障害を有していてもどうにか一般企業で働きたい…それを支援するサービスが“就労移行支援”といえます。
今回はこの就労移行支援の対象や年齢、支援内容や利用する際のメリット、デメリットなどについて解説します!

就労移行支援とは?

“就労移行支援”とは、障害を有する人が一般企業からの雇用につながるように支援する通所型の就労支援サービスになります。
これは国の支援制度でもある“障害者総合支援法”という法律に基づく就労支援という社会参加をサポートするサービスの一つになります。
ひとりで就職先を探していても、自分の能力にあった雇用先がなかなかみつからない…なんて場合に利用すると、非常にスムーズに企業からの雇用につながることができます。

対象について

就労移行支援のサービスを利用できる対象としては、まず原則年齢が18歳以上から65歳未満という前提があります。
その上で単独では一般企業への就職が困難である何かしらの障害を有していてる人…が対象となります。

全国の事業所数について

実際に就労移行支援事業所は、全国にどのくらいあるのでしょうか?

年度 事業所数
平成26年度(2014) 2858
平成27年度(2015) 3146
平成28年度(2016) 3323
平成29年度(2017) 3471

出典:平成29年度社会福祉施設等調査の概況

平成29年度までのデータですが、確実に毎年増えていることがわかります。

平均工賃(賃金)について

よくある質問として、「就労移行支援事業所ではいくら工賃(賃金)がもらえるのか?」という内容です。
就労移行支援事業はあくまで一般企業への就職につなげるための訓練の場の要素が強い支援サービスです。
そのためその作業活動に対しての工賃は発生しないのが特徴ですし、逆に利用料がかかるということが注意点とも言えます。

工賃(賃金)が発生する就労支援サービスとしては、就労継続支援A型就労継続支援B型などがあげられます。

利用料金について

就労移行支援事業所の利用料金についてですが、利用者負担額はサービス提供費用の1割を上限としたうえで、世帯所得に応じて負担上限が設けられています。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(*1) 0円
一般1 市町村民税課税世帯(所得割16万円(*2)未満) 9,300円
一般2 上記以外 37,200円

*1:3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯
*2:収入が概ね600万円以下の世帯

また、入所施設利用者(20歳以上)やグループホーム、ケアホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合は“一般2”となるので注意が必要です。
この料金は行政で定められているため、どの就労支援事業所でも基本的には同じ料金と言えます。

交通費について

どの就労支援事業所の案内をみても、基本的には交通費は利用者の自己負担になるようです。
しかし、市区町村や事業所によっては交通費の助成を行っている場合もあるので問い合わせてみる必要があります。

送迎について

利用者によっては「就労移行支援事業所に通いたいけど、通うための手段がない…」という方もいらっしゃいます。
実際、送迎の有無については各事業所によって様々なようですが、「通勤も就労への訓練の一部」と捉えると、自分で事業所まで通う方法を検討する必要性が必ずでてくると言えます。

利用期間について

就労移行支援の標準利用期間は24ヶ月ですが、場合によっては数ヶ月~最長2年間まで利用延長することができます。

利用者数

就労移行支援を利用している人数は、平成30年3月の段階で、約3.3万人になるようです。

参考:社会福祉施設等調査、国保連データ、学校基本調査、障害者雇用状況調査、患者調査、生活のしづらさなどに関する調査

一般企業への就労移行率について

就労移行支援事業所における一般就労への移行率についてですが、次のようなデータがあります。

年度 移行率
平成20年 10.0%
平成21年 12.1%
平成22年 16.4%
平成23年 20.1%
平成24年 20.2%
平成25年 24.9%

支援サービス内容

就労移行支援で受けられる支援サービス内容としてですが、主に次のようなサービスがあげられます。

  • 個別支援計画の作成
  • 生産活動や職場体験といった活動の機会の提供
  • 就労に必要な知識や能力を向上するための訓練の実施
  • 求職活動に関する支援の実施
  • 利用者の適正に応じた職場の開拓
  • 就職後における職場への定着のために必要な相談や支援の実施

以下に詳しく解説します。

個別支援計画の作成

支援サービスといっても利用者全員に同じサービスやプログラムを行うわけではありません。
利用者個人の特性や体調、障害の状態や持っている能力、本人の希望などを聴取し、その上で利用者に合った支援計画書を作成します。

生産活動や職場体験といった活動の機会の提供

実際の就労後の状況や場面などを想定した上での生産活動、職場体験といった活動を行う機会を提供します。
これは就労移行支援事業などでのサービスを受けないとなかなかできないことであり、ある程度就労後の一日の流れや生活リズムをつけ習慣化するためには必要なことになります。

就労に必要な知識や能力を向上するための訓練の実施

活動の機会を提供したうえで、利用者が希望する仕事に合わせた知識や能力を身につけるための訓練を行います。
プログラム内容はその利用者や就労支援事業所によって違いはありますが、主に

・PC操作(Word・Excel)
・ビジネスに関する基礎研修
・ストレスへの対処方法
・トレーニングや体力作り

…といったプログラム内容があげられます。

就労移行支援のメリット・デメリットについて

では、改めて就労移行支援による支援サービスを利用するメリットとデメリットとはどのようなものがあげられるか考えてみます。

メリット

就労移行支援を利用することでのメリットとしては次のとおり。

  • たくさんの情報がすぐに得られる
  • 生活リズムを整えるきっかけになる
  • 就職に有利な技術や知識が身につく
  • 定着支援を受けられる

以下に詳しく解説します。

たくさんの情報がすぐに得られる

就労移行支援事業所を利用することでのメリットとしは、なにより就職に関するたくさんの情報がすぐに得られることです。
どんな企業が求人を出しているのか?合理的配慮ができる企業はどこか?といった自分ひとりで就職先を探すだけでは得られないような情報が集まってくる…というのも就労支援事業所を利用するメリットと言えます。

生活リズムを整えるきっかけになる

毎日の生活リズムを整えるということは、自分ひとりではかなり難しいことです。
多少なりとも強制的に整えざるを得ない状況や環境下に置くことも必要かなと思います。
そういった意味でも、就労移行支援事業所を利用することで、毎日決まった時間に起床し、朝食を食べ、事業所へ行きプログラムを受け、帰宅する…という習慣化につながるような環境が必要になります。

就職に有利な技術や知識が身につく

就労移行支援事業所で行う支援プログラムは、PCスキルやビジネススキルなど内容によっては非常に高額な受講料を払わないと受けられないようなものもあるようです。
また、支援事業所によっては資格取得に力を入れている事業所もあるようです。
例としては、簿記検定3級や宅地建物取引士(宅建)、FP技能検定3級といった資格取得を目指すプログラムを提供しているので、資格を取得するための料金を含め考え方によってはかなりのメリットと言えます。

定着支援を受けられる

実際に就労することができても、職場へうまく馴染めずすぐに離職してしまう…という問題もあります。
そこで就労支援事業所は長く雇用先に勤め続けることができるような“定着支援”にも力をいれている事業所が多くあります。
利用者自身の考え方や癖、得意不得意を理解している支援事業所は、いわば仕事の相談先として非常に優秀な存在になり得ると言えます。

デメリット

逆に、就労移行支援を利用することでのデメリットとしては次のとおり。

  • 賃金(工賃)がでない
  • 利用期間中はアルバイトができない
  • 2年間の利用期間内で就労につなげる必要がある
  • 職場の斡旋は得られない
  • 世帯収入によっては利用料金が高くなる
  • 人間関係で嫌になる

以下に詳しく解説します。

賃金(工賃)がでない

就労継続支援A型就労継続支援B型とは異なり、あくまでも一般企業への就労のための訓練を目的として利用する事業所ですので、サービスを受けるためそこに賃金(工賃)は発生しません。

利用期間中はアルバイトができない

地方自治体によっては支援事業所を利用している間はアルバイトとの併用が認められない場合があるようです。
また、支援事業所を利用するのは基本的に平日の日中ですので、アルバイトを認められて行うにしても日中の夜か土日になってしまいます。
生活リズムを整えるという点からも、あまりこの方法はおすすめはしない…というのが実際のところのようです。

2年間の利用期間内で就労につなげる必要がある

基本的に就労移行支援事業所の利用は2年間であり、その期間内での就労を目指すことになります。
この期間限定がいい意味でのプレッシャーになるのか、悪い意味でのプレッシャーになるのかは利用者によってですが、“期間限定”ということは頭に入れておく必要があります。

職場の斡旋は得られない

就労移行支援事業所はあくまで就労につなげるための支援サービスを提供する事業所です。
利用者の特性に合ったプログラムを提供はしますが、利用者に合った雇用先を見つけ斡旋してくれるということはないといってもいいようです。
そのため「事業所が自分にピッタリな雇用先をみつけてくれるはず!」と間違った期待をして、「待ちの姿勢」でいるといつまでたっても就労につながらず、気が付いたら利用期間が終わってしまう…というケースもあるようです。
就労移行支援事業所はあくまでサポートする立場。
利用者本人が自分から積極的に動くという姿勢がなければ、やはり就労は難しくなってしまうようです。

世帯収入によっては利用料金が高くなる

就労移行支援事業所の利用料金については前述のとおりですが、世帯収入がある場合少なくても月9000円の利用料金がかかってしまいます。
この利用料金を支払う以上のメリットを見いだせれば問題ないのでしょうけど、その価値のバランスについては考慮しないといけません。

人間関係で嫌になる

どの職場でもどのコミュニティでも人間関係での問題はあります。
ただ就労移行支援事業所を利用する場合、どうしても様々な障害を有する人を受け入れている以上、距離感がつかめない人やコミュニケーションを取りづらい人といった方と一緒にサービスを受けることになります。
加えて、スタッフとの関係の構築も課題になるので、利用者によっては就労移行支援事業所に通うことがストレス…になってしまうケースも多いようです。

関連記事:就労移行支援が合わないし行きたくない! -意味がない作業やプログラムに必要な2つの“変える事”について

まとめ

国としても就労継続支援事業も、就労移行支援事業も最終的な目標としては一般企業への就労として掲げているようです。
でもそのためにはやはり能力の格差もあるためハードルが高い状態とも言えます。
個々人に合った働き方を見つけ、活躍する場を提供するという視点も大事なんだと言えます。

作業療法士は語りたい!

その障害種類や程度にもよるけど、いかにクライアントが持つ能力を引きだし、それに合った企業とマッチングさせるか?というのも就労支援に関わるOTにとっては必要かもしれないね!
その“障害”をどこまで“個性”のレベルに引き下げられるか?という視点でしょうね。