ADLの評価方法でも、国際的に使用基準が選定されていることから広く使われているのがFIMです。
今回はこのFIMの目的や特徴や評価方法といった総論と、各項目別の点数の付け方、採点基準、ポイントや具体例についてまとめてみました!
目次
FIMとは?
FIM(機能的自立度評価表)は、その対象を限定せず様々な疾患に対して使用することができるスケールです。
FIMはリハビリテーション全体の経過記録の統一を意図したシステム(united date system:UDS)の一部になっていて、FIMでは対象者が実際に行っている生活動作の状況(しているADL)の状況を評価します。
ちなみにFIMの正式名称は“Functional Independence Measure”になります。
日本語では“機能的自立度評価法”と表記されます。
FIMの開発の歴史的背景について
1983年、アメリカのリハビリテーション医であるGranger(グレンジャー)は、当時あったADL評価法に対して不満を抱いていました。
彼は、患者の能力低下の重症度、および医学的リハビリテーションの治療効果を判定することができる評価方法を開発する必要性があるという考えを満たすべく、ニューヨーク州立大学バッファロー校を中心にACRM(American Congress of Rehabilitation Medicine)、AAPM&R(American Academy of Physical Medicine and Rehabilitation)が後援して、Task Force(特別検討委員会)を設立し、その後の1990年に発表した…という経緯があります。
目的について
FIMによってクライアントを評価する目的ですが、次のような項目があげられます。
- 対象者のADL能力の状態を定量的に判断することができる
- 定期的にFIMで評価することで、ADL能力の状態を比較検討することができる
- 対象者と関わる他職種間、他の医療、介護関連施設間での情報共有のための共通言語として利用することができる
対象年齢について
- FIMの対象年齢は7歳以上
- 7歳未満を対象とした場合は、小児用に評価基準を改変したWeeFIMが使用される
特徴について
FIMの特徴としては次のようなものが主にあげられます。
- 対象者の日常生活上の「しているADL」を評価する
- 疾患や障害による区別はなく、あらゆる病態に対応している。
- 運動に関する13項目、認知に関する5項目の計18項目で構成されている。
- この内の運動項目は、セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動について評価する
- 認知項目については、コミュニケーション能力と社会的認知について評価する
- 医療従事者以外でもFIMを使用して評価することができる
- FIMはすでに数か国語に翻訳され、欧米、豪州などで広く使用されており、信頼性と妥当性がある評価方法である
- 日本では、慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室が発行している。
- 世界共通の介助量を判定するADL評価方法である
FIMのエビデンスグレード
FIMは脳卒中治療ガイドラインのリハ評価尺度グレードBにあげられます。
点数や採点方法について
FIMの点数や採点方法については次のような特徴があげられます。
- FIMの採点方法は、1点〜7点の7段階で評価する
- 満点は126点で、最低点は18点とする
- 日常生活の能力に変動がある場合は、介助量が多い時を採点する
- 運動項目の5点は“監視・助言”、認知項目の5点は“10%未満の介助”になるため点数毎の解釈が運動-認知間で異なる
注意点
FIMによって採点する場合、次の3つの注意点に気を付ける必要があります。
- 対象者の「しているADL」を採点する
- 一日内でそのADL能力に変動がある場合は、最低点を採用する
- いくつかの項目は平均点で評価する
①対象者の「しているADL」を採点
BIは対象者の「できるADL」を採点するのに対して、FIMでは実際に「しているADL」を採点します。
つまり、院内のOTであったらOT室で模擬的に行われる動作や活動ではなく、実際に病棟生活で行われているADLを採点対象とすることになります。
②一日内でそのADL能力に変動がある場合は、最低点を採用
採点対象であるクライアントの年齢や疾患の特徴、使用している内服薬の副作用などによってはそのADL能力に変動が起こる場合があります。
その場合、どちらの「しているADL」を採点対象にするかというと、基本的には低い方の点数をつけることになります。
③いくつかの項目は平均点を記載
採点するときの注意点として「低い方の点数をつける」以外には、「平均点をつける」という項目もあります。
これらの項目に関しては「平均点」をつけることになります。
FIMの評価項目について
FIMの評価項目ですが、大きく分けると「運動」と「認知」の2つに分けることができ、さらに運動項目は、セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動の4種類、認知項目は、コミュニケーション能力と社会的認知の2種類に分けることができます。
運動(13項目)
セルフケア(6項目)
排泄コントロール(2項目)
移乗(3項目)
移動(2項目)
認知(5項目)
コミュニケーション(2項目)
社会的認知(3項目)
FIMで評価をするメリットについて
では、実際の医療や介護現場でFIMによる評価を行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
主に以下のようなメリットが考えられます。
- 対象者のADLの自立度と介護量を定量的に表し、把握することができる
- 他職種間での共通言語として扱うことで情報共有がしやすくなる
- 対象者のADL能力について、評価の見落としが少なくなる
- 対象者本人、家族や介護者に、ADLの能力について具体的に分かりやすく説明することができる
- FIMで評価することで、現段階での生活課題を明確にし、リハビリテーションや看護、介護計画の指標とすることができる
- 定期的にFIMで評価することで、ADLの能力の変化について比較検討することができ、効果判定の指標として扱うことができる
- 定量化することで、研究や論文執筆、学会発表のデータとして扱いやすくなる
FIMの採点のポイントと基準について
FIMの各項目を採点する際のポイントですが、
- 各評価項目の評価対象の定義を理解する
- その項目を遂行するのに介助者が必要かどうかを評価する
- 介助が必要な場合は、どの程度必要なのかを評価する
…を基本にしFIMによる評価を進めていきます。
また、採点基準については以下のとおりになります。
運動項目の採点基準
7点(完全自立)全ての課題を通常通りに、適切な時間内に、完全に遂行できる。
6点(修正自立)
課題を遂行するのに補助用具の使用、通常以上の時間、安全性の考慮のどれかが必要である。
5点(監視・準備)
介助者による指示や準備が必要である。
体には触らない。
4点(最小介助)
手で触れる程度の介助が必要であるが、課題の“75%以上”を自分で遂行できる。
3点(中等度介助)
手で触れる以上の介助が必要であるが、課題の“50%以上”を自分で遂行できる。
2点(最大介助)
課題の“25%以上50%未満”は自分で行う。
1点(全介助)
課題の“25%未満”しか自分で行わない。
認知項目の採点基準
7点(完全自立)複雑な課題を“自立”して一人で行うことができる。
6点(修正自立)
通常以上の時間がかかる。投薬している。安全性の配慮が必要な場合。
5点(監視・補助)
監視、準備、指示、促しが必要。簡単な事項に介助が“10%未満”必要。
4点(最小介助)
“75%以上90%未満”は自分で行う。
3点(中等度介助)
“50%〜75%未満”は自分で行う。
2点(最大介助)
“25%〜50%未満”は自分で行う
1点(全介助)
“25%未満”しか自分で行わない。
各項目の評価対象の定義・評価範囲・採点基準について
では、各評価項目における対象の定義や評価範囲、採点の基準やポイントについて詳しく解説していきます。
食事
まずはセルフケア項目の一つである“食事”の採点方法について解説します。
FIM-食事の評価対象の課題について
食事動作をFIMで評価する際の対象となる課題は、次の4つになります。
- 準備
- 口に運ぶ
- 咀嚼
- 嚥下
つまり、食事が適切に用意された状態で、適当な食器を使って食物を口に運び、咀嚼し、嚥下するまでを評価します。
FIM-食事評価の注意点
FIMで食事を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 配膳や下膳は評価の対象外となる
- 「キザミ食」は安全性の配慮で6点
- 配膳後にきざむ工程がある場合は準備の5点となる
*“もってきてもらう”ことが評価の対象外になるのは食事のみです。
更衣や清拭などでは“準備”として採点します。
FIM-食事の採点基準
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 普通のスプーン使用・バネ付箸を使用して自立 |
6点 | 修正自立 | きざみやとろみといった特別食だが動作は自立 |
5点 | 監視or準備 | 蓋開けやストローの介助が必要 |
4点 | 最小介助 | 食べやすいように食べ物を集めてもらうなどの介助が必要 |
3点 | 中等度介助 | 動作の半分以上は一人で可能 |
2点 | 最大介助 | 食事動作の半分以上は介助が必要 |
1点 | 全介助 | 胃瘻や経鼻管栄養を利用or食事動作が全介助 |
整容
セルフケア項目にある“整容”の採点方法について解説します。
FIM-整容の評価対象の課題について
整容動作をFIMで評価する際の対象となる課題は、次の5つになります。
- 口腔ケア
- 洗顔
- 手洗い
- 整髪
- 化粧または髭剃り
これらの5項目は互いに関連しない別々の動作になります。
FIM-整容評価の注意点
FIMで整容を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 爪切りや着替え、清拭、入浴などの項目は整容に含めない
- 髭剃りと化粧が必要ない場合は、その他の4項目で評価する
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 自分で準備や片づけなども含め自立。 |
6点 | 修正自立 | 自助具を使用し自立。 |
5点 | 監視or準備 | 歯ブラシに歯磨き粉をつけるなど準備が必要だが、あとは自分で可能。 |
4点 | 最小介助 | 一部介助が必要(洗顔は可能だが、うがいで介助が必要etc) |
3点 | 中等度介助 | 整容動作の半分以上は一人で可能 |
2点 | 最大介助 | 整容動作の半分以上は介助が必要 |
1点 | 全介助 | 整容動作が全介助 |
清拭
セルフケアの項目の一つである“清拭(入浴)”の採点方法について解説します。
FIM-清拭の評価対象の課題について
清拭をFIMで評価する際の対象となる課題は、次のようになります。
・身体のうち、①胸部、②右上肢、③左上肢、④腹部、⑤右大腿部、⑥左大腿部、⑦右下腿部、⑧左下腿部、⑨陰部、⑩臀部、の10箇所を洗う、拭く動作
FIM-清拭評価の注意点
FIMで清拭を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 頭と背中(背部)は採点範囲に含まれない
- 浴槽、シャワー、ベッド上など、清拭の場所はいずれでもよい(している方法で評価)
- 洗う、すすぐ、乾かす(拭く)それぞれの工程で重要視されるのは“洗う”に対して
- 足先を洗っていない場合でも介助をしていないのであれば減点はされない
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 加工していない長めのタオルなどを使用し自立している。 |
6点 | 修正自立 | 自助具を使用し自立。 |
5点 | 監視or準備 | 入浴やシャワー浴は可能だが、事前にシャワーチェアの準備が必要 |
4点 | 最小介助 | タオルを絞る、転倒しないように体を支えるといった介助が必要 |
3点 | 中等度介助 | 清拭動作の半分以上は一人で可能 |
2点 | 最大介助 | 清拭動作の半分以上は介助が必要 |
1点 | 全介助 | 清拭動作が全介助 |
更衣(上半身)
セルフケアの項目である“更衣(上半身)”の採点方法について解説します。
FIM-更衣(上半身)の評価対象の課題について
更衣(上半身)をFIMで評価する際の対象となる課題は、次とおりになります。
・腰より上の衣類を①脱ぐ、②着る
FIM-更衣(上半身)評価の注意点
FIMで更衣(上半身)を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 衣服をタンスから取り出す、片付けるといった行為は、“準備”として扱われます
- 上肢装具の着脱も更衣の評価対象となる
- 入浴時の更衣は対象外
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 上衣の更衣動作が準備も含めて自立。 |
6点 | 修正自立 | 自助具を使用して自立 |
5点 | 監視or準備 | ベッドサイドに事前に準備が必要 |
4点 | 最小介助 | 一部介助が必要(ボタンをかける、片腕を通す、たごまりの修正etc) |
3点 | 中等度介助 | 上衣の更衣動作の半分以上は一人で可能 |
2点 | 最大介助 | 上衣の更衣動作の半分以上は介助が必要 |
1点 | 全介助 | 上衣の更衣動作が全介助 |
更衣(下半身)
“更衣(下半身)”の採点方法について解説します。
更衣(下半身)の評価対象の課題について
更衣(下半身)をFIMで評価する際の対象となる課題は、次とおりになります。
- 腰より下の衣類(ズボン・パンツ・靴下・靴)を脱ぐ
- 腰より下の衣類(ズボン・パンツ・靴下・靴)を着る
FIMで更衣(下半身)を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 衣服をタンスから取り出す、片付けるといった行為は、“準備”として扱われます
- 下肢装具の着脱も更衣の評価対象となる
- 弾性ストッキングも装具と同じ扱い
- 入浴時の更衣は対象外
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 下衣の更衣動作が準備も含めて自立。 |
6点 | 修正自立 | 自助具を使用して自立 |
5点 | 監視or準備 | ベッドサイドに事前に準備が必要 |
4点 | 最小介助 | 一部介助が必要(片足を通す、靴下は介助が必要etc) |
3点 | 中等度介助 | 下衣の更衣動作の半分以上は一人で可能 |
2点 | 最大介助 | 下衣の更衣動作の半分以上は介助が必要 |
1点 | 全介助 | 下衣の更衣動作が全介助 |
トイレ動作
セルフケアの“トイレ動作”の採点方法について解説します。
トイレ動作の評価対象の課題について
トイレ動作をFIMで評価する際の対象となる課題は、次の2つになります。
・トイレや差し込み便器使用の前後に衣服を整えること
・陰部の清拭
トイレ動作評価の注意点
FIMでトイレ動作を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 他のトイレ関連動作(移動・トイレ移乗)や排尿、排便管理とは区別して採点する
- 患者が生理用ナプキンに介助が必要な場合(通常月に3~5日)、介助のレベルは5(監視・準備)になる
- 日内変動といった昼と夜とでトイレ動作の状態が異なる場合は、低い方を取る。
- 排尿時と排便時とでトイレ動作が異なる場合も、低い方をとる。
- ポータブルトイレを使用していたとしても、あくまで評価対象は上記の2つになる。
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 下衣の上げ下げも含めて自立。 |
6点 | 修正自立 | 下衣の上げ下げの際、自助具や手すりが必要 |
5点 | 監視or準備 | 陰部清拭や下衣の上げ下げに声掛けや見守りが必要 |
4点 | 最小介助 | 転倒の危険性があるため支持が必要 |
3点 | 中等度介助 | 衣服の上げ・下げ・陰部清拭の3項目のうち1項目のみ介助(臀部清拭のみ介助など) |
2点 | 最大介助 | |衣服の上げ・下げ・陰部清拭の3項目のうち2項目orすべてに介助が必要 |
1点 | 全介助 | 全介助が必要(基本はおむつ使用でまれにポータブルトイレを使用する…という場合でも全介助とみなす) |
排尿管理
排泄コントロールでも“排尿管理”の採点方法について解説します。
排尿管理の評価対象の範囲について
排尿管理をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次の2つになります。
- 排尿管理の成功の程度
- 必要な介助のレベル
FIMで排尿管理を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 排泄の前後のズボンの上げ下げ動作は評価に含まない。
- 空振りは減点対象にはならない
- 昼と夜とで点数が異なる場合は、低い方の点数を採択します。
- 排尿誘導は介助と判断する。
- 失禁をしても自分で片付けて介助が必要がなければ、FIMでは失敗ではないと解釈する。
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 失禁や失敗がない |
6点 | 修正自立 | リハビリパンツ、パットを使用し、連日失禁しているが自分で交換が可能。 |
5点 | 監視or準備 | ポータブルトイレの処理が介助を要する。月1回以下の頻度での失敗。 |
4点 | 最小介助 | 日中はポータブルトイレ自立でも夜間は尿器介助。週に1回失敗がある。 |
3点 | 中等度介助 | 一日に1回以下失敗がある。 |
2点 | 最大介助 | |毎晩失禁の状態。時間誘導や導尿の頻度が多い。 |
1点 | 全介助 | 毎回失敗。留置バルーン使用の状態。 |
排便管理
排泄コントロールでも“排便管理”の採点方法について解説します。
排便管理の評価対象の範囲について
排便管理をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次の2つになります。
- 排便管理の成功の程度
- 必要な介助レベル
FIMで排便管理を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 排泄の前後のズボンの上げ下げ動作は評価に含まない
- 空振りは減点対象にはならない
- 臨時での浣腸対応は普段の対応ではないことから減点対象とはならない
- 昼と夜とで点数が異なる場合は、低い方の点数を採択します
- 失禁をしても自分で片付けて介助が必要がなければ、FIMでは失敗ではないと解釈する
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 失禁や失敗がない。 |
6点 | 修正自立 | 内服薬を自己管理し使用している。 |
5点 | 監視or準備 | 内服薬や浣腸の準備が必要。月に1回未満の失敗がある。 |
4点 | 最小介助 | 週に1回失敗がある。隔日に座薬使用。 |
3点 | 中等度介助 | 一日に1回未満(2日に1回程度)失敗がある。 |
2点 | 最大介助 | |連日1回程度の失敗がある。 |
1点 | 全介助 | 毎回失敗。 |
移乗(ベッド・イス・車いす)
運動項目の一つである「移乗(ベッド・イス・車いす)」の採点方法について解説します。
移乗(ベッド・イス・車いす)の評価対象の範囲について
移乗(ベッド・イス・車いす)をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次のとおりになります。
- ベッド、椅子、車椅子の間での移乗のすべて
FIMで移乗(ベッド・イス・車いす)を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- ベッドから椅子への移乗を評価する際は、患者は仰臥位から始め、仰臥位までを行う
- 移乗の往復で介助量が異なる場合は点数の低い方を取る
- 昼と夜とで異なる場合も低い方を取る
- FIM移乗においてベッドからの起き上がり動作も比重は少ないものの評価対象となる
- 抑制帯の介助をスタッフによって行われなければならない場合は、“準備”にあたる
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 手すりや自助具なしで完全に自立。 |
6点 | 修正自立 | 移乗の際に手すりを使用。 |
5点 | 監視or準備 | 移乗の際に見守りが必要。 |
4点 | 最小介助 | 転倒防止のために軽く介助が必要。 |
3点 | 中等度介助 | 膝折れによる転倒防止のため、軽く引き上げる介助が必要。 |
2点 | 最大介助 | しっかりと引きあげ、ステップも介助が必要。 |
1点 | 全介助 | 全介助の状態。 |
移乗(トイレ)
運動項目である“移乗(トイレ)”の採点方法について解説します。
移乗(トイレ)の評価対象の範囲について
移乗(トイレ)をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次のとおりになります。
- 便器に移ること
- 便器から離れること
FIMで移乗(トイレ)を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- FIM移乗において、ポータブルトイレは“補助具”として扱われる
- 車椅子の位置替えやセッティングは“準備”になる
- 下衣の上げ下げの介助量は“移乗(トイレ)”項目では扱わず、“トイレ動作”の項目で扱う
- トイレを使用せず、尿器やおむつ介助によって排泄を行っている場合は、トイレ移乗動作を行っていないと判断する
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 特に時間もかからずに自立している。 |
6点 | 修正自立 | トイレ移乗の際に手すりが必要。 |
5点 | 監視or準備 | 移乗の際に見守りが必要。 |
4点 | 最小介助 | 転倒防止のために軽く介助が必要。 |
3点 | 中等度介助 | 膝折れによる転倒防止のため、軽く引き上げる介助が必要。 |
2点 | 最大介助 | しっかりと引きあげ、ステップも介助が必要。 |
1点 | 全介助 | 全介助の状態。 |
移乗(浴槽、シャワー)
運動項目である“移乗(浴槽、シャワー)”の採点方法について解説します。
移乗(浴槽、シャワー)の評価対象の範囲について
移乗(浴槽、シャワー)をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次のとおりになります。
- 浴槽、またはシャワー室に入り、そこから出ること
FIMで移乗(浴槽、シャワー)を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- バスグリップを取り付けてもらい使用する場合は“準備”に相当します
- 歩行でも車いすでも問題はありませんが、どちらも安全に行えるかどうかも対象になります
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 特に時間もかからずに自立している。 |
6点 | 修正自立 | 浴槽ボードや手すりが必要だが、自立している。 |
5点 | 監視or準備 | シャワーチェアやマットの準備が必要。 |
4点 | 最小介助 | 浴槽へ出入りする際に片足のみ介助が必要。 |
3点 | 中等度介助 | 浴槽へ出入りする際に両足の介助が必要。 |
2点 | 最大介助 | しっかりと持ち上げるといった介助が必要 |
1点 | 全介助 | 機械浴を使用している。 |
移動(歩行・車椅子)
運動項目である“移動(歩行・車椅子)”の採点方法について解説します。
移動(歩行・車椅子)の評価対象の課題について
移動(歩行・車椅子)をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次のとおりになります。
- 50mもしくは15mの平地での移動動作
FIMで移動(歩行・車椅子)を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 家庭内移動を想定した短距離のみ(最低15m)歩行や車いす駆動による移動が自立している場合は特例としての5点とみます
- 入院時は移動手段として車いすを使用している場合でも、退院時の主な移動手段を用いて評価します
- 車いすは電動、手動は評価に影響しません
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 補助具なしの歩行で50m移動が可能。 |
6点 | 修正自立 | 杖を使用し50m歩行可能。また車いすで50m自立して移動が可能。 |
5点 | 監視or準備 | 50m移動するためには見守りや声掛けが必要 |
4点 | 最小介助 | 50m移動するのに軽く手を添える、方向転換に介助が必要となるような状態 |
3点 | 中等度介助 | 50m移動するのに支持が必要。角を曲がる際に車いす操作の介助が必要。 |
2点 | 最大介助 | 15mは介助にて歩行可能でも真っすぐ直線しか歩行(車いす駆動)ができない。 |
1点 | 全介助 | 歩行、車いす駆動可能な距離が15m未満。 |
階段
ここでは、“階段”の採点方法について解説します。
階段の評価対象の課題について
“階段”をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次のとおりになります。
- 屋内の12~14段の階段(1フロア上まで)の昇降動作
- もしくは4~6段の階段昇降
FIMで“階段”を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 階段昇降を必要としない場合は、階段の項目のみテストをして評価を行う
- しかし、明らかに危険性が高い状況の場合はテストをせず、1点とする
- 階段を昇るときと降りるときの点数が異なる場合は、低い方を採用する
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 手すり使用せずに昇降可能。 |
6点 | 修正自立 | 手すり壁、杖を使用してなら階段昇降可能。 |
5点 | 監視or準備 | 12~14段の階段昇降を見守りにて可能 |
4点 | 最小介助 | 12~14段の階段昇降時、バランスを崩さないように体に触れる程度の介助が必要 |
3点 | 中等度介助 | 12~14段の階段昇降時、次の段に足を乗せるよう介助が必要のような場合。 |
2点 | 最大介助 | 介助にて4段の階段昇降が可能。 |
1点 | 全介助 | 階段昇降が不可能or2人以上の介助が必要 |
理解
ここでは、認知項目の一つである“理解”の採点方法について解説します。
“理解”の評価対象の課題について
“理解”をFIMで評価する際の対象は、相手の指示や会話がわかるかどうかががポイントになります。つまり、
- どのくらいわかっているか?
- 評価者が話しかける際にどのくらい配慮(=介助)しているか
…が評価対象の項目になります。
“理解”評価の注意点
FIMで“理解”を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 言葉の理解をすることを評価するので、物事を正しく判断できるかどうかは評価対象外
- FIMで“理解”項目における“介助”はいわゆる“配慮”として扱われる
- FIMの理解において“簡単な課題”とは、基本的な欲求についてがあてはまります
- また、“複雑な課題とは、複雑、かつ抽象的な内容を含むものがあげられます
- 被験者が認知症や失語症の場合でも、FIMの理解項目を評価する際の原則に従って行う
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 複雑な内容の理解も問題なく可能。 |
6点 | 修正自立 | 理解は可能だが、補聴器を使用している。 |
5点 | 監視or準備 | 簡単な生活上での理解は可能だが、複雑な内容になると困難。 |
4点 | 最小介助 | ゆっくり話す、繰り返しが必要など伝える側に少しの工夫や配慮が必要 |
3点 | 中等度介助 | 難聴があり、繰り返しの提示が頻回(2回に1回未満) |
2点 | 最大介助 | 聞き返しが50%以上の頻度で必要 |
1点 | 全介助 | 完全に理解が困難な状態。促しに全く反応しない。 |
表出
認知項目の一つである“表出”の採点方法について解説します。
“表出”の評価対象の課題について
“表出”をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次のとおりになります。
- 自分の欲求や考えを相手に伝えられるかどうか
- 聞き取るためにどのくらい配慮が必要か
FIMで“表出”を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 複雑あるいは抽象的考えの例には、最近のできごとについての議論、信仰、他人とのかかわりが含まれる
- 表出に対しての介助とは、いわゆる“促し・聞き直し”になる
- 表出において“簡単な課題”とは、FIM理解同様“基本的な欲求について”があてはまる
- “複雑な課題とは、“複雑かつ抽象的な内容を含むもの”があげられる
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 文章としての表出が可能。 |
6点 | 修正自立 | ADL上問題はなく促しも必要ないがやや表現が拙劣。 |
5点 | 監視or準備 | 基本欲求の表出は文章レベルで可能。促しはほとんどいらない状態。 |
4点 | 最小介助 | 少しの促しが必要。 |
3点 | 中等度介助 | 半分近くの促しが必要。文章と単語レベルでの表出が半々。 |
2点 | 最大介助 | 会話内容での相違が50%以上。ほぼ促しが必要。 |
1点 | 全介助 | 欲求の表出がほとんどない。促すも全く反応しない。相手の会話内容を常に推察する必要がある。 |
社会的交流
ここでは、認知項目の一つである“社会的交流”の採点方法について解説します。
“社会的交流”の評価対象の課題について
“社会的交流”をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次のとおりになります。
- 他人と折り合い集団へ参加するかどうか
FIMで“社会的交流”を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- クライアントが寝たきりの状態であったり、意識障害を有している状態の場合は、社会的交流場面が25%未満の状態と判断する
- 問題に対して「的外れな行動」「危険な行動をとる」「行動しない」などを減点対象とする
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | スタッフや他患との関係性も良好。 |
6点 | 修正自立 | 新しい関係性を築くには慣れが必要な程度。 |
5点 | 監視or準備 | 不快な言動がまれにある。 |
4点 | 最小介助 | 自分中心で相手の状況を察知することが困難。 |
3点 | 中等度介助 | 暴言や汚い言葉を吐くことが多い。マンツーマンでは問題はない。 |
2点 | 最大介助 | マンツーマンでも問題があり、介入する際にスタッフに恐怖心がある。 |
1点 | 全介助 | 常に見守りが必要。夜間せん妄が重度の状態。 |
問題解決
認知項目の一つである“問題解決”の採点方法について解説します。
“問題解決”の評価対象の範囲について
“問題解決”をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次のとおりになります。
- 生活に即した問題を解決する能力
FIMで“問題解決”を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 問題解決の項目における“日常の問題”とは、日常の課題をうまくこなしたり、日常生活のなかで起こる不測の事態や危険に対処することなどが含まれる
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | 複雑な問題でも認識が可能で適切な判断ができる。 |
6点 | 修正自立 | 解決に時間がかかる。 |
5点 | 監視or準備 | 日常の問題はほぼ解決できるも、まれに困難な時あり。こちらからの促しや見守りが必要。 |
4点 | 最小介助 | 日常の問題を時々解決できず、こちら側に支援を求めてくる |
3点 | 中等度介助 | 日常の問題の半分以上を解決できない。 |
2点 | 最大介助 | ほぼ問題解決ができない。指示や見守りが必要。 |
1点 | 全介助 | 日常の問題解決が全くできない。 |
記憶
最後に、認知項目のである“記憶”の採点方法について解説します。
“記憶”の評価対象の範囲について
“記憶”をFIMで評価する際の対象となる範囲は、次のとおりになります。
- 日常的活動で情報を記憶し再生することができるかどうか?
FIMで“記憶”を評価する際に、間違いやすいこととして次のようなものがあげられます。
- 記憶の項目では、評価対象は決してクライアントの過去の思い出や、遠い先の予定についてではない
- あくまで日常生活に関することや、依頼を覚えているかどうかといったことが対象
得点 | 自立度 | 基準例 |
---|---|---|
7点 | 完全自立 | ①日常の業務 ②見慣れた人の認識 ③依頼や指示の実行 の3つが可能 |
6点 | 修正自立 | ノートやカレンダーを使用してなら自立している状況 |
5点 | 監視or準備 | 促しが必要 |
4点 | 最小介助 | 4回に1回の頻度で促しが必要。 |
3点 | 中等度介助 | 見慣れた人の名前はわからないが顔は認識している。 |
2点 | 最大介助 | なんとなくスタッフの顔はわかるが指示や依頼を覚えてない。 |
1点 | 全介助 | ほとんど記憶が困難 |
FIMで採点する際のポイント
FIMで採点する際にはまずは大きく自立(7点or6点)か介助(5点~1点)のどちらかに分け、そこからさらに絞り込んでいく…方法がスムーズにFIMで採点していくためのポイントと言えます。
まとめ
多くの医療機関や介護福祉関連施設などを利用する場合、共通の情報としてFIMは非常に有効な評価手段といえます。
ただFIMの採点をする側がいくら細かく得点化して評価しても、受け取る側の解釈が異なるとFIMの有用性が低くなってしまいます。
広く様々な業種がFIMで採点することと同時に、解釈をする技術も必要になってくるのかもしれません!
作業療法士は語りたい!
脳卒中の機能評価―SIASとFIM[基礎編] (実践リハビリテーション・シリーズ)