認知症のクライアントで歯磨きの介助に対して拒否的な反応を示すケースを多くみます。
口のなかをいじられる…というのは不安にもなることから拒否的になり、うまく口腔ケアができず結果として口腔内衛生の悪化につながるという場合が多くあります。
今回は認知症の歯磨き介助拒否に対して試してみたい10のコツについてまとめました。

歯磨きは認知症予防に有効な理由

歯磨きをはじめとした口腔ケアは非常に認知症の進行予防に効果的という報告があります。
この理由や背景としては、

・歯周病由来の細菌がアルツハイマー型認知症と関連しているから
・口腔内の刺激は脳の活性化につながるから

…といった項目があげられます。

歯周病由来の細菌がアルツハイマー型認知症と関連しているから

歯磨きや口腔ケアが不十分だと、歯周組織などの持続的感染状態に陥ってしまい、その感染状態は全身に波及していきアルツハイマー型認知症の発症、進行につながります。
また、歯周病慢性炎症病巣から産出されるサイトカインや歯周病原細菌由来の菌体内毒素は,血管障害性あるいは神経障害性の認知症を引き起こすという報告もあります。
加えて歯周病と生活習慣病やメタボリックシンドロームとの関連性もあることから、血管性認知症のリスクや軽度認知障害(MCI)のリスクにつながる…という見解もあります。

口腔内の刺激は脳の活性化につながるから

歯や歯肉、舌や硬口蓋への刺激は脳(特に前頭前野)への血流症の増加をうながすことが研究で報告されています。
実際に、認知症のクライアントへの歯磨きや口腔ケアによって症状が改善したという事例はたくさんあります。

前者は“認知症の発症予防的な観点”、後者は“認知症の症状進行予防的な観点”からのものですが、どの時期や段階においても歯磨きは認知症予防や症状改善に効果があることがわかります。

・関連記事:歯磨きの訓練方法

認知症の歯磨き介助拒否に対してのコツについて

認知症のクライアントで歯磨きや口腔ケアに対して拒否的な場合、以下にあげるようなコツを試してみるとスムーズにいく場合があります。

①いつも歯を磨いていた場所で行うようにする
②雰囲気作りを意識する
③声掛けを頻繁にする
④歯磨きの工程の説明をする
⑤鏡で口の状態を見せる
⑥毛先が柔らかい歯ブラシを試してみる
⑦様々な刺激に慣れるようにしていく
⑧短時間で行う工夫をする
⑨他の口腔ケアの方法を試す
⑩どうしても拒否が強いときは無理にはしない

いつも歯を磨いていた場所で行うようにする

認知症の場合、急な変化に対して柔軟な対応ができずパニックに陥ってしまう場合があります。
もしも歯磨きを促している場所がベッド上などの場合、いままで歯磨きをしていた洗面所ではないことから拒否反応を示しているかもしれません。
いままで歯磨きを行っていた洗面所などの場所に連れて行き、“歯磨きをする”という雰囲気づくりから促すと拒否が少なくなる場合があります。

雰囲気作りを意識する

前述したような歯磨きを行っていた場所による雰囲気づくりだけでなく、楽しい、心地よい雰囲気で歯磨きを行うということも介助、支援側は意識する必要があります。
口腔内に介入されるということは、多少なりとも不安感を感じるものです。
怖い、不安という負の感情は余計に拒否につながります。
介助、支援側の声がけや表情をできる限り柔らかくし、歯磨きをすること=心地よいことというイメージにつながるような雰囲気づくりが重要です。

声掛けを頻繁にする

介助、支援側が無言で歯磨き介助を行うことは、認知症のクライアントにとっては非常に恐怖を感じます。
「歯を磨きましょうね」「痛くないですか?」といった声掛けをこまめにしながら行う必要があります。

歯磨きの工程の説明をする

次にどのような歯磨き動作の工程の介助を行うのかを説明しながら行うことで、認知症のクライアントの不安感を軽減させることができます。
また「次に口をゆすいでみましょうね」といった工程の説明、促しをすることで、自分でできる動作を引き出すという効果も狙うことができます。

鏡で口の状態を見せる

歯を磨く前と磨いた後の変化を鏡を使って見せ、「きれいになりましたね!」といったプラスのフィードバックをすることで、歯磨きに対してのプラスのイメージングを促します。

毛先が柔らかい歯ブラシを試してみる

口腔内の感覚異常によって、歯磨きに対して拒否反応を示す場合があります。
その状態だと毛先が固い歯ブラシでは刺激が強すぎてしまうので、毛先が柔らかい歯ブラシを使用してみることも必要です。

様々な刺激に慣れるようにしていく

歯磨きをはじめとした口腔ケアは、口腔内の衛生状態を健康なものに保つだけでなく、脳への刺激としても有用です。
歯ブラシの毛先の硬さだけでなく、様々な刺激を口腔内に与え、少しずつ刺激に慣れるようにしていくということは、それだけ脳の刺激に対しての反応が変化していくということになります。
認知症のクライアントの様子を確認しながら、歯磨き、口腔ケアによる様々な感覚入力を行っていくことが必要です。

短時間で行う工夫をする

長時間の歯磨きを行うと、拘束感につながり拒否反応を促す場合があります。
拒否が強い段階ではできるだけ短時間で歯磨きを行うようにし、少しずつ時間を伸ばしていくような工夫が必要です。

他の口腔ケアの方法を試す

歯ブラシを使用することに拒否的な場合は、一時的にでも歯磨きシートやマウスウォッシュといった他の方法での口腔ケアを試してみるのもよいかもしれません。

どうしても拒否が強いときは無理にはしない

介助や支援をする側とのラポールの破たんにつながると、他の介入にも支障をきたしてしまうため、どうしても拒否が強い時には無理はせず、時間をずらして再度介入するといった対応も必要になります。

まとめ

認知症のクライアントが歯磨き動作を拒否するという背景には、その歯磨きに対しての不安感や恐怖、違和感など負の感情を抱いている場合があります。
拒否反応を示すにも、本人なりの理由があるということを理解したうえで、その理由の解決をすることがは歯磨き動作介助拒否への対応につながることになります。

作業療法士は語りたい!

「なぜ拒否をするのか?」という理由を分析的に考えることが作業療法士にとって重要ですね!
その認知症のクライアント自身が見て、感じている世界や感情に対して標準を合わせて物事をとらえる…っていうイメージだね!

参考記事・論文

・Shaik MM, Ahmad S, Gan SH et al.: How do periodontal infections affect the onset and progression of Alzheimer’s disease?. CNS Neurol Disord Drug Targets 13: 460–466,2014.
・Kamer AR, Craig RG, Pirraglia E et al.: TNF-alpha and antibodies to periodontal bacteria discriminate between Alzheimer’s disease patients and normal subjects. J Neuroimmunol 216: 92–97, 2009.

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