Rehabilitation

脳卒中(脳出血・脳梗塞)片麻痺への洗顔動作リハビリテーション – 作業療法における評価・訓練・生活指導について

 
脳卒中(脳出血・脳梗塞)片麻痺への洗顔動作リハビリテーション - 作業療法における評価・訓練・生活指導について

脳卒中(脳梗塞・脳出血)による片麻痺を呈したクライアントに対して整容動作である“洗顔”を支援する際、作業療法士はどのような点に注意をし、どのような評価や訓練、そして生活における指導を行っていくのがよいのでしょうか?
今回は脳卒中による片麻痺に対しての洗顔動作についてまとめました!

脳卒中片麻痺への洗顔動作評価について

片麻痺のクライアントへの“洗顔動作”に関する評価については、以下の2つの視点で評価を行います。

・自立度評価:生活の中でどの程度の自立度で洗顔動作が行えているのか?
・分析的評価:洗顔動作が自立ではない場合、その障害となる工程、動作要素はどのようなものか?

洗顔動作の自立度評価

洗顔動作はクライアントの生活のなかでどの程度自立して行えているのか?また、行うことができるのか?という視点での評価になります。
この場合、ADLに対する評価バッテリーを使用することで、比較検討することができます。

・FIM:“しているADL”状況把握
・BI:“できるADL”状況把握

…といった検査バッテリーがあげられます。

FIM

洗顔動作を含むFIMの整容動作を評価することによって、“しているADL”の時期別の比較検討、及び他部門や他の関連医療、福祉機関との情報共有に役立たせることができます。

BI

Barthel Index(BI)によってクライアントが現段階でどの程度“洗顔動作”を含む“整容動作”ができるのか?を評価します。
クライアントの“できるADL”の状況を評価することで、他部門や他の医療、福祉機関との情報共有に役立たせることができます。

洗顔動作の分析的評価

作業療法士としてクライアントの洗顔動作を評価する場合は、トップダウンアプローチの視点で行うことが望ましいといえます。
つまりクライアントが洗顔動作を行う場面を観察し評価することで、どの工程や動作要素に問題を抱えているのかを抽出していくという過程が重要になってきます。

・動作分析:動作工程、動作要素の問題抽出
・ブルンストロームステージ:麻痺の程度の把握
・関節可動域評価(ROM-T):上肢操作能力を保証する可動域の有無
・筋力検査(MMT):握力・ピンチ力・上肢のプレーシング能力
・感覚検査:麻痺側手、顔の感覚障害の有無
・上肢機能(巧緻性・協調性)検査:
・姿勢評価:動的坐位姿勢の保持の有無
・耐久性評価:洗顔動作中の耐久性の程度の把握
・HDS-R/MMSE:認知機能の評価

動作分析

洗顔動作が自立できずなにかしらの介助が必要な場合、どの工程、どの動作要素が自立度向上の阻害因子になっているか?を見極める必要があります。
その分析を行ったあとに初めて作業療法プログラムの立案につなげていくことになります。

ブルンストロームステージ

クライアントの麻痺側上肢、手指のブルンストロームステージがどの程度なのかを評価することは、今後、麻痺側上肢や麻痺側手指が実用手のレベルまでに回復するのか?補助手としては有効なのか?それとも廃用手になるのかを予後予測をたてる判断材料になります。
洗顔動作自体は片手でも行うことはできますが、よりスムーズな洗顔動作を行うためには両手動作を必要とします。

関節可動域(ROM-T)

洗顔動作を遂行するためには、収納してある洗顔料やタオルへのリーチ、蛇口からでる水へのリーチ、顔へのリーチが必要になります。
そのリーチ動作を保障するだけの関節可動域が必要になります。

筋力検査

洗顔動作では、洗顔料の蓋の開閉、蛇口の開閉、洗顔料を泡立てる、顔までリーチしたまま洗う…といった動作が必要になります。
これらを疲労感なく行える程度の筋力は必要になります。

感覚検査

洗顔動作は水や洗顔料を手掌面で扱うため手掌面の感覚機能が非常に重要になります。
また顔面の感覚機能障害がある場合もスムーズに洗顔動作を行うことができなくなります。
表在、深部、温冷覚といった感覚検査が必要になります。

上肢機能(巧緻性・協調性)検査

洗顔動作では洗顔料の開閉や洗顔料を泡立てる、蛇口の開閉や洗顔、タオルでふき取るといった上肢機能が求められます。
これらはある程度のレベルの巧緻動作能力や協調動作能力が必要なこと、そしてなにより手-顔面間の協調的な操作性も必要とされます。
評価バッテリーとしてはSTEFMFTによって行われます。

姿勢評価

洗顔動作を座位姿勢で行うのか、それとも立位姿勢で行うのか?によって違いはありますが、転倒予防を考えると座位姿勢で行うことが望ましいと考えます。
座位姿勢で洗顔動作を行う際、洗面台のシンクに向かい多少前傾位の姿勢で洗顔を行うことになります。
この際姿勢は崩れなく保持可能かどうか?洗面台によりかかかることで固定的に保持しているかどうか?といった評価の視点があげられます。

耐久性評価

洗顔動作に対してどの程度時間をかける必要があるのかは、性別や化粧の有無による洗顔の目的の違いなどによって異なるかと思います。
いずれにしても、洗顔動作を行うことでどの程度の疲労感があらわれるのか?は評価する必要があります。

認知機能

高次脳機能障害だけでなく、認知症を検査するHDS-RMMSEも実施しておく必要があります。
認知機能評価をすることで、適切な洗顔料の選択が可能か、蛇口の閉め忘れの有無といった問題化の評価にもつながります。

脳卒中片麻痺への洗顔動作訓練について

洗顔動作の訓練においても、“洗顔動作獲得・自立度の向上を目的”とするのか、もしくは“洗顔動作を手段とした訓練”かによって視点が変わってきます。

・関連記事:洗顔の訓練方法 – 洗顔動作の自立度向上と、期待できる訓練効果について

洗顔動作獲得・自立度の向上を目的

“顔を洗う”という動作そのものは手段さえ選ばなければ非麻痺側上肢のみでも容易に行うことができるADLかと思います。
ただし洗顔動作に関わる全行程における自立度の向上を目的とするとなると、洗顔料の開閉など両手動作を必要とする動作に対しての訓練が必要になることが多い印象を受けます。
早期に自立度の向上を目的とするならば、代替的アプローチとして自助具の選定、導入を検討し、非麻痺側上肢のみで洗顔動作が自立できるよう支援していきます。

・関連記事:洗顔動作をスムーズにしてくれる自助具・福祉用具として扱える便利グッズ8選

洗顔動作を手段とした訓練

様々な訓練的要素を含む洗顔動作を、自立度の向上のみを目的として扱うのは非常に作業療法的とは言えないかもしれません。
いかに、日常生活のルーチンワークでもある“洗顔”に治療的効果を見出し、治療的な作業活動として扱うようにするかが、作業療法士の醍醐味とも言えます。

となると、洗顔動作を手段とすると、

・生活リズムの調整
・自身の健康状態を意識させる動機づけ
・麻痺側上肢の機能訓練として
・手-顔面の感覚訓練として
・精神賦活の手段として
…といった治療効果が期待できる訓練として扱うことができます。

洗顔動作を軸にした生活指導について

では脳卒中による片麻痺を呈したクライアントに対する生活指導の際、洗顔動作はどのように役立つのでしょうか?
前述した訓練的要素も含めて考えると、以下のような指導内容として提案できます。

・朝、起きたら顔を洗いましょう。気分をリセットできますし、なにより一日の生活リズムを整えることができます。
・洗顔を行う際、自分の顔をきちんと確認しましょう。そうすることで体調の変化や気分の状態などを客観的にもみることができます。
・動く方の手で蒸しタオルなどを使用して顔を拭くだけでも問題ないです。
・リハビリの自主訓練としてなら、両手で水を汲んで顔を洗えるように意識してやってみましょう。
・洗顔料を泡立てる、顔を洗う際は洗顔料の感触や匂い、顔を洗う時の感触などじっくり感じ取るように意識しながら洗顔をしましょう。

脳卒中といった中枢性疾患へのポイントとしては、いかにクライアント自身の意識を「麻痺側の手を動かす」ではなく「顔を洗う」という目的先行の動作誘導を行うかということになります。

まとめ

洗顔動作は片手でも行えますし、整容動作の中でもそこまで優先度として高くないのかもしれません。
ですが、逆に言えば比較的容易にできることから自立度を向上させやすい点、誤嚥などの危険性も低い点から、意欲向上のための動機づけや成功体験につなげやすいADLかもしれません。
「脳卒中で倒れたから、もう自分はなにもできない」と抑うつ状態のクライアントへの介入に難渋している作業療法士は、もしかしたらこの洗顔動作を自立に向かうための介入をすることで、クライアント本人の意欲向上のきっかけになるのかもしれません!

作業療法士は語りたい!

作業療法士によるADL訓練ってあくまで“ADLの自立”を目的とした介入であって、
この洗顔動作のように治療活動的に行う訓練として扱う発想って重要かもしれませんね!
作業療法士の介入目的は“生活を支援する”ことだけど、
生活をすること自体が療法的な意味を持たすように設定することも重要かもしれないね!

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