口輪筋は口を取り巻く多層の筋肉で構成されていて、主に顔の表情を作る筋肉です。
今回はこの口輪筋の起始、停止や支配神経、基本的な働きについて解説します。
目次
口輪筋の起始・停止について
口輪筋の起始、停止は…
- 起始:他の表情筋の複合繊維、一部の固有繊維
- 停止:口唇周囲の皮膚
…となります。
以下に詳しく解説します。
起始
口輪筋の起始についてですが、口輪筋は口裂をとりまく筋なので、口唇の中にあることは明らかです。
その構造故に、周囲の表情筋(小頬骨筋、大頬骨筋、笑筋、上唇挙筋、下唇下制筋)と交錯して起こっているのが特徴です。
口角部ではこれらの筋束が交錯して停止し結節状をなしています。
また、一部は上顎骨、下顎骨から起こっているという見解もあります。
停止
口輪筋の停止についてですが、括約筋様の筋肉は、口角、皮膚の下でX字形に交差して付着(停止)しています。
口輪筋は部位別で停止部が異なる?
また、口輪筋は以下の3つの部位に分けることができ、筋の停止部はそれぞれ微妙に異なります。
- a)上顎:上顎外側切歯の歯槽突起
- b)下顎:下顎外側切歯の歯槽突起
- c)鼻部:鼻中隔
口輪筋の支配神経について
口輪筋の支配神経は…
…となります。
口輪筋への血液供給動脈について
口輪筋へ血液供給している動脈は…
- 上唇動脈
- 下唇動脈
…があげられます。
口輪筋の主な働き
口輪筋の主な働きとしては、
・周辺部の筋束は強く閉じたり、さらにまた口を尖らせる働き(例:口笛)
口輪筋を英語で何て言う?
口輪筋をラテン語で何て言う?
読み方・発音
口輪筋に筋力低下や麻痺が起こると・・・?
口輪筋の筋力が低下したり、麻痺が起こったりするとどのようなことが起こるのでしょうか?
口輪筋の主に、「口をすぼめる」作用に働きます。
これは口唇閉鎖機能の際に発揮する筋になります。
つまりこの口輪筋の機能が低下することで、
・認知機能の低下につながる
・発声、発話がしづらくなる(構音障害)
・食べこぼしが多くなる
・口が渇きやすくなる
表情の変化が乏しくなる
顔の表情を変化させる作用に働く表情筋は、ほとんどが口輪筋から放射状に走行していることから、口輪筋が筋力低下に陥ると、どうしても表情変化が乏しくなります。
認知機能の低下につながる
表情の変化が乏しいと認知機能の低下につながる…という見解についてですが、生活における情動の変化というのは、脳への有益な刺激となるため必要不可欠な刺激とされます。
この情動の変化には実は表情の変化が必須とされています。
口輪筋を含む表情筋が活動することで、表情をつくる顔の皮膚が変形され、その情報が脳へフィードバックされ情動の変化をつくる…簡単に説明すればこういうメカニズムになります。
発声、発話がしづらくなる(構音障害)
口唇に調音点があるマ行,パ行,バ行, ワ行音の発声の際には口唇閉鎖機能が必須となります。
口唇閉鎖機能に関わる口輪筋が筋力低下や麻痺をおこした場合、唇を閉じることが困難となり、結果として発声や発話のしづらさ…構音障害につながっていきます。
食べこぼしが多くなる
食事や嚥下に関しても口輪筋の働きが必須になります。
口輪筋は主に食事動作の“準備期”での関わりが大きく、特に食塊が口腔外にこぼれ出すのを防ぐ作用に働くため、クライアントで食べこぼしが多い場合は、この口輪筋の筋力低下や麻痺が背景に潜んでいる場合もあるので注意が必要です。
口が渇きやすくなる
前述したように口輪筋は口唇閉鎖機能に貢献する筋です。
つまり口輪筋の筋力低下、麻痺などによって機能低下に陥ることで、口を閉じ続けることが難しくなり、結果口腔内が乾燥状態になる“口腔内乾燥症(ドライマウス)”を引き起こしやすくなります。
口輪筋は加齢とともに筋力低下する?
口輪筋は通常意識して動かすことが少ない筋でもあることから、加齢とともに衰えやすくなる筋の一つとされています。
男性では60歳、女性では70歳から著しく口輪筋の筋力が低下すると言われていてます。
高齢になった方の口角 が下がってくるのもこの口輪筋、口角挙筋の筋力低下によるものとされています。