頭頂葉は脳のなかでも感覚や空間認知を司る重要な領域になります。
本記事では、この頭頂葉の…
- 解剖学(場所や位置)
- 役割や機能
- 障害された際の症状
…などについて解説します。
目次
頭頂葉とは?
そもそも、頭頂葉とは…
…になります。
この頭頂葉は身体の様々な部位からの感覚情報統合や、数字とそれらの関係に関する知識、対象の操作などに関する機能に重要な役割を持ちます。
また、頭頂葉の一部は視覚空間処理に関わっているともされています。
場所・位置
頭頂葉の位置についてですが、次の4つの境界によって定義されます。
- 中心溝:前頭葉との境界
- 頭頂後頭溝:後頭葉との境界
- 外側溝:側頭葉との境界
- 大脳縦裂:左右の大脳半球の境界
頭頂葉の役割、機能について
頭頂葉はその機能によって次の部位に分けられます。
- 一次体性感覚野
- 頭頂連合野
- 角回
- 縁上回
- 味覚野
以下に詳しく解説します。
一次体性感覚野
頭頂葉の最前部に位置する脳回である“中心後回”には一次体性感覚野があります。
この一次体性感覚野は主に…
- 感覚情報の認識
- 筋肉を動かす指令
…の働きを担います。
同定方法ですが、大脳縦裂、中心溝、外側溝、頭頂葉にある中心後溝を含み大脳縦裂の内側に位置するため、これらを基準に同定していきます。
頭頂連合野
頭頂連合野は中心溝の後方にある一次体性感覚野、腹側前方にある二次体性感覚野を除く頭頂葉の部分になります。
この頭頂連合野は主に…
- 空間認知
- 運動知覚
- 高次の体性感覚の処理
- 手や腕等の運動制御
- 言語機能等
…といった、様々な認知機能に関わります。
また、頭頂連合野外側は頭頂間溝を境として上頭頂小葉と下頭頂小葉に分けられます。
角回
角回は、身体の感覚(頭頂葉)、聴覚・記憶(側頭葉)、視覚(後頭葉)を司る皮質に囲まれた位置にある脳回の一つです。
この角回は主に…
- 言語認知
…に関わり、視覚刺激を言語化することに関していると考えられています。
また、角回の刺激が体外離脱体験を引き起こす可能性を示した報告もあります。
縁上回
縁上回は外側溝の上行枝の末端部を囲むように存在し、角回とともに下頭頂小葉を構成している脳回の一つです。
この縁上回は主に…
- 音韻処理(音韻のワーキングメモリ)
- 言語性短期記憶
…に関わると考えられています。
また、ブローカ野、ウェルニッケ野、左角回などと関係して言語要素の処理にも関与しています。
味覚野
味覚野は体性感覚野と嗅覚野の中間に位置する感覚野の一つです。
この味覚野は主に…
- 味覚情報の受取
…に関わります。
味覚情報は、延髄、視床、味覚野を通り、前頭連合野まで到達すると同時に、視床下部や扁桃体にも情報が送られます。
そして味覚野で味の質や強さを判断し、咀嚼や視覚、聴覚などの情報が前頭連合野で統合され、食物の認知や好き嫌いなどが判断されます。
頭頂葉に関連する障害について
上述したように、頭頂葉の機能は非常に複雑です。
感覚だけではなく様々な高次脳機能を司る脳葉でもあります。
この頭頂葉が障害されると…
- 半側空間無視
- 失認
- 失行
…などの頭頂葉症候群とよばれる高次脳機能障害を呈する場合があります。
以下に詳しく解説します。
半側空間無視
病巣側とは反対側の刺激に対して、発見して報告したり、反応したり、その方向を向いたりすることが障害される病態である“半側空間無視”は、主に右頭頂葉の損傷で出現することが多くあります。
また、左頭頂葉の障害では半側空間無視の症状が出ないことが多いとされていますが、そもそも半側空間無視の責任病巣は頭頂葉のみではないという点からも、「左半球の損傷では半側空間無視の症状は全く出現しない」とは一概には言えないようです。
関連記事:半側空間無視の発生機序に関わる6つの説について
失認
ある一つの感覚を介して対象物を認知することができない障害である“失認”も、頭頂葉の障害によってみられる高次脳機能障害の一つです。
失行
“運動可能であるにもかかわらず合目的な運動ができない状態”と定義された高次機能障害のひとつが“失行”になります。
主なものとして…
- 構成失行:簡単な図柄の模写(特に立体的な図柄)が描けない、積み木を積むことができない状態
- 観念失行:「紙を折って封筒に入れる」といった一連の動作ができない状態
- 観念運動失行:金槌をうつまねの動作や、バイバイと手を振るまねができない状態
- 着衣失行:着替えの方法や手順がわからない状態
…があげられます。
半球別の症状について
損傷、障害を受けた部位が優位半球か劣位半球かによって現れる症状は異なります。
頭頂葉における半球別の症状としては…
- 優位半球頭頂葉症状:失語(伝道失語、健忘失語)・失読失書・観念失行・観念運動失行など
- 劣位半球頭頂葉症状:着衣失行・運動維持不能・半側空間失認など
…となります。
頭頂葉とゲルストマン症候群
失書、失算、手指失認、左右失認の4つの症候で定義される“ゲルストマン症候群”は、優位半球の角回、縁上回の病変と関係していることが多いとされています。
関連記事:ゲルストマン症候群 -4徴候・画像診断・責任病巣・検査や評価方法について
中大脳動脈と頭頂葉について
中大脳動脈領域で脳梗塞を発症した場合、空間視機能を障害される場合が多くあります。
そのため、物品の位置、動き、奥行などが判断できなくなり、結果として日常生活の動作に支障をきたしてしまいます。
しかし、この場合側頭葉が担う物体視機能(形態・色)は保たれている場合は、操作対象に色をつけるなどの工夫をすることで操作が可能になるケースがあります。
物体視機能によって空問視機能の障害を代償する手法を用いるという作業療法の手法とも言えます。
まとめ
本記事では頭頂葉について、主に解剖学的な視点で機能などについて解説しました。
- 後頭葉の上部及び前頭葉の後部に位置する脳葉
- 身体の感覚情報統合や、数字に関する知識、対象の操作などの機能を担う
- 頭頂葉が障害されると、半側空間無視、失認、失行などの高次脳機能障害を呈する