Rehabilitation

更衣動作の工程分析・動作分析について- 上衣(前開き・かぶり)・下衣(ズボン)・靴下の着脱の分析的視点について

 

更衣動作と一言でいってもその衣服の種類や形状によって動作工程は多少の違いはあっても、その動作工程の項目に大きな違いはないかと思います。
今回はリハビリテーションにおける更衣動作で代表的な衣服のタイプ(前開きシャツ・かぶり・ズボン・靴下)の工程分析、動作分析についてまとめました。

上衣(前開きタイプ)

ここでの前開きタイプは、シャツやブラウス、カーディガンなどを想定しています。
また便宜上、着衣は右→左の順、脱衣は左→右の順で設定しています。

着衣

前開きタイプの衣服を着用する際の必須動作としては、

①上衣を取る
②右腕を上衣に通す
③左腕を上衣に通す
④ボタンをしめる

…の4つの動作になります。
そしてこのそれぞれの4動作を構成しているいくつかの要素動作によって構成されています。

工程 要素動作 
①上衣を取る ・上衣へ手を伸ばす
・上衣を把持する
・自分の近くに近づけるよう運搬する
②右腕を上衣に通す ・両手で上衣を広げる
・左手で襟を把持する
・右手をアームホールまでリーチする
・右腕を袖に通す
・右手を袖口から出す
③左腕を上衣に通す ・右手で襟を掴む
・左手をアームホールまでリーチする
・左腕を袖に通す
・左手を袖口から出す
④ボタンをしめる   

脱衣

前開きタイプの衣服を脱ぐ際の必須動作としては、

①ボタンを外す
②左腕を上衣から脱ぐ
③右腕を上衣から脱ぐ
④上衣を置く

…の4つの動作になります。
脱衣でも、これら4動作を構成しているいくつかの要素動作があります。

工程 要素動作 
①ボタンを外す
②左腕を上衣から脱ぐ ・両手で上衣を開く
・両肩を上衣から出す
・右手を左袖口へリーチする
・右手で左袖口を把持する
・左腕を袖から脱ぐ
③右腕を上衣から脱ぐ ・左手を右袖口へリーチする
・左手で右袖口を把持する
・右腕を袖から脱ぐ
④上衣を置く ・上衣を把持する
・目的の場所まで運搬する

上衣(かぶりタイプ)

ここでのかぶりタイプは、Tシャツやトレーナー、セーターなどを想定しています。
便宜上、ここでも着衣は右→左の順、脱衣は左→右の順で設定しています。

着衣

かぶりタイプの衣服を着用する必須動作としては、

①上衣を取る
①右腕を通す
②左腕を通す
②頭を通す
③裾をなおす

…の5つの動作になります。
またこれらの5動作も、いくつかの要素動作によって構成されています。

工程 要素動作 
①上衣を取る ・上衣へ手を伸ばす
・上衣を把持する
・自分の近くに近づけるよう運搬する
①右腕を通す ・両手で裾を広げる
・左手を右の袖山へリーチする
・左手で右袖山を把持する
・右手をアームホールへリーチする
・右腕を袖に通す
・右手を袖口から出す
②左腕を通す ・右手を左袖山へリーチする
・左手をアームホールへリーチする
・左腕を袖に通す
・左手を袖口から出す
②頭を通す ・両手を裾へリーチする
・両手で裾を把持する
・頭を屈曲する
・頭を襟口に近づける
・頭を襟口から出す
③裾をなおす ・両手をのばす
・両手を裾へリーチする
・両手で裾を把持する
・裾を引き下ろす

脱衣

かぶりタイプの衣服を脱ぐ際の必須動作としては、

①左腕を袖から脱ぐ
②右腕を袖から脱ぐ
③頭上に通して脱ぐ
④上衣を置く

…の4つの動作になります。
これらの4つの動作はそれぞれいくつかの要素動作によって構成されています。

工程 要素動作 
①左腕を袖から脱ぐ ・右手を左の袖口へリーチする
・右手で左袖口を把持する
・右手で左袖をひっぱる
・左腕を袖から脱ぐ
・左腕を裾から出す
②右腕を袖から脱ぐ ・左手を右の袖口へリーチする
・左手で右袖口を把持する
・左手で右袖をひっぱる
・右腕を袖から脱ぐ
・右腕を裾からだす
③頭上に通して脱ぐ ・両手を襟口へリーチする
・両手で襟口を把持する
・頭を屈曲する
・頭を襟口から脱ぐ
④上衣を置く ・上衣を把持する
・目的の場所まで運搬する

下衣(ズボン)

ここでの下衣は、長ズボンを想定しています。
また座位を介しての着脱で、履く順を右→左、脱ぐ順を左→右で設定しています。

着衣

下衣(ズボン)の着用の場合、

①下衣を取る
②椅子(orベッド)に座る
③右足を裾に通す
④左足を裾に通
⑥膝まで引き上げる
⑥立ち上がる
⑦腰まで引き上げる
⑧仕上げ

…の8つの動作が必須動作となります。
上衣同様、これらの必須動作の工程もいくつかの要素動作に分けることができます。

工程 要素動作 
①下衣を取る ・下衣へ手を伸ばす
・下衣を把持する
・自分の近くに近づけるよう運搬する
②椅子(orベッド)に座る
③右足を裾に通す ・両手を下衣のウエスト部分へリーチする
・両手で下衣のウエスト部分を把持する
・両手で下衣のウエスト部分を広げる
・右足を右のわたり部分へリーチする
・右足を裾に通す
・右足を裾口から出す
④左足を裾に通す ・左足を左のわたり部分へリーチする
・左足を裾に通す
・左足を裾口から出す
⑥膝まで引き上げる ・両手を下衣のウエスト部分へリーチする
・両手で下衣のウエスト部分を把持する
・下衣のウエスト部分を膝上まで引っ張り上げる
⑥立ち上がる ・両手で下衣のウエスト部分を把持したまま立ち上がる
⑦腰まで引き上げる ・両手で下衣のウエスト部分から腰まで引き上げる
⑧仕上げ

脱衣

下衣(ズボン)を脱ぐ場合の必須動作としては、

①立ち上がる
②膝上まで脱ぐ
③椅子(orベッド)に座る
④左足を脱ぐ
⑤右足を脱ぐ
⑥下衣を置く

…の6つの工程があげられます。
それぞれの工程にもいくつかの要素動作があります。

工程 要素動作 
①立ち上がる
②膝上まで脱ぐ ・両手を下衣のウエスト部までリーチする
・両手で下衣のウエスト部を把持する
・膝上まで下ろす
③椅子(orベッド)に座る
④左足を脱ぐ ・左膝をウエスト部から出す
・両手を左裾口へリーチさせる
・両手で左裾口を把持する
・左足を裾口から脱ぐ
⑤右足を脱ぐ ・両手をウエスト部までリーチする
・両手でウエスト部を把持する
・右膝をウエスト部から出す
・両手を右裾口へリーチさせる
・両手で右裾口を把持する
・右足を裾口から脱ぐ
⑥下衣を置く ・下衣を把持する
・目的の場所まで運搬する

靴下

ここでの靴下の着脱は座位姿勢を想定しています。
また履く場合は右→左、脱ぐ場合は左→右の順で設定しています。

着用

靴下を履くときの必須動作としては、

①右の靴下を取る
②右足を靴下に通す
③左の靴下を取る
③左足を靴下に通す

…の4つの動作になります。
これらの4動作にもそれぞれ構成している要素動作があります。

工程 要素動作 
①右の靴下を取る ・右の靴下へリーチする
・右の靴下を把持する
・自分の近くに近づけるよう運搬する
②右足を靴下に通す ・両手を右靴下の口ゴム部までリーチする
・両手で口ゴム部を把持する
・両手で口ゴム部を広げる
・右足先を口ゴム部へ近づける
・右足先を口ゴム部へ入れる
・足底がフット部に沿うまで口ゴム部を引っ張り上げる
③左の靴下を取る ・左の靴下へリーチする
・左の靴下を把持する
・自分の近くに近づけるよう運搬する
③左足を靴下に通す ・両手を左靴下の口ゴム部までリーチする
・両手で口ゴム部を把持する
・両手で口ゴム部を広げる
・左足先を口ゴム部へ近づける
・左足先を口ゴム部へ入れる
・足底がフット部に沿うまで口ゴム部を引っ張り上げる

脱衣

靴下を脱ぐ際の必須動作ですが、

①左足を靴下から脱ぐ
②右足を靴下から脱ぐ
③靴下を置く

…の3動作になります。
それぞれの動作工程も、いくつかの要素動作で構成されています。

工程 要素動作 
①左足を靴下から脱ぐ ・両手を左靴下の口ゴム部までリーチする
・両手で口ゴム部を把持する
・両手で口ゴム部を広げる
・左踵を口ゴム部から出す
・足先を口ゴム部から出す
②右足を靴下から脱ぐ ・両手を右靴下の口ゴム部までリーチする
・両手で口ゴム部を把持する
・両手で口ゴム部を広げる
・左踵を口ゴム部から出す
・足先を口ゴム部から出す
③靴下を置く ・靴下を把持する
・目的の場所まで運搬する

まとめ

更衣動作に対して作業療法士が介入する際、その動作の工程、構成している要素動作のうちクライアントがどの部分に問題を抱えているかを明確に分析する必要があります。
その際、その更衣動作の工程分析、動作分析、運動分析といったレベルでの分析が必要になってきます。
分析的に評価する視点で問題点を抽出した上で、作業療法訓練プログラムを立案する必要があります。

作業療法士は語りたい!

更衣動作の基本的な工程と、それに伴う動作を把握することって、作業療法士としては必要なことでしょうね!
ただ闇雲に反復訓練を行うのではなく、どの動作工程、要素動作に問題を抱えているかをはっきりさせないと、
必要な動作訓練で優先順位を立てることもできなくなるからね!

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