リハビリテーション評価

FAB(前頭葉機能検査)の方法と解釈、カットオフ値についてまとめてみた!

 

前頭葉の検査である“FAB”は、作業療法でよく使用される神経心理学検査の一つですが、その方法は結構わかりにくかったりします。
なにより高次脳機能障害の病態を理解していないと結果の解釈がずれてきてしまいます。

結果として前頭前野の評価ツールとしては有用だけど、実際の臨床や現場ではうまく使えない…って作業療法士も多いようです。
今回はこの“FAB”について、検査方法や解釈、カットオフ値などについてまとめてみました!

FABについて

FABは“Frontal Assessment Battery at bedside”と呼ばれるリハビリテーション医療でも特に作業療法の分野で広く使用される高次脳検査の一つです。
高次脳でも特に前頭前野の機能をみる検査になります。

ちなみによく「FABって何の略なんですか?」という質問をいただくのですが、「Frontal Assessment Battery」の略称になります。
和訳すると“前頭検査バッテリー”ですが、“前頭葉検査バッテリー”と訳す方が正しいでしょうね!

FABは広く使用されている?

FABはリハビリテーション医療の分野でも広く使用されている検査の一つです。
広く使用されている理由としては、

・短い検査時間で可能なこと
・特別な用具を用いないこと
…などがあげられます。

ただしまだ標準化されていない点からも評価における点数の基準値がはっきりしていないのが現状のようです。

FABの対象疾患について

FABの検査の対象疾患としては、

脳卒中(脳梗塞・脳出血)
・頭部外傷
パーキンソン病

…といった中枢性疾患のクライアントに対して行われることが多いようです。

それに加え、

・統合失調症
・認知症(アルツハイマー型認知症・前頭側頭型認知症etc)
…といった精神科疾患のクライアントに対しても行われる場合があります。

また後述しますが、自動車運転評価の一つとしても行われているようです。

FABの検査目的について

FABの検査を行う対象疾患は前述のとおりですが、その検査目的については以下のとおりになります。

・注意障害の有無を判断するため
・前頭葉の機能検査のため
・遂行機能障害の有無を検査するため
・脱抑制行動の有無を検査するため

…などがあげられます。

FABの検査項目について

FABの検査項目には、

①類似性(概念化)
②語の流暢性(思考の柔軟性・知的柔軟性)
③運動系列(運動プログラミング)
④葛藤指示(鑑賞刺激に対する過敏性)
⑤GO/NO-GO課題(抑制コントロール)
⑥把握行動(環境に対する非影響性)

…の6つのテストがあります。
以下に各検査項目について説明します!

①類似性(概念化)

Q.これから言う2つのものは、どこが似ているか考えて答えてください。

①「バナナ」と「みかん」は? -(果物、食べ物)
②「テーブル」と「椅子」は? -(家具)
③「チューリップ」と「バラ」と「雛菊」は? -(花、植物)

方法

この課題では「バナナとみかんはどこが似ていますか?」というような質問をします。この質問に対して被験者には口頭で答えてもらいます。

対象領域

正式な回答を答えるためには、言語による“概念操作”の能力を必要とするので、左半球の前頭前野の活動…つまり言語概念の操作(右利きの人の場合)を反映すると考えられます。

注意点

被験者が左利きの人の場合は、単純に右半球の活動を反映しているということにはならないので注意が必要です。

得点

正答数 点数
3問正答 3点
2問正答 2点
1問正答 1点
正答なし 0点

②語の流暢性(思考の柔軟性・知的柔軟性)

Q.“かきくけこ”の“か”から始まる言葉をできるだけたくさんあげてください。ただし、人の名前や地名などはいけません。

方法

「“か”からはじまる言葉をできるだけたくさんあげてください」と教示し、被験者には口頭で答えてもらいます。

対象領域

自発的に言葉を作り出す領域…左半球の前頭前野(右利きの人の場合)の活動を反映すると考えられます。

注意点

同じ単語の繰り返しや変形、人の名前や固有名詞は正当としません。制限時間は60秒で10語以上答えられたら終了です。

得点

正答数 点数
10語以上 3点
6語以上 2点
3語以上 1点
2語以下 0点

③運動系列(運動プログラミング)

指示①:「わたしがすることをよく見ていてください。」
検者自身の右手を、手のひらを上にして机の上に置き、
(1)自分の左手をグーにして、自分の右手のひらをたたく
(2)次にその左手をパーにして(手刀で)、自分の右手のひらをたたく、
(3)最後に、左手をパーのままで、手のひら同士を合わせる(拍手)
…以上の連続動作を、3回くり返します。

指示②:「次にあなたの番です。同じことをやってみましょう。まず、私と一緒にやります。次に一人でやっていただきますのでよろしくお願いします。それでは一緒にやってみましょう」
被験者と一緒に(1)~(3)の連続動作を3回繰り返します。

指示③「今度はひとりでやってみましょう。」

方法

自分の左手の掌を右手で“グー・手刀・掌”の順番に叩いてもらいます。
これは“hand-fist-palm”と呼ばれています。

対象領域

前頭葉の中でも高次運動野の機能(運動プログラミング)を検査する項目になります。

注意点

指示②が理解できない場合でも、そのまま指示③に進みます。指示③の段階で、途中で間違えた場合はそこで終了とします。

得点

結果 点数
1人で連続動作6回以上可能 3点
1人で連続動作を3回以上可能 2点
1人ではできないが検者と一緒なら連続動作3回可能 1点
それ以外 0点

④葛藤指示(鑑賞刺激に対する過敏性)

指示①:「私がいちど指でポンとたたいたら、続けて自分の指で2回ポンポンとたたいてください。」
検者がポン・ポン・ポン(1-1-1)とタップしたら、、1回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(2-2-2)。 これを3回くり返します

指示②:「こんどは、私が 2 回指でポンポンとたたいたら、自分の指で1回ポンとたたいてください。」
検者がポンポン・ポンポン・ポンポン(2-2-2)と指をタップし、1回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(1-1-1)。これを3回くり返します。

指示③:「では、今の約束を使って、私に続いて、自分の指でたたいてください。」
1-1-2-1-2-2-2-1-1-2(合計10回の連続動作)

順番で指をタップし、1 回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(2-2-1-2-1-1-1-2-2-1)。

対象領域

ルールに従った運動の発現は前頭葉の高次運動野と前頭前野内側面を検査します。
また、「どのように検者は指を叩いたのか?」というワーキングメモリの機能も必要になりますから、前頭前野の機能全般が検査対象の項目と考えられます。

注意点

途中で間違えてもやり直しをせず、最後まで課題を終わらせます。

得点

結果 点数
失敗なし 3点
失敗2回まで 2点
失敗3回以上 1点
検者と同じ回数のタップを続けて4回以上ある 0点
全くたたかないor全て1回(2回)たたくorただたたいてる 0点

⑤GO/NO-GO課題(抑制課題)

指示① :「私が1回指でポンとたたいたら、同じように1回ポンと自分の指でたたいてください。」
ポン・ポン・ポン(1-1-1)とタップし、1回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(1-1-1)。これを3回くり返します。

指示②: 「私が2回指でポンポンとたたいたら、自分の指は動かさないでください」
ポンポン・ポンポン・ポンポン(2-2-2)と指をタップし、これを3回くり返します。
この場合被験者は何もタップせずにいることが正解になります。

指示③:「では今の約束を使って、私に続いてやってみましょう」
1-1-2-1-2-2-2-1-1-2(合計10回の連続動作)

の順番で指をタップし、1回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(1-1-0-1-0-0-0-1-1-0)。

方法

指を1回ポンと叩いたときは被験者も同じように“1回”、2回ポンポンとたたいた時には被験者は“叩かない”というルールを設けます。

対象領域

反応の選択課題で必要となる脳の領域のほかに、行動(指運動)を抑制する両側半球の前頭前野の機能(行動抑制)を検査する項目になります。

注意点

途中で間違えてもやり直させず、最後まで課題を終わらせます。

得点

結果 点数
失敗なし 3点
失敗2回まで 2点
失敗3回以上 1点
検者と同じ数タップを続けて4回以ある 0点
全くたたかないor全て1回(2回)たたくorただたたいてる 0点

⑥把握行動(環境に対する非影響性)

指示:「私の手を握らないでください」と言って以下の動作をします
①検者は被験者の正面に座ります。
②被験者の手のひらを上に向けて、両手を机の上にのせます(片麻痺の場合は片側で構いません)。
③検者は、何も言わずに被験者の目を見て、自分の両手を被験者の手のそばによせ、手のひらを合わせるようにそっとつけます。
④手を握らないでじっとしていられるか数秒間観察します。

対象領域

行動の抑制機能を検査する課題であるため、両側半球の前頭前野の機能を検査する項目と考えられます。

注意点

もし被験者が検者の手を握ったら「私の手を握らないでください」ともう一度指示してから同じ動作を繰り返します。

得点

結果 点数
被検者が検者の手を握らない場合 3点
被験者が躊躇してどうしたらよいのか聞いた場合 2点
被験者が躊躇せずに検者の手を握った場合 1点
注意されたあとにも検者の手を握った場合 0点

FABの平均値とカットオフ値について

FABの疾患別平均値、年齢別平均値とカットオフ値については以下に説明します!

疾患別平均値

疾患別の平均値は、以下の通りになっています([ ]内は標準偏差)。

疾患 平均点
健康群 17.3[0.8]
PD(パーキンソン病)群 15.9[3.8]
MSA(他系統萎縮症)群 13.5[4.0]
CBD(皮質基底核変性症)群 11.0[3.7]
AD(アルツハイマー型認知症) 12.6[3.7]
PSP(進行性核上性麻痺) 8.5[3.4]
FTD(前頭葉型認知症) 7.7[4.2]
15点以下であれば認知機能の低下が疑われ、
10点以下になると前頭葉型認知症の可能性が非常に高くなると判断してもいいかもしれないですね!

また、年齢別での平均点は以下の通りになります。

年齢別平均値

健常者の年齢群毎のFAB平均得点

20~30代

全例 20代 30代
FAB 15.6±1.4 16.7±0.8 17.0±0.8
類似性 1.78 2.18 2.24
流暢性 2.76 2.76 3
運動系列 2.94 3 3
葛藤指示 2.87 3 3
Go/NoGo 2.40 2.82 2.86
把握行動 2.95 3 3

40~50代

全例 40代 50代
FAB 15.6±1.4 16.1±1.0 15.3±1.4
類似性 1.78 1.96 1.70
流暢性 2.76 2.78 2.70
運動系列 2.94 2.96 2.80
葛藤指示 2.87 2.87 2.85
Go/NoGo 2.40 2.61 2.25
把握行動 2.95 2.91 3

60~70代

全例 60代 70代
FAB 15.6±1.4 14.6±0.9 14.4±1.3
類似性 1.78 1.41 1.29
流暢性 2.76 2.73 2.57
運動系列 2.94 2.95 2.90
葛藤指示 2.87 2.68 2.86
Go/NoGo 2.40 1.95 2.00
把握行動 2.95 3 2.81

参考文献:Frontal Assessment Battery(FAB)の年齢による効果. 神経心理学 2009;25(1):51-56.

FABのカットオフ値について

FABの明確なカットオフ値は定められていないようですが、11/12との意見もあるようです。
*合計点数18点満点

リハビリの様々な検査のカットオフ値についての記事一覧はこちら

FABの結果解釈について

FABの点数が年齢平均以下であったり、カットオフ値を下回る結果になったからと言って、「そのクライアントの前頭葉機能に障害がある!」と短絡的に解釈してはいけません。
FABの点数結果のみに捉われず、知能や記憶といった他の認知機能、運動機能、そして注意、集中といった能力の評価結果も踏まえた上で解釈していく必要があります。

だからこそ、検査結果の点数に捉われず、サブテストに対してのクライアントの回答の様子や反応といった点にまで注意を払い観察する必要があります。

FABと失語症について

FABの検査項目のほとんどは“言語性課題”を含む検査方法であること、特に制限時間内に語を想起させる課題があることから、その点数結果によって被験者の失語症の有無の検出に有効…ともいわれています。
むしろ失語症の影響により教示内容が理解できない…という場合もあるので、前述したようにFABの点数だけで判断せず、“SLTA”といった失語症に特化した検査を行い総合的に判断する必要があります。

FABは精神科でも使用される?

FABは“前頭前野機能”や“遂行機能障害”をターゲットにした検査方法ですので、統合失調症やADHDのクライアントの前頭葉の機能検査にももちろん有効です。

FABの保険点数・診療報酬について

現時点(平成30年)の時点ではFABはまだ診療報酬、保険点数の対象となっておりません。
あくまでもリハビリテーション、作業療法の枠組み内での検査…という扱いになるのでしょうね!

FABとBADSも遂行機能(実行機能)の検査方法

FABは前頭葉機能の検査あくまで簡便な検査方法(スクリーニング)としての検査方法であり、遂行機能を詳細に検査する方法としては“Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome(BADS)”があげられます。

まとめ

FABはその詳細についての文献がなかなかみつからないこともあり、方法や解釈に多少ばらつきがあるように感じます。
しかし、短い検査時間、特別な用具を用いず手軽に導入できる検査方法ということ、社会的な問題になっている高齢者の自動車運転の評価に使われることからも、今後FABの方法やデータは重要になってくると考えられます。

作業療法士は語りたい!

FABでの検査対象領域でもある前頭前野って
社会生活を送る上では重要な領域ですよね!
俗にいう「空気が読めない(KY)」ってのも前頭前野の働きが関与しているからね!
KYな人に多いとされる“大人の発達障害”、って最近注目されてもいますからね・・・。

その他の前頭葉機能検査について

Trail Making Test(TMT)
ウィスコンシン・カード分類検査(WCST)
ストループテスト
ロンドン塔課題
言語流暢性課題

 

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
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