Rehabilitation

高次脳機能障害への更衣動作リハビリテーション – 作業療法における評価・訓練・指導について

 

脳卒中や頭部外傷といった原因による高次脳機能障害を呈したクライアントは、非常に更衣動作に対して難渋を示すケースが多くあるようです。
更衣動作そのものが持つ特徴にもよるところですが、逆に考えれば更衣動作は高次脳機能障害へのリハビリテーション訓練的な要素を多く含んでいる活動とも言いかえれます!
そこで今回はこの高次脳機能障害への更衣動作の評価方法や訓練プログラム、そして指導方法についてまとめました!

高次脳機能障害の更衣動作に対しての評価について

脳出血や脳梗塞といった脳血管障害や頭部外傷の場合、多くのクライアントはなにかしらの高次脳機能障害を呈することがあります。
身体機能として更衣動作が可能でも、高次脳機能障害がある場合その遂行動作そのものに問題を抱ええてしまい、結果として着替えが自分で行えず介助が必要…となる場合があります。

高次脳機能障害を呈しているクライアントの更衣動作について介入する際、脳卒中(脳出血・脳梗塞)への更衣動作リハビリテーションでも触れたようにまず初めに、実際に更衣動作を行ってもらう…ことから始める必要があります。

その上で、どの動作工程の遂行動作に問題を抱えているのかを明確にするトップダウンアプローチを行い、評価を深めていく必要があります。

評価方法

高次脳機能障害の評価としては、実際に更衣動作を行ってもらい、どの工程や動作要素を遂行する場面で問題となるのかを評価する必要があります。
高次脳機能障害のクライアントを対象にした更衣動作の評価に関連した、比較的多く使われる評価方法についてですが、

・更衣に対しての意欲
・失行の有無
・注意障害の有無
・左右の判別
・衣服の判別
・空間認識
・問題解決能力
・身体の認識
・前頭葉機能

…といったものがあげられます。

更衣に対しての意欲

まず、着替えそのものに対しての意欲を評価する必要があります。
更衣動作の遂行の前に、更衣動作そのものに対しての関心が低い状態ですと、その後の評価や訓練がスムーズに進行しなくなる場合があります。
意欲の評価バッテリーであるCASや、クライアントによってはうつ評価のGDSなどを行う必要があります。

失行の有無

高次脳機能障害でも、更衣動作に直接的に影響を及ぼすものとしては“着衣失行”をはじめとした“失行”があげられます。
失行の評価バッテリーである“SPTA”などによって検査を行う必要があります。

注意障害の有無

更衣動作は非常に集中力や注意配分といった注意に関する能力を必要とする活動です。
トレイルメイキングテスト(TMT)”や“かなひろいテスト”、“標準注意検査法(CAT)”といった検査を行って注意障害の有無、程度を客観的に判断する必要があります。

左右の判別

更衣動作は衣服の上下左右の判別が必要な活動です。
前後や左右を逆に着衣してしまう場合、この左右失認が背景に潜んでいる場合があるので評価が必要です。
ゲルストマン症候群に多くみられる症状でもあります。

空間認識

更衣動作は衣服を着脱するという行為から、非常に空間認識の機能を必要とします。
半側空間無視といった空間認識に障害を有する場合、更衣動作は非常に困難な動作となります。
BIT(Behavioural inattention test )”や“標準高次視知覚検査(VPTA)”といった検査によって、空間認識の能力を評価する必要があります。

問題解決能力

更衣動作における“問題解決能力”とは、理解力や判断力といった能力を含みます。
更衣動作を直接行うなかで問題点が表面化して観察される場合もありますが、包括的作業療法評価尺度(COTE)といった評価バッテリーを用いて行動療法的な視点で評価することも必要な場合があります。

前頭葉機能

前頭葉に障害がある場合、意欲の低下、動作の開始の遅延、持続性の低下といった遂行障害をきたす場合があります。
WCST”や“FAB”といった評価バッテリーを使用して、クライアントの前頭葉機能を評価する必要があります。

訓練

高次脳機能障害を呈したクライアントに対しての更衣動作訓練は、

・更衣動作を直接行うことでのトップダウン的アプローチ
・各高次脳機能障害の症状に対して行うボトムアップ的アプローチ
…の2方向の訓練があります。

前者の場合は更衣動作を直接行い、反復訓練や段階付によって現段階のクライアントがもつ能力でも理解でき、遂行できる方法を探っていく意味も含みます。
後者の場合は、各高次脳機能障害に対しての紙面上の訓練や課題訓練を行った上で、高次脳機能の底上げを図る…というものになります。

高次脳機能障害のクライアントに対して直接その動作、活動を繰り返し行う“反復訓練”が有効とされ、紙面上の訓練はそれほどADL動作能力の向上に汎化しない…なんて意見もまれに聞かれますが、やはり“どちらの訓練も必要”と考えています。
もちろんボトムアップ的なアプローチとして、高次脳機能障害に対して紙面上、机上の訓練だけを行ってもいけませんし、
ただ闇雲に本人がまだできない更衣動作を繰り返し反復して行ったとしても、治療効果としては薄い印象を受けます。

高次脳機能障害のクライアントに対しても、まず更衣動作そのものの動作分析を行い、どの動作工程、動作要素に遂行上の問題を抱えているのかを明確にし、
トップダウン、ボトムアップ両方のアプローチを上手く組み合わせる事が必要だと感じます。

指導

高次脳機能障害のクライアントはその症状に対しての自覚が低いことが多くあります。
加えて、“目に見えない障害”故に、家族や介護者からの理解も得られにくい場合があります。

クライアント本人、家族や介護者らが、まずはこの症状に対して理解することが指導の大前提となります。

その上で、本人にとって混乱しない、不安にならない、自尊心を傷つけない最低限の介助や声掛け…が必要になることを理解するよう指導します。

まとめ

目に見えない障害だからこそ、作業療法士による分析的な評価と、包括的な訓練、理解を促す指導が必要になります。
評価、訓練、指導それぞれのポイントを抑えたうえでの介入が作業療法士にとっては重要なんだと思います。

作業療法士は語りたい!

非常に多くの機能を有する更衣動作だからこそ、
この高次脳機能障害に対しての作業療法的なアプローチとして有効活用できるんでしょうね!
あと重要なのは、クライアント自身に着替えをする理由、目的を理解し、
能動的に着替えることに参加するような場面設定も求められるって点だね!

“更衣動作”関連記事

更衣動作へのリハビリテーション(作業療法)
更衣動作に必要な身体・精神機能について
更衣動作に関しての評価バッテリー、検査方法について
更衣動作に役立つ自助具・福祉用具10選
更衣動作に関連する衣服のパーツや部位の名前について
更衣動作の工程分析・動作分析について
更衣動作訓練の方法
脳卒中(脳出血・脳梗塞)への更衣動作リハビリテーション
認知症に対しての更衣をスムーズに促すための7つのコツ
パーキンソン病の更衣に対して行うべき14のコツ
慢性関節リウマチ(RA)のクライアントの更衣に対して行うべき8つのポイント
人工骨頭置換術の禁忌肢位と、更衣動作の際の注意点
脊髄損傷の更衣動作支援につながるポイント
うつ病と更衣(着替え)の関係性について?

sponsored Link
 

ピックアップ記事

Sponsored Link

PAGE TOP