ADLでも、整容動作の一つに“爪切り”がありますが、この爪切りの目的や必要性って具体的にはどのようなものがあげられるのでしょうか?
作業療法士としてのリハビリテーションとして“爪切り動作支援”に関わる際、この目的についてしっかり知っておく必要があります。
今回はこの爪切り動作の目的と、遂行するのに必要な能力や機能についてまとめました。
目次
“爪切り”の目的について
そもそも整容動作としての爪切りにはどのような目的があるのでしょうか?
主に以下のものがあげられます。
- 皮膚を傷つけることを防ぐため
- 爪が割れて負傷するのを防ぐため
- 巻き爪になるのを防ぐため
- 白癬菌などの細菌繁を防ぐため
皮膚を傷つけることを防ぐため
爪が伸びたままの状態だと、誤って自分や他の人の皮膚を傷つけてしまう場合があります。
抵抗力が落ちている場合はこの傷が化膿したり、感染の原因になったりすることもあるようです。
爪が割れて負傷するのを防ぐため
爪が伸びたままの状態で、外部からの圧力や衝撃が加わると爪が割れたり、はがれたりしてしまい、痛みや感染の危険性が高くなります。
巻き爪になるのを防ぐため
巻き爪や陥入爪でも特に足の爪の場合は立位や歩行時の痛みに繋がり非常に活動範囲の狭小化やADL動作遂行困難につながり、生活上支障をきたす可能性が高くなります。
また、化膿や感染症を引き起こす場合もあるので早期に対応が必要になります。
白癬菌などの細菌繁を防ぐため
高齢者の方の爪の状態をみると、多くの人で白癬になっていることがあります。
こうなると爪が白色や黄色で非常に厚くなっており爪切りをすることも困難になり悪循環に陥ってしまっている…というケースも多くみられます。
爪切りに必要な機能や能力について
普段は何気なく行っている爪切りでも、高齢者や障害を有している方にとっては非常に大変な行為になります。
そこでこの爪切り動作に必要な機能や能力について分析的に考えてみます。
爪切り動作に必要な身体機能
爪切り動作を行うためにはどのような身体機能が必要なのでしょうか?
主なものとして以下の項目があげられます。
- 関節可動域
- 筋力(握力)
- 感覚機能
- 姿勢保持能力
- 手の巧緻機能
関節可動域
爪切り動作をスムーズに行うためには、対象となる爪へのリーチ動作を確保するための関節可動域が必要になります。
手の爪切りの場合は対象の爪が視覚で確認でき、かつ操作する“爪切り”が届くようにしないといけません。
肩関節や肘関節、手関節や手指の関節に制限があると、スムーズに爪切り動作を行うことができなくなります。
また、足の爪切りの場合は足の爪へのリーチ動作が困難で、自立度が向上しないというケースが多くみられます。
筋力(握力)
爪切り動作に使用する一般的な道具としてはペンチスタイル、もしくはニッパー型の“爪切り”になりますが、どちらもある程度の握力が必要になります。
慢性関節リウマチのクライアントの多くは、爪に手が届いても筋力低下が原因でうまく爪切り動作が行えないというケースがあるようです。
感覚機能
爪切り動作で深爪をしてしまい指先を傷つけてしまう場合があります。
爪周囲の感覚機能が低下していると、爪切りでどこまで切ってよいのかわからなくなり結果として深爪になってしまうケースがあるようです。
姿勢保持能力
足の爪切りの場合、坐位で股関節の屈曲姿勢を保持することが必要になりますが、この姿勢保持をするための能力も必要になります。
手の巧緻機能
道具である“爪切り”を使用したり、爪やすりを使用したりと爪切り動作では物品操作が必須になります。
この物品操作をするための巧緻性が求められます。
まとめ
整容動作でも爪切り動作ってなかなか自立しにくい場合が多いようです。
他の整容動作に比べても怪我をする可能性が高いこと、非常に高い巧緻能力が求められることなども理由かと思いますが、怪我や清潔保持、感染防止のためにもできるかぎり自立度は向上させる必要があります。
作業療法士として、爪切り動作の目的をしっかりと把握し、求められる能力や機能を分析的に評価する力が求められるんだと思います。