Rehabilitation

脳卒中(脳出血・脳梗塞)片麻痺への歯磨き動作リハビリテーション – 作業療法における評価・訓練について

 

脳卒中(脳出血・脳梗塞)による片麻痺を呈したクライアントに対して、整容動作でも歯磨き動作へ介入する際どのような視点で評価をし、そして作業療法プログラムの立案と訓練を行っていけばよいのでしょうか?
今回はこの脳卒中による片麻痺に対しての歯磨きについてまとめました。

脳卒中片麻痺対して行う歯磨き評価のポイントについて

脳卒中による片麻痺のクライアントの、歯磨き動作の状況や能力を評価する際には、やはりまず実際の歯磨き動作を行う場面を観察し、評価することが重要です。
その上で、ADL全般からの視点、分析的視点で評価するという手順が必要かと思います。

“歯磨き”の評価方法

実際にクライアントの歯磨きについて評価するためには、

・FIM:“しているADL”状況把握
・BI:“できるADL”状況把握
・動作分析:動作工程、動作要素の問題抽出
・ブルンストロームステージ:麻痺の程度の把握
・関節可動域評価(ROM-T):上肢操作能力を保証する可動域の有無
・筋力検査(MMT):握力・ピンチ力・上肢のプレーシング能力
・感覚検査:上肢の操作性の能力把握・口唇や口腔内の感覚能力の把握
・上肢機能・巧緻機能検査:
・姿勢評価:動的坐位姿勢の保持の有無
・耐久性評価:歯磨き動作中の耐久性の程度の把握
・HDS-R/MMSE:認知機能の評価

…といった項目が必要になります。

FIM

歯磨き動作を含むFIMの整容動作を評価することによって、“しているADL”の時期別の比較検討、及び他部門や他の関連医療、福祉機関との情報共有に役立たせることができます。

Barthel Index

Barthel Index(BI)によってクライアントが現段階でどの程度歯磨き動作を含む整容動作ができるのか?を評価します。
クライアントの“できるADL”の状況を評価することで、他部門や他の医療、福祉機関との情報共有に役立たせることができます。

動作分析

クライアントが抱える歯磨き動作の問題を評価する際に、作業療法士としてはトップダウンアプローチの視点で評価する必要があります。
そうすると、実際の歯磨き動作の場面を工程分析、動作分析的視点で評価し、どの工程や動作要素に問題を抱えているのかを抽出するという過程が重要になってきます。
その分析を行ったあとに初めて作業療法プログラムの立案につなげていくことになります。

・関連記事:歯磨きの工程分析・動作分析について

ブルンストロームステージ

クライアントの麻痺側上肢、手指のブルンストロームステージがどの程度なのかを評価することで、その麻痺側の上肢、手が補助手として有用か、それとも回復が見込めず、廃用手としてのレベルのため、非麻痺側上肢のみでの片手での歯磨き動作の獲得に移行するかどうかを見極めることになります。

関節可動域(ROM-T)

歯磨き動作を遂行するためには、歯磨き用具へのリーチ、口腔内へのリーチが必要になります。
そのリーチ動作を保障するだけの関節可動域が必要になります。

・関連記事:関節可動域測定(ROM-T)の目的と方法について

筋力検査

歯磨き動作では、歯磨き粉の蓋を開ける、歯ブラシを持ち上げたまま歯を磨く…といった動作が必要になります。
歯磨き粉の固定と、蓋を開ける程度の握力やピンチ力の有無、また歯を磨くために上肢をプレーシングしておくだけの筋力があるかどうかを検査します。

感覚検査

歯磨き動作は口腔内の感覚障害があると非常に遂行が困難になる作業です。
麻痺側の感覚障害の有無を把握することが必要になります。

上肢機能・巧緻機能検査

歯磨き動作は歯ブラシで歯をブラッシングするという細かい操作能力を求められます。
また、歯磨き粉やマウスウォッシュケースの蓋の開閉を行うための巧緻能力も必要になってきます。
握力、ピンチ力とともに、STEFMFTによる上肢機能や巧緻機能も検査するとスムーズに作業療法治療プログラムの立案につなげることができます。

姿勢評価

歯磨き動作では、動的な座位姿勢の保持だけでなく、口ゆすぎの後洗面台のシンクに向かって吐き出すための前傾姿勢を保持する必要があります。
この姿勢が保持できるかどうかで、歯磨き動作の自立度が大きく変わってきます。

耐久性評価

歯磨きにかける時間は人それぞれかもしれませんが、脳卒中片麻痺のクライアントの場合、感染症のリスクも考えると多少の時間をかけてしっかり行う必要があると思います。
また、歯磨きを行うタイミングが食後ということも考えると、座位の耐久性が低いと歯磨きにかける時間が短くなってしまうリスクがあります。
そのクライアントが座位姿勢をどのくらい疲労感なく保持することができるのか?を評価することも、歯磨き動作評価としては必要な項目と言えます。

耐久性評価

高次脳機能障害だけでなく、認知症を検査するHDS-RMMSEも実施しておく必要があります。
歯磨き動作の工程理解や習慣化の可否、安全面への配慮の可否などを評価するために必要な検査になります。

訓練

歯磨きの訓練方法でも触れたように、“歯磨き動作獲得を目的とした訓練”か“歯磨き動作を手段とした訓練”かを明確にした上で介入する必要があります。

歯磨き動作獲得を目的とした訓練

脳卒中による片麻痺のクライアントの歯磨き動作に関わる場合は、ほとんどがこの目的で行うことが多いと思いますが、その場合はやはり…

非麻痺側上肢・手による歯磨き動作の獲得

…を前提として作業療法による訓練を行うことがスムーズになります。
他のADLとの違いは、歯磨き動作は片手でも十分行える動作という点から、自立度の向上を目的とするならば、早期に自助具などを導入し非麻痺側上肢で歯磨き動作を行えるように支援していきます。

・関連記事:歯磨き動作に対しての自助具・福祉用具10選

歯磨き動作を手段とした訓練

ただ歯磨き動作の自立度を向上させるだけでは、作業療法士としてはやや不十分だと考えます。
習慣的に行う歯磨きという作業を使い、いかにクライアントの生活を向上させることができるのか?という視点での訓練的な介入をすることが、作業療法士ならではの分野だとも思います。

そうなると、歯磨きを手段として…

・生活リズムの調整
・自身の健康状態を意識させる動機づけ
・麻痺側上肢の機能訓練として
…といった治療効果が期待できる訓練として行うことができます。

・関連記事:歯磨きの訓練方法

まとめ

脳卒中片麻痺のクライアントの“歯磨き動作”に関わる際に、こういったポイントを抑えて評価、訓練を行っていくと、作業療法士として非常に有益な支援ができるかと思います。
片手でできる“歯磨き動作”だからこそ、しっかりと分析的に評価し、自立度を向上させるだけでなく、訓練的な手段として用いることで生活全般の質の向上につなげることができるのではないでしょうか?

追記

非利き手で歯磨き動作を行うことへの注意点

脳卒中片麻痺のクライアントが歯磨き動作の自立度向上のためには、非麻痺側上肢を積極的に使用することが方法の一つとしてあげられます。
しかし、非麻痺側がクライアントにとって非利き手の場合は、やはりブラッシング操作へのしにくさを感じるようです。
過剰努力による麻痺側の痙性の亢進や、メンタル面へのストレス増加といった部分にまで配慮して、作業療法士は訓練や指導を行っていく必要があります。

歯周病と脳卒中の関係性について

スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学附属病院で行われた研究によると、慢性歯周炎と脳梗塞(ラクナ梗塞)には強い関係性があるとの報告がされました(2016年)。
その報告では、歯周病の有病率は、脳卒中患者(69%)が対照群(31%)よりも有意に高く、また歯周病の重症度も、脳卒中患者が統計的に高くなった…とあります。
つまり歯周病は脳卒中のリスクを高める可能性がある…ということになるのかと。

ただ、個人的に思うのは、脳卒中の患者はその身体機能障害によって適切な歯磨き動作を行うことができず、結果として歯周病になっているのではないか?ということ。
決して“歯周病になる=脳卒中のリスクが高まる”、とは一概に言えないのでは?ということです。

もちろん歯周病による歯周炎は全身性炎症を引き起こすことから血管へのダメージを与えることが脳卒中のリスクにつながる…ということも否めません。

「卵が先か、ニワトリが先か?」ではないですが、結論としては“脳卒中の患者の多くは歯周病である可能性が高い”ということは明確なようです。

だからこそ、作業療法士は脳卒中クライアントへの歯磨き動作訓練をしっかり行っていく必要があるのかと思います!

作業療法士は語りたい!

片麻痺のクライアントはに対しては余程重度でない限り歯磨き動作への介入って積極的に行っていないかもしれませんね。
片手でできるってのは大きいと思うけど、口腔ケアとしてもしっかりと介入する必要があるね!

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