その場所が病院でも施設でも、デイケアでもデイサービスでも、“園芸”って作業活動を取り入れることは非常にクライアントにとってもセラピストにとってもメリットが大きいんです。
そこで今回は園芸に興味を持つ作業療法士、セラピスト向けに園芸活動によって期待できる効果などについてまとめてみました!
目次
園芸とは?
園芸って定義としてはなんだろな?って思ったのでまず調べてみました。
- 園芸とは、農業の一つの部門
- 田園or温室などで植物を栽培すること
- 果樹、野菜、草花類を育てる技術と造園技術の総称
まとめるとこんな感じのようです。
土をいじって、花や野菜を育ててだけでなく、それらの技術も含めて“園芸”ってところがポイントかと。
園芸の特性
園芸って草花や土といった自然なものに直に触れる事です。
その種をまいて、芽がでて、育っていき、花が咲いて実を付け次の世代の種をつくる。
この一連の決まった自然の流れに関わることで、その植物に変化を起こすこと。
これって非常に“参加”的な活動なんだなと思うんです。
作業療法と園芸の歴史
作業療法の歴史から振り返ってみると、ギリシャのアスクレピオス(BC600)、ヒポクラテス(BC400前後)、ガレン(AD130-210)といった医学の創始者たちは、病める人々に対してスポーツや遊び、乗馬、仕事、音楽といった活動とともに、農耕作を心身の調和を取り戻すために処方したとの記録があります。
園芸の種類について
園芸と一言で言っても、実に様々な種類があります。
主に文化としての鑑賞園芸と、産業としての生産園芸の2つに大別されます。
鑑賞園芸
鑑賞園芸とは美的文化としての園芸活動になります。
植物を育種、栽培し、総合的なデザインを意識したコーディネートを行う。
こういった創造行為で行われる園芸活動が、この鑑賞園芸に当てはまります。
例としては、山野草やチューリップといった球根植物、ブームにもなった多肉植物などがあげられます。
生産園芸
一方、生産園芸とは、作った作物を販売する園芸活動であり、産業、農業の一部としての扱いになります。
果樹園芸や蔬菜(そさい)園芸、花卉園芸といったものが生産園芸になります。
例としては、果物や野菜、その他アヤメやカーネーション、ラベンダーといった比較的市場が確立している花などがあげられます。
作業療法と園芸
リハビリテーションの一環としての園芸は非常に作業療法的な活動とも言えます。
ここでは作業療法に軸を置いた園芸活動についてのポイントについて考えてみます。
場所や設備について
まず考えるべきは2つです。
①何を育てるのか?
②継続して可能な場所や設備はどこか?
①何を育てるのか?
これはその時期や季節によっても変わってきますが、なによりクライアントが意欲的に取り組むことができる植物でなければなりません(あたりまえですけど)。
クライアントが意欲的に取り組めるいくつかの植物の種類をリストアップし、種や苗を入手しやすいものを選定していく必要があります。
②継続して可能な場所や設備はどこか?
意外と盲点なのが、場所や設備についてです。
その作業療法を行う環境が、庭や畑を有していて、アプローチしやすい場所ならスムーズでしょうけど、中には土はあっても車いすで行けない場所…なんてこともあります。
また、園芸という作業活動は、ある程度毎日継続して行うことで有益な療法的効果を生む活動ですので、「管理しやすい」「移動しやすい」「作業しやすい」環境である必要があります。
場合によっては水耕栽培やプランター栽培という手段を取ることもあります。
材料(種、球根、苗、土、肥料など)
園芸活動に必要な材料は、一般の園芸店やホームセンターなどで入手できるので比較的容易に材料は準備できるかと思います。
また、インターネット通販でも取り寄せることができるので上手に利用するといいでしょうね!
道具
園芸に使用する道具といっても非常に種類が多いため、普段クライアントが使用していた道具はどのようなものだったかを聴取しておく必要があります。
鎌とスコップでは必要な筋力も操作する際の姿勢も大きく異なりますからね。
園芸によって期待できる治療的・療法的効果
では、実際に園芸活動を行うことで期待できる治療的、療法的な効果とはどのようなものでしょうか?
基本的能力、応用的能力、社会的適応能力の3つにわけて考えてみます。
基本的能力
園芸活動によって獲得や向上が期待できる基本的能力としては下記のとおり。
- 新陳代謝、自律神経系、感覚の賦活・促進
- 季節感や時間感覚、現実感、現実への関心の回復
- 感覚運動機能や認知機能の維持・回復・発達
- 注意、集中力の維持、回復
- 情緒的な発達
- 興味、関心、意欲の促し
- 基本的な生活リズムの維持、回復
応用的能力
また、獲得や向上が期待できる応用的な能力としては、
- 理解力、判断力の維持、回復
- 気分の転換、発散
- 共通体験、共有感覚によって需要される体験
- 育てるということを通した達成感、自己有用感の体験
…などがあげられます。
社会的適応能力
園芸活動によって獲得や向上が期待できる社会的適応能力についてですが、次のようなものがあげられます。
- 役割行為による基本的な社会習慣の習得、愛他的体験
- 作業習慣などワークパーソナリティの育成
まとめ
自分自身が何かに影響を及ぼすことって非常に意欲的で能動的な活動になります。
園芸っていう植物の成長に自分が関わることで変化をもたらすということは、その点ではとても理に適っている作業活動なのかなと思うんです。
作業療法士はもっと園芸に対して興味を持つべきかもしれません。