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パーキンソン病の更衣に対して行うべき14のコツ – 作業療法による評価・訓練・指導的な見解から

 

パーキンソン病のクライアントの“着替える”ことに対してのリハビリテーションとはどのようなポイントを抑えて行うべきなのでしょうか?
今回はパーキンソン病の更衣に対して行うべき14のコツについて、作業療法士としての評価や訓練、そして日常生活の指導的な見解からまとめました!

パーキンソン病の更衣のコツについて

更衣動作はパーキンソン病のクライアントにとって、非常に行いにくいADL動作とされています。
理由としては、動作の緩慢さ、記憶誘導性の運動障害によって更衣動作の袖や裾を通す、頭を襟口に通す…といった工程が着替えにくさを引き起こしていると考えられます。
パーキンソン病の病態や症状の特徴をしっかり把握し、以下のようなコツを抑えることで、着替えやすさを獲得でき、ADL能力、QOLの向上につなげることができます。

①着替えの時間を十分に確保する
②毎日の習慣化につなげることを意識する
③更衣動作の工程を単純にする
④着衣の際は動きが固い側の手足から通す
④座って着替えを行う
⑥摩擦抵抗が大きく、伸縮性が低い生地の衣服は避ける
⑦視覚や触覚といった感覚入力を増やして行う
⑧靴下はゆったりとしたもの
⑨マジックテープなどでカスタマイズする
⑩自助具を検討してみる
⑪靴ひもは伸縮性のあるもの、もしくはレースロックなどを使用する
⑫屋内ではスリッパではなく滑り止め靴下を着用する
⑬体温調節に注意
⑭普段からのストレッチやリハビリテーションを怠らない

…といった点が、パーキンソン病に対する更衣のコツになります。
以下に詳しく解説します。

①着替えの時間を十分に確保する

パーキンソン病のクライアントはその症状からどうしても動作が緩慢になってしまいます。
また、急ごうとすることで過度のストレスがかかり、パーキンソン病の症状が悪化する…ということもあります。
着替えをするための時間を十分に確保し、余裕をもって行えるようにする必要があります。
加えて、パーキンソン病は薬によって動作が変わりやすい疾患でもあるので、薬を飲み効果が効きだすまでの時間も考慮して着替えの時間を設定することも必要です。

②毎日の習慣化につなげることを意識する

パーキンソン病の特徴的な症状のひとつに、自律神経症状があります。
この自律神経の不調はパーキンソン病という疾患そのものから引き起こされるものではありますが、そこから生活習慣が乱れることでなお自律神経の悪化を招く場合があります。
毎日同じ時間に起き、着替えをする…といった一日の生活リズムを一定のものに整えるよう意識することも重要なことと言えます。

③更衣動作の工程を単純にする

着替えるという活動は非常に複雑な動作工程と様々な動作要素によって成り立っています。
細かく、素早い動きをすることが困難なパーキンソン病のクライアントにとっては、非常に遂行しにくいADL動作といえます。
できるかぎり更衣動作の工程を簡略化し、単純にわかりやすく、遂行しやすいよう設定することは、作業療法士にとって重要なことになります。

関連記事:更衣動作の工程分析・動作分析について

④着衣の際は動きが固い側の手足から通す

脳卒中による片麻痺の更衣動作のケースと同様、動かしにくい側の上下肢から、衣服の袖や裾に通すとスムーズになります。

④座って着替えを行う

パーキンソン病の症状のひとつで、姿勢反射障害があります。
この症状によって非常に姿勢バランスが悪くなり、転倒の危険性が高くなります。
更衣動作という動的な姿勢保持能力を必要とする動作を行う場合は、安定した姿勢である座位姿勢で行うようにします。

⑥摩擦抵抗が大きく、伸縮性が低い生地の衣服は避ける

衣服の素材によっては着替えをしにくくなったり、着替えても動きにくくなる場合があります。
摩擦抵抗が大きいベロアなどの生地素材の衣服は避けるべきでしょう。
また伸縮性が低い衣服も、パーキンソン病のクライアントにとっては非常に動きにくくなるため、衣服の選択には配慮する必要があります。

⑦視覚や触覚といった感覚入力を増やして行う

パーキンソン病はその病態から、記憶優位性の運動を遂行することが非常に困難になります。
そのため着替えの動作がなかなか進まない、途中で止まってしまう…という場合は、目で確認しながら行う(視覚代償)、素材の変化や縫い目などを手掛かりにする(触覚代償)といった方法を利用するとスムーズにいく場合もあります。

⑧靴下はゆったりとしたもの

伸縮性が低い靴下は履きにくいだけでなく、足関節のスムーズな動きを妨げる為転倒の要因にもつながるので避けるべきです。

⑨マジックテープなどでカスタマイズする

パーキンソン病のクライアントは巧緻動作の能力低下が著明になります。
そのためボタンやファスナーの操作が困難になる場合があるので、大きなものに変える、マジックテープに付け替えるといったカスタマイズが必要です。

⑩自助具を検討してみる

リーチャーやボタンエイドといった更衣動作への自助具を利用することで動作がスムーズになる場合があります。
しかし、動作工程が増え複雑化し逆に着替えにくくなってしまった…というケースもあるため、導入に関してはしっかりと評価とアフターフォローを行わないといけません。

関連記事:更衣動作に役立つ自助具・福祉用具10選

⑪靴ひもは伸縮性のあるもの、もしくはレースロックなどを使用する

靴を履いている足部へのリーチも、パーキンソン病のクライアントにとっては困難な動作工程のひとつになります。
その上で伸縮性が低い靴ひもを結ぶ…という課題は非常に負担が大きくなります。
できる限り伸縮性の高い靴ひも、もしくはレースロックといったツールを使用することも必要になります。

⑫屋内ではスリッパではなく滑り止め靴下を着用する

屋内、またはトイレ内などでルームシューズやスリッパを履く習慣がある場合、パーキンソン病のクライアントにとっては転倒のリスクが高くなってしまいます。
どうしても靴下だと滑ってしまい歩きにくい…なんて場合は、滑り止め機能がついている靴下を履いた上で評価してみる必要もあります。

⑬体温調節に注意

パーキンソン病の自律神経症状によって、体温調節がうまくいかない場合があります。
認知症に対しての更衣動作でも触れたように、着用する衣服の枚数や素材などが季節や気温に合っているかどうかをチェックすることも重要です。

⑭普段からのストレッチやリハビリテーションを怠らない

パーキンソン病は進行性の疾患です。
どうしても徐々に体は固くなり、動きが緩慢になってしまいます。
少しでもその進行をゆるやかなものにし、できる限り長い期間自分で着替えることをできるようにするためにも、普段からのストレッチやリハビリテーションによって身体機能のコンディショニングを行っておく必要があります。

まとめ

パーキンソン病のクライアントに対しての更衣を考える場合は、その疾患、症状の特徴と、どのような代替手段を用いたらよいのかといった点に注意しながら評価、訓練、そして指導を行っていく必要があります。
そして転倒の危険性に対しても考慮しながら、そのクライアントの生活イメージに合わせた介入を行っていくことが、作業療法士に求められる能力と言えます。

作業療法士は語りたい!

脳卒中とは違い、疾患そのものが進行性という点が、パーキンソン病の特徴でもあるでしょうね!
非進行性の疾患に対してももちろんだろうけど、評価や訓練、指導を行って、
その後定期的にフォローをしていくことが重要だね!
 

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
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