脳卒中のクライアントに対して“手洗い動作”を利用して作業療法プログラムを立案する際、どのようなポイントをおさえるべきでしょうか?
今回はこの脳卒中(脳梗塞・脳出血)片麻痺のクライアントに起こり得る手のトラブルを軸に、手洗い動作を利用した介入の有効性についてまとめました。
脳卒中片麻痺のクライアントに対して手洗い動作訓練を行うべき理由
脳卒中による片麻痺を呈したクライアントに対して、手洗い動作を作業療法プログラムに取り入れるべき理由としてはどのようなものがあげられるでしょうか?
主なものとしては、
- 拘縮改善のため
- 感覚入力のため
- 循環改善のため
- 清潔保持のため
拘縮改善のため
麻痺側の手指は麻痺の程度にもよりますが屈曲拘縮の状態であるケースが多いようです。
ブルンストロームステージⅢの手の場合は特に屈曲拘縮の状態が強く、手内在筋の短縮もみられることもあります。
手洗い動作を介してこの拘縮や手内在筋の短縮による関節可動域の改善を図ることが必要になります。
感覚入力のため
麻痺側の手は健常時よりも動きにいことからあらゆる活動に参加しない状態に陥りやすくなります。
そこに感覚障害が加わるとなおのこと活動に対して麻痺側手の参加が逃避的になるため、ますます感覚入力の機会損失につながります。
手洗い動作という活動には、流水やハンドソープ、タオルによる様々な種類の感覚入力をする機会があること、また非麻痺側の手で洗うことで感覚フィードバックを得られることなどから、非常に感覚入力のバリエーションに富んだ活動と言えます。
循環改善のため
麻痺側の手は筋緊張の異常や運動障害、そして自律神経障害などにより浮腫といった循環障害が起こりやすくなります。
手洗い動作や手浴を行うことで、麻痺側手の血管拡張を促すことで循環障害の改善につながります。
清潔保持のため
麻痺側の手は、関節可動域の制限や活動への不参加、自律神経の障害などによって垢や汚れ、悪臭などの衛生面のトラブルを招きやすいです。
本人の自尊心低下予防や他者との交流機会の損失を防ぐためにも、清潔保持のための手洗い動作は必要になります。
まとめ
脳卒中による片麻痺のクライアントに起こり得る手のトラブルを軸に、手洗い動作を利用した介入の有効性についてまとめてみました。
今回の手洗い動作のような、日常的に何気なく、習慣的に行っている当たり前の活動の目的や背景、それが障害された時の影響などもイメージして介入することは非常に重要なんだと思います。