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作業療法の定義が改定されて広がった作業療法の対象と可能性

 

“作業療法”の定義が改定が発表されて1ヶ月。
自分の周りも含め様々な意見がでています。
個人的にはこの改定からも、作業療法士の職域拡大の可能性と必要性を非常に強く感じているんですよね!
そこで今回はこの定義の改定から今後の作業療法の対象と可能性について考えてみます!

今回の作業療法の定義改定について

今回の定義改定については、2018年5月の日本作業療法士協会総会で改定案が可決されました。
この経緯としては、“作業療法”の職能が非常に多様化していること、現行の定義ではその多様化を十分に表現できなかったこと…ということで改定に至ったようです。

今までの定義としては、

作業療法とは,身体又は精神に障害のある者,またはそれが予測される者に対し,その主体的な生活の獲得を図るため,諸機能の回復,維持及び開発を促す作業活動を用いて,治療,指導及び援助を行うことをいう.
…でした。

それが今回の改定後の定義では、

作業療法は,人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である.作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す.
…となりました。

また、この改定後の定義には以下の注釈が設けられています。

・作業療法は「人は作業を通して健康や幸福になる」という基本理念と学術的根拠に基づいて行われる。
・作業療法の対象となる人々とは、身体、精神、発達、高齢期の障害や、環境への不適応により、日々の作業に困難が生じている、またはそれが予測される人や集団を指す。
・作業には、日常生活活動、家事、仕事、趣味、遊び、対人交流、休養など、人が営む生活行為と、それを行うのに必要な心身の活動が含まれる。
・作業には、人々ができるようになりたいこと、できる必要があること、できることが期待されていることなど、個別的な目的や価値が含まれる。
・作業に焦点を当てた実践には、心身機能の回復、維持、あるいは低下を予防する手段としての作業の利用と、その作業自体を練習し、できるようにしていくという目的としての作業の利用、およびこれらを達成するための環境への働きかけが含まれる。

では、この定義改定と注釈についてちょっと考えてみます。

「医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる」について

改定後の定義内のこの部分は“作業療法の対象”について触れていることになります。
以前までは、作業療法の対象について“身体又は精神に障害のある者,またはそれが予測される者”という表現でした。
となると今回の改定後のこの文言から、作業療法の対象が身体・精神障害といった医療、福祉的な範疇には納まらなくなった…と解釈できます(もちろん診療報酬等の対象うんぬんとは別にの意味です)。
医療、保健、福祉…という従来の対象範囲以外にも教育、職業とより具体的に示すようになったことからもその意味が読み取れるのかな?なんて思います。

「作業に焦点を当てた治療,指導,援助である」について

様々な作業療法士の方とお話しても、「OTのPT化」が問題視されています。
作業療法士のアイデンティティでもある“作業”という部分を重要視せず、機能面での評価、徒手的な治療介入のみで終結してしまうリハビリテーション…。
これでは提供できることが限られてしまいます。
もっとクライアントの“(大枠での)作業”に注目し、介入手段としても作業を用いるようにすることが、今回の定義改定でも強く謳われているのでしょうね!

「作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す」について

作業療法における“作業”の定義にもなるこの部分ですが、あくまでクライアントが望むもの、必要とするもの、価値が高いものを作業療法における“作業”と捉えていることから、
よりクライアント中心の作業療法の必要性が求められてきていると解釈できます。
なんのアセスメントもせず、クライアント自身が「なんでこの作業が必要なんだと?」と疑問符をつけたままの作業療法では全く持って意味をなさないってことになります!

「“人は作業を通して健康や幸福になる”という基本理念と学術的根拠に基づく」について

これは従来の作業療法の定義であり、根幹でもある部分ですね!
この理念については『自分の臨床に迷ったら、先人・偉人による名言から振り返ったらいいと思うんよ。』でも触れています。

「対象となる人々とは、身体、精神、発達、高齢期の障害や、環境への不適応により、日々の作業に困難が生じている、またはそれが予測される人や集団」について

前述したことと重複しますが、“環境への不適応”と“日々の作業に困難が生じている”という部分が非常に特徴的かと。
これって言いかえれば「○○しにくい状態」と捉えられます。
仕事がしにくい…、学校に行きにくい…といった特に医療的な“障害”を持たなくても感じるような「日常生活のしこり」のようなものも作業療法による解決対象とすることができるかもしれません。

「作業には~人が営む生活行為と、それを行うのに必要な心身の活動が含まれる」について

作業を生活行為という視点で捉え、それを構成するのが心身の“活動”という点が非常に理解しやすいかなと。
あくまで“機能”ではないってところもポイントかと!!
重要視するのは、クライアントの生活行為という作業そのものであり、さらにそれを阻害する“活動”であって、“機能”で終わってはいけない…という解釈ができます。
また、作業は、クライアントが望む“作業”でもあり、作業療法士が介入手段として利用する“作業”でもあると思います。

「作業には~個別的な目的や価値が含まれる」について

“個別的な”という点からも非常に多様性があるということを前提としています。
クライアント中心の作業療法を考えるにあたっても、この多様性に富んだ作業についてどう対応するかは課題なのかと思っています。

「作業に焦点を当てた実践には~手段としての作業の利用と、~目的としての作業の利用、~環境への働きかけが含まれる」について

この部分では、作業療法士が“作業”をどのように扱うか?について触れています。
“手段としての作業”はクライアントの心身の回復、維持、低下予防、そして行動変容を促すため、
“目的としての作業”はクライアントにとって価値基準が高い生活行為の実現のため、
“環境への働きかけ”は代償的アプローチの必要性について…ということになります。

今回の定義改定についての反応をtwitterで調べてみた

Twitterでの反応としてはこんな感じ!
一部をご紹介!

“作業とは目的や価値を持つ生活行為”ってことは、わかりやすくクライアントに伝えないといけないかもしれませんね!

今回の定義改定で、ポジティブな意味で“作業療法=医療”だけではなく、もっと幅広く対象が広がっていく可能性があるだろうね!

定義はあくまで定義ですから、これをどう自己解釈し、実践につなげていくか?ってことが今後の作業療法士のキャリアアップには必要な視点でしょうね!

まとめ

今回の作業療法の定義を少し自分なりに解釈をしてみました。
多少希望的観測も含んでいますが(笑)、この改定で作業療法士が活躍できる領域が広がり、もっと社会全体が“作業療法”を必要とし、身近に感じられるようになればいいですね!

作業療法士は語りたい!

今回の改定って33年ぶりなんですね!
今後の社会変化のスピードの速さを考えると、
あと10年もしたらまた改定の必要性が高くなるかもしれないね!
作業療法の理念といった根幹の部分は大事にしながらも、
社会の変化に合わせて、作業療法士も変化していく必要性があるってことですね!
 

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
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