Rehabilitation

歯磨きの訓練方法 – 歯磨き動作の自立度向上と、期待できる訓練効果について

 

歯磨き動作を作業療法で訓練として扱う場合、多くの場合が“歯磨き動作の自立”に近づけるためのADL訓練として行うのが多いかと思います。
しかし、作業療法士の特性から考えると、“歯磨き”を訓練手段的に用いることも可能なのではないか?とも考えられます。
そこで今回はこの歯磨き動作訓練について、目的的な訓練アプローチと手段的な訓練アプローチの2方向から考えてみます。

“歯磨き動作”を訓練として扱う2つの側面

作業療法士としてクライアントの“歯磨き動作”を訓練として扱う場合、

・歯磨き動作獲得を目的とした訓練
・歯磨き動作を手段とした訓練

…の2つの側面があります。

歯磨き動作そのものの自立度を向上させる目的の訓練と、歯磨き動作を治療手段の作業として用いることで、クライアントの身体的、精神的機能へ働きかける…ということになります。

歯磨き動作獲得を目的とした訓練

これは歯磨き動作そのものの獲得や自立度の向上を目的とした訓練プログラムになります。
項目としては、

①歯磨き動作の分析的評価
②歯磨き動作の反復訓練
③自助具や手順の検討
④介助方法の検討

…があげられます。

①歯磨き動作の分析的評価

歯を磨くという一連の工程を分析し、動作分析的な視点で評価することで、クライアントがどの工程や動作要素に問題を抱えているのか抽出することができます。
その際、歯磨き動作の評価でも触れたように、身体機能面だけではなく、精神・認知機能面への評価も必要になります。

歯磨きの工程分析・動作分析について

②歯磨き動作の反復訓練

歯磨き動作のどの工程や動作要素が問題なのかを抽出したら、その部分に対して反復し訓練をします。
麻痺側が利き手側の場合は、不慣れな非利き手で歯磨きを行うので特に丁寧な対応が求められます。

しかしただ闇雲に繰り返すだけでなく、反復するなかでも介助量の調整や歯ブラシの持ち方、操作方法の工夫や変更を繰り返し、試行錯誤を繰り返しての反復訓練が必要になります。

③自助具や手順の検討

歯ブラシが持ちにくい場合はグリップを太くする、洗面台に口をゆすいだ水を出すことが困難な場合はガーグルベースを使用する…といった自助具の導入、物品のカスタマイズ、そして手順の再検討といった代替的アプローチが必要になります。
また、歯ブラシ操作が困難な場合は指ブラシといったものを使用することも効果的と言えます。

歯磨き動作に対しての自助具・福祉用具10選

④介助方法の検討

本人の能力向上のための直接的アプローチでも、自助具等の代替的アプローチを行っても歯磨き動作の自立度が向上しない場合に、介助方法の検討を行うことも作業療法士にとって必要なリハビリテーションになります。
その際、必要最低限な介助量にすること、本人ができる工程は促すようにすることなど、あくまで全介助に近づかないような心がけが必要です。

歯磨き動作を手段とした訓練

では、歯磨き動作そのものを訓練的な作業として扱う場合、どのような効果が期待できるのでしょうか?

考えるに、

①生活リズムの調整
②脳の活性化
…などがあげられます。

③生活リズムの調整

歯を磨く…ということは食事の後に行うことが多いかと思います。
一日の3食の食後に習慣的に歯磨きを行うことで、生活リズムの調整につなげることができ、自律神経の乱れを予防することになります。

④脳の活性化

実は歯磨きによって脳の活性化…特に前頭前野における血流量が増加することが研究結果からわかっています。
特に歯肉や舌、そして硬口蓋の順に脳血流量の増加が見込めるということで、端的に言ってしまえば『歯磨きで脳トレ』ということになります!
また非利き手で行うなど、習慣化していない方法で敢えて行うことも脳の活性化には有効との意見もあるようです。

まとめ

作業療法士としてクライアントの生活を支援するためには、非常に包括的で俯瞰的な視点が必要だと思います。
そのためには“歯磨き”がもたらす健康への影響を想像し、自立度を向上させるための訓練を行うだけでなく、習慣化している歯磨き動作を“訓練手段”に用いられないかどうか?という視点を持ち合わせることも必要です。
そのような視点を持つだけで、非常に作業療法士が関われる範囲が広がっていくと思うんです。

作業療法士は語りたい!

歯磨きって片手でも行える点、目にみえにくい点からも他のADLに比べてあまり重要視されていない…という意見があるね!
介助をするとしても、手間がかからないからこそ過介助になりつつあるようですからね。

参考論文:脳の活性化を促す口腔内刺激

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