD-10)や認知症の基準を満たすほどの認知機能障害を呈していないこと
  • うつ、不安、器質的健忘症候群、せん妄、脳炎後症候群、脳震盪後子症候群等の大脳機能障害をきたす身体および精神疾患、あるいは中枢性作動薬使用による認知機能低下

…などがあげられます。
つまり、これらの項目に当てはまるものはAACDの診断としては当てはまらない…ということになります。

MCD(Mild cognitive disorder)とは?

mcdとは

MCDとは、

記憶、注意、思考、言語、視空間機能のいずれかの障害が少なくとも2週間存在し、認知症、器質的健忘症候群、せん妄、脳炎後症候群、脳震盪後症候群、精神作用物質使用による他の持続性認知障害ではないこと
…と定義されます。

MNCD(Mild neurocognitive decline)とは?

mncdとは

MNCDは、

以前の機能水準からの低下はあるが、日常生活への影響は軽度とされ、少し努力すれば認知障害を部分的に代償することができる状態
…とされています。

MNCDの定義について

MNCDの定義としては次のようになります。

記憶、実行機能、注意、知覚・運動能力、言語の少なくとも2つの領域の認知機能障害が2週間持続し、認知機能の原因とされる神経疾患や身体疾患や神経心理検査等での機能低下が客観的に証明されており、せん妄や認知症や健忘性障害の基準を満たさず、他の精神疾患ではうまく説明されない。

CIND(Cognitive impairment no dementia)とは?

cindとは

CINDは、カナダの地域疫学調査(CHSA)において提唱された概念になります。
CINDの場合、正常と認知症との間のレベルにある認知機能低下のすべてを包括するため、せん妄やアルコール、薬剤使用、うつ状態、精神疾患や精神遅滞等も包括されてしまう恐れがあります。
そのため、認知症の前駆疾患んおみを表す概念ではないという点が注意が必要です。

MCI(Mild cognitive impairment)とは?

mciとは

MCIとは、

本人および第三者(家族等)から認知機能低下に関する訴えがあり、認知機能は正常ではないが認知症の診断基準を満たさない状態であり、基本的な日常生活は保たれているが、複雑な日常生活機能の障害は軽度にとどまる
…と定義されています。

まとめ

認知症の前駆症状を表す概念は複数あり、それぞれの診断基準も変わってきます。
それぞれの定義や基準を把握することで、クライアントの認知機能の状態把握に貢献できるんだと思います。

作業療法士は語りたい!

これだけたくさん概念があるってことは、
逆に言えばなかなか判断が難しいってことだろうね。
重要なのは、一概に“年齢相応”の一言では済まされないってことでしょうね。