Rehabilitation

うつ病 – 特徴・患者数・好発年齢・主な症状・診断基準・評価方法などについて

 

今後、世の中は非常にメンタルヘルスに対しての対応が必要になってくると思っています。
その中でも“うつ病”という疾患はさらに増加していくと考えられます。

そこで本記事では、うつ病の…

  • 特徴や患者数、好発年齢といった概要
  • 主な症状
  • 診断基準
  • 評価方法

…などについて解説します。

うつ病とは?

“うつ病”という疾患はいまでは非常に一般的に知られていますので、イメージとしては…

  • 何もやる気が起きない状態
  • 表情が暗い
  • 食欲もなくなる
  • 仕事や趣味がしたくなくなる

…といったことが浮かぶかと思います。

実際にうつ病の定義についてですが、他の精神障害と同じように、はっきりとした原因が特定されていないことから、その原因によってうつ病を分類したり定義したりすることは現時点では困難であるとされています。

患者数

うつ病は患者数の最も多い精神障害と言われています。
WHOの報告では、人口の3~5%がうつ病とされているので、全世界で1億2千万~2億人のうつ病者がいることになります。
また、国内では360万人~600万人のうつ病者がいると報告されています。

有病率

実際にうつ病の有病率についてですが、

  • 6か月有病率で3~5%
  • 生涯有病率で13~17%

…という報告があります。

性差

うつ病は男性と女性、どちらが発症しやすいのか?という性差についてですが、

  • 女性が男性の約2倍

…という報告があります。

年齢

うつ病の発病は児童期から老年期までを含む全年齢層に認められます。
その半数は20~50歳の間に発症し、平均年齢は約40歳という報告があります。

うつ病の症状について

うつ病の症状の特徴についてですが、大きくわけると次のようなものがあげられます。

  • 感情の障害
  • 意欲、行為の障害
  • 思考の障害
  • 身体的症状

以下にそれぞれ詳しく解説します。

感情の障害

うつ病の症状の一つとしては“感情の障害”があげられます。
うつ状態または抑うつ状態でみられる基本症状は、抑うつ気分と言われるものです。

  • きっかけの有無に関わらず、徐々に気分が沈み、憂うつになる。
  • 周囲の出来事が生き生きと感じられなくなる
  • 理由もなく寂しくなったり、悲しくなったりして涙が流れ、悲哀感、焦燥感を感じる
  • 趣味や人との会話を楽しむことができなくなる

こういった症状が進行すると、喜怒哀楽の感情が薄れ、何事にも無感動(アパシー)となるケースもあります。

その他には…テレビや新聞を見ることもなくなり、周囲の事に対しての興味がなくなります。

また…

  • 自我感情の低下
  • 自分への過小評価や強い劣等感

…といった感情も起こり、自分の人生や周囲の物事に悲観的、絶望的となり、自殺念慮(希死念慮)を抱くことも珍しくありません。

こうした気分の低下は朝方に強く表れ、夕方に軽くなる傾向があります(日内変動)。
そのため、朝目覚めても気分が悪く、寝床から離れることができず、その結果学校や仕事に行けない…という社会生活上の問題に発展してしまいます。

また、抗うつ薬を投与しても効果がでてくるまでには1~2週間程度を要しますが、この間に「薬が強くて朝起きれなくなった」などと訴えることもあるため注意が必要です。

意欲、行為の障害

うつ病の症状として、“意欲や行為の障害”があげられます。

この“意欲や行為の障害”は“精神運動静止(抑制)”としてまとめられます。

よくうつ病のクライアントから聞かれる訴えとしては…

  • 自分が何をやらなければならないかをわかっていても、「頭ではわかっていても身体が動かない」

…というものです。

また、「何もかも億劫」という訴えも多く、行動がスムーズにできないことがあげられます。

これによってさらに不安や焦燥が悪化してしまう場合もあります。

この症状で厄介なのは、気分の程度が軽い場合です。
この場合は周囲に気づかれることが少なく、本人はなんとか日常のことはがんばってできてしまいます。
しかし、新しいことを始めることは困難となり、結果として仕事の能率は低下してしまいます。

この段階で対処せずに、症状が進行すると、

  • 人に会うことが億劫になり接触を避けるようになる(嫌人傾向)
  • 食事や洗面、入浴といった身の回りのことが自分ではできなくなる

…といった日常生活上の問題に発展してしまいます。

さらに症状が進行することで、自発的な動きはまったくみられなくなり、話しかけにも応答しなくなります(うつ病製昏迷)。

思考の障害

うつ病における症状の“思考の障害”で最も特徴的な症状としては、思考静止(抑制)があげられます。

これは…

  • 「考えることができない」
  • 「頭が空っぽになった」
  • 「何も頭に浮かばない」

…という表現で訴えることが多く、質問しても応答が遅くその内容も乏しい状態となるのが特徴です。

また、思考内容が障害される場合に出現する妄想ですが、主なものとして…

  • 罪業妄想:過去の小さな失敗を重大な罪と思い込む・周囲で起こる不幸な問題を全て自分のせいと思いこむ
  • 貧困妄想:金銭的な意味での心配は無いのに仕事に失敗して家族が路頭に迷うと信じてしまう
  • 心気妄想:自分は癌に罹患していてもう助からないと思い込む

…などがあげられます。

しかし、これらの各妄想は、抑うつ気分から二次的に生じたために比較的了解が可能であると言われています。
1日に見られる精神病症状は上記のような気分の変化に値した妄想や昏迷などを指すのが一般的であるようです。

身体的症状

うつ状態で最も多く認められるのは、入眠障害や熟眠障害、早朝覚醒などの睡眠障害であり、ほぼ必発します。
ケースによっては、逆に睡眠過剰を示し、昼間も傾眠傾向が見られる場合もあります。

その次に多くみられるのは、疲労感、倦怠感と食欲低下になります。
慢性的に身体がだるく、疲れやすくなるため、仕事や学業を継続することが困難になります。
この症状が顕著になると、一日中臥床がちになったりもします。

また、食欲低下に伴い体重も通常、数kg程度の減少するケースもみられます。
これは、悪心、嘔吐、便秘、下痢、胃部不快感などの消化器症状も多く伴う場合があります。

その他には…

  • 性欲の低下
  • 口渇、発汗などの自律神経症状
  • 月経異常
  • 頭重感
  • 体各部位の疼痛や手足のしびれなどの感覚異常

…といった症状もみられます。

こうした身体症状は、よくうつ気分とともに、うつ病の本質的症状とみなされています。

うつ病の診断を困難にしている要因の一つに、うつ病のなかには抑うつ気分や気力の低下をあまり訴えず、身体症状のみが前面に現れ、内科などの身体科で治療をうけ続けてしまう…ということもあげられます。
実際にうつ病のクライアントの実に6割以上がまず内科を受診するとのデータもあります。

こうしたうつ病を「身体病の仮面をかぶったうつ病」という意味で「仮面うつ病」ということもあり、この背景には気分や意欲の低下を認めることが少なくありません。

また初老期や老年期に多い症状としては、不安や焦燥が強いうつ状態では、

  • 落ち着きなく室内を歩きまわる
  • じっと坐っていることができない
  • 立ったり座ったりを繰り返す
  • 胸内苦悶などの身体感覚の異常を執拗に訴える

…という興奮性または激超性うつ病といわれるケースも多くみられます。

うつ病の9つの診断基準について

うつ病の診断基準についてですが、DSM-5では次のように決められています。

Q.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。

  1. その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。(注:子どもや青年では易怒的な気分もありうる。)
  2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退(その人の説明、または他者の観察によって示される)。
  3. 食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加(例:1ヵ月で体重の5%以上の変化)。またはほとんど毎日の食欲の減退または増加。 注:子どもの場合、期待される体重増加が見られないことも考慮する
  4. ほとんど毎日の不眠または過眠。
  5. ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)。
  6. ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退。
  7. ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪悪感ではない)。
  8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言明による、または他者によって観察される)。
  9. 死についての反復思考(死の恐怖だけではない)。特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりした計画。

*実際のDSM-5による診断基準はその他に他の社会的生活への影響や生理学的作用の有無、その他の精神疾患による説明の可否や躁病エピソードの有無などによって総合的に診断されます。

うつ病の評価について

うつ病や抑うつ状態に対しておこなわれる評価としては次のようなものがあげられます。

  • CES-D
  • SDS
  • SRQ-D
  • GDS-15
  • Beck Depression Inventory(ベックうつ病調査表)
  • HAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)

以下に詳しく解説します。

CES-D

CES-Dとは、米国国立精神保健研究所(NIMH)によって開発された“うつ病や抑うつ状態の自己評価尺度の検査”になります。
20項目の質問で構成されているため、比較的短時間で簡単に実施できるのが特徴といえます。

関連記事:CES-Dとは? – うつ病の検査目的・方法・特徴・点数・カットオフ値について

SDS

うつ性自己評価尺度(Self-rating Depression Scale:SDS)は、20項目の質問で構成されている自己評価尺度です。
クライアントの抑うつ状態の程度をみるために作成された検査スケールになります。

関連記事:抑うつを検査!SDS(うつ性 自己評価尺度)の方法と カットオフについて

SRQ-D

SRQ-Dはうつ病の診断というよりは、あくまで目安として使用される検査になります。
18項目の質問で構成されており、それぞれの質問に対して「いいえ」「ときどき」「しばしば」「常に」のどれかに○印を記入していく方法になります。
また質問項目に答えていくことで、自分の心の状態を客観的に把握することができ、いち早く心の不調を発見し対処につなげることができるという側面も持っています。

関連記事:軽いうつ病を発見!SRQ-D検査の方法、点数解釈とカットオフについて!

GDS-15

うつ症状のスクリーニングの検査として15の質問で構成されている検査です。
短時間で誰でも行えることがメリットとしてあげられます。

関連記事:うつ症状のスクリーニング検査『GDS-15』の方法とカットオフについて!

Beck Depression Inventory (ベックうつ病調査表)

BDIテストとは、抑うつの程度を客観的に測る自己評価表で自分自身の気分の傾向を数値として測定する検査になります。

HAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)

HAM-Dは、自己評価式の心理検査ではなく、うつ病の症状に特徴的な項目について、医師などの専門家が項目ごとに評価をしていく心理検査になります。
その検査項目の特徴としては、睡眠の評価に重点が置かれており、睡眠状態が改善すれば高評価になりやすいという特徴があります。

うつ病と自殺という問題

うつ病のクライアントに対応する際、最も気を付けなけらればならないことは自殺という問題です。
うつ病の自殺は、症状が軽く、まわりから変調に気づかれない病初期、もしくは退院に向けての外泊訓練中や退院直後などの回復期に多い傾向にあります。

うつ状態が悪化すると、意欲や更衣の障害も重くなり、自殺を決断したり実行することができなくなるから「したくてもできない」という状態であるということを知っておく必要があります。

まとめ

本記事ではうつ病についての概要について解説しました。
今後、ますます増加していく可能性が高いうつ病という疾患に対し、作業療法士をはじめ様々なセラピスト、医療従事者は早急な対応が必要になると考えられます。

作業療法士は語りたい!

身体領域、精神領域、地域や小児といった様々な領域でも、
この“うつ”という疾患は非常に付きまとってくると思うんだ。
行動化する“意欲”ってところにも直接つながりますからね。
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