リハビリテーション評価

BADSの特徴や目的、方法や点数、カットオフ値について

 

前頭葉の損傷で起こりやすい高次脳機能障害の1つに遂行機能障害があります。
今回はこの遂行機能障害への神経心理学検査であるBADS(Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome)の特徴や目的、方法や点数、カットオフ値などについてまとめました!

BADSとは?

BADS(Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome)は、遂行機能障害対して用いられる神経心理学的検査の一つになります。
BADSの原版は、1996年にWilsonらによってつくられ、日常生活上の遂行機能に関する問題点を検出しようとする、“生態学的妥当性(ecological validity)を意識した行動的な検査として開発されました。

特徴

BADSは、さまざまな状況での問題解決能力を総合的に評価できる点が特徴としてあげられます。
紙面上で行われる神経心理学的検査には反映されにくい「日常生活上の遂行機能」を総合的に評価することができる点も特徴といえます。

目的

遂行機能障害症候群によって生じる日常生活上の問題を予測することを目的としています。

対象

BADSの検査対象ですが、

・脳血管障害
・頭部外傷
・統合失調症
…といった疾患を対象に行われるようです!

BADSによる検査方法について

BADSは以下の6つの下位検査と1つの質問票によって構成されています。

①規則変換カード検査
②行為計画検査
③鍵探し検査
④時間判断検査
⑤動物園地図検査
⑥修正6要素検査
それぞれ詳しく解説します。

①規則変換カード検査


“規則変換カード検査”では、21枚の絵札を抜いた赤と黒のトランプカードを用いて行います。
検査方法は前半と後半の大きく2つに分けて行われます。

まず検査前半では、カードを1枚ずつめくっていき赤のカードなら「はい」、黒のカードなら「いいえ」と被検者に言ってもらいます。
その後、検査後半では、新しくめくったカードがlつ前のカードと同じ色なら「はい」、違う色なら「いいえ」と被検者に言ってもらいます。

この下位検査での視点としては、

被検者が正しく規則に従って反応できるか、またさらに1つの規則から別の規則へ正しく変換できるかどうか

…であり、ある規則から他の規則へと変換する能力、および現行の規則に従って前のカードの色を頭に入れておく能力を検査する方法とされています。

②行為計画検査


“行為計画検査”では、「台、透明のビーカー、小さな穴が開いた蓋、透明な試験管、コルク、L字の金属フック、小容器、小容器の蓋」といったBADSのセットになっている用具を使用します。
準備段階としては、ビーカーの上には蓋がしてあること、試験管の中にコルクが入っていること、ビーカーに3分の2程の水を入れておくことがあげられます。
検査の課題として被験者にはコルクを試験管から取り出すことが求められますが、その際の注意点として、台や試験管、ビーカーは持ち上げてはいけないことを教示する必要があります。

この課題をクリアするためには、

1)試験管の中のコルクを浮かせるために水を使うことに気づくこと
2)水をビーカーから出して試験管に移す方法を考えつくこと
3)ビーカーの蓋を金属のフックではずす
4)小さな容器の蓋を回してはめる
5)ビーカーから小容器で水をすくう
6)コルクが試験管の上端に浮くまで水を試験管に注ぎつづける
…というステップを踏む必要があります。

特に時間制限はないものの、各段階で被験者が不適切な行為を続けている場合(一般的には2分以上)、検者は各項目に対してのヒントを与える事が許されています。

③鍵探し検査


この“鍵探し検査”では真ん中に100mm四方の正方形とその下50mmのところに黒い小さな点が描いてあるA4版の検査用紙を用いて行われます。
方法としては、まず被験者にこの正方形が大きな野原であると考えてもらい、その中で鍵をなくしてしまった…と仮定してもらいます。
この鍵を“確実に”見つけ出すためには正方形の中をどのように歩いて探すのかを、黒点からスタートして線で描きこんでもらう…という課題になります。

この鍵探し検査という課題がBADSの下位検査として採択された理由としては、

①“落としものをする”という日常生活において多くあるできごとだから
②被験者が有効かつ効率的な道筋を計画する能力を持つかどうかが調べられるから
③被験者が自分自身の行動をチェックする能力があるかどうかをみることができるから
④被験者は明確に述べられていない要因を考慮することが求められるから
…といった理由があげられます。

④時間判断検査

“時間判断検査”では、身近に起きるごくありふれたできごとに関する4つの短い質問によって行われます。
その質問は、

1)やかんのお湯が沸騰するのにかかる時間はどのくらいですか?
2)カメラのセルフタイマーをセットしてからシャッターがおりるまでの時間はどのくらいですか?
3)風船を膨らませるのにかかる時間はどのくらいですか?
4)犬の寿命はだいたいどのくらいですか?
…になります。

この検査での視点としては、4つの質問の正解をいかに正確に知っているかではなく、いかにもっともらしい推測ができるかが求められるということです。

⑤動物園地図検査


“動物園地図検査”では、被験者は動物園の地図上にある一連の決められた場所へどのように訪れるかを示すよう求められます。
この際のルールとしては、

・入口から入り、広場で終わること
・動物園内の決められた通路は1回しか通れないこと
…があげられます。
被験者にはこのルールを守った上で、2つのバージョンの課題を行うことが求められます。

課題の要求水準が高いバージョン1では、被験者の計画能力が厳密に評価することができますし、
要求水準の低いバージョン2では、誤りのない行程をたどるよう、指示されたとおりの道筋をとることが求められます。

どちらのバージョンでも被験者には、いったん規則が破られた際にそれをフィードバックし自分の行動を修正し、誤りを最小限にする能力が求められます。

⑥修正6要素検査


この“修正6要素検査”では、被験者は3種類の課題(口述、算数問題、絵の呼称)をするよう求められます。
使用される道具としては、「テープレコーダー、ストップウォッチ、鉛筆、消しゴム、何枚かの紙、2組の絵カード、2組の計算問題集、教示が書かれた紙」があります。
これらの道具は上図のように、被験者の前にセットされます。

この下位検査の制限時間は10分であり、被験者には、

1)過去の出来事を口述してテープに吹き込むこと
2)用紙にカードに描かれた物の名前をかくこと
3)カードの計算問題を解き、用紙に答えを書いていくこと
…が求められます。

その上で以下のようなルールが加えられます。

・10分間の間に3種類の課題のそれぞれ…つまり6つの組すべてに手をつけるようにすること
・ある課題の第1組に手をつけたすぐあとに、同じ課題の第2組に手をつけてはいけないこと
このルールを解説すると、10分の間に課題すべてを完了することは不可能ですので、どれか1つの課題を終わらせるのではなく、6つの組すべての少なくともどこか一部分に手をつけるということになります。
また、同じ課題を続けて行ってはいけないというルールに関しては、例えば、計算問題①を選んだら、その次に計算問題②を行うのではなく、絵の名前を書く課題、もしくはテープに吹き込む課題を行う…ということになります。

BADSの点数と採点方法について

各下位検査は、0点~4点のプロフィール得点で評価され、全体の評価は各下位検査の評価点の合計、すなわち24点満点でプロフィール得点を算出することができます。
以下に各下位検査毎のプロフィール得点の算出方法を解説します。

①規則変換カード検査の採点方法

規則変換カード検査の採点方法ですが、誤りの数と所要時間から算出します。

誤り プロフィール得点
0 4
1-3 3
4-6 2
7-9 1
10以上 0

*課題遂行に67秒以上要した場合はプロフィール得点から1点引きます

②行為計画検査の採点方法

行為計画検査の採点方法ですが、被験者自身の力でいくつの段階を達成できたかによりプロフィール点が異なります。

自力で達成できた段階の数 プロフィール得点
5 4
4 3
3 2
2 1
1以下 0

③鍵探し検査の採点方法

素点から以下のようなプロフィール得点を得ることができます。

素点 プロフィール得点
14~16 4
11~13 3
8~10 2
5~7 1
4以下 0

*課題遂行に95秒以上要した場合はプロフィール得点から1点引きます

④時間判断検査の採点方法

4つの質問すべてにO点か1点をつけます。
各質問の点数を合計してプロフィール得点を得ます。

Q 0点 1点
1.お湯の沸騰 5~10分 それ以外
2.セルフタイマー 7~15秒 それ以外
3.風船 10~60秒 それ以外
4.犬の寿命 10~15年 それ以外

⑤動物園地図検査の採点方法

動物園地図検査の採点方法は、バージョン1,2どちらに関しても、採点用紙の順序得点より誤りの数を引きます。
その後で療法のバージョンの得点を足し、16点中の“順序得点-減点”を算出します。
これが最初のプロフィール得点となります。

素点 プロフィール得点
16 4
11~15 3
6~10 2
1~5 1
0以下 0

*バージョン2の計画を立てる時間が15秒以上かかった場合はプロフィール得点から1点引きます。
また、バージョン2の課題を終えるのに123秒以上かかった場合もプロフィール得点から1点引きます。

⑥修正6要素検査の採点方法

修正6要素検査の採点方法は、手をつけた課題の数から規則違反をした課題の数を引いた値がはじめのプロフィール得点になります。

素点 プロフィール得点
6 4
4~5 3
2~3 2
1以下 1

*1つの下位課題の最大所要時間が271秒の場合、プロフィール得点から1点を引きます。

BADSのカットオフ値について

BADSの総プロフィール得点におけるカットオフ値と、標準化された得点における年齢群におけるカットオフ値は以下のとおりになります。

・総プロフィール得点:11点/12点
・標準化得点(平均値100、SD15):67点/70点
・標準化得点(40歳以下):65点/70点
・標準化得点(41~65歳):68点/73点
・標準化得点(65~87歳):69点/74点
*上述の“カットオフ値”は障害あり/境界域の値で示していますのでご了承ください

リハビリの様々な検査のカットオフ値についての記事一覧はこちら

BADSをどのように臨床で応用するか?

ではBADSの検査結果を、作業療法士はどのように臨床で応用し、反映させる必要があるのでしょうか?
例としては、

・BADSの検査によって被験者の日常診療場面での遂行機能障害の問題を念頭におく
・遂行機能障害によるリハビリ計画や実施への影響、被験者の予後の評価への判断材料にする
・認知リハアプローチや環境設定などの考慮する材料にする
…といったものがあげられるかと思います。

BADSの診療報酬について

BADSは診療報酬点数の対象検査であり、

区分:D285-2(操作が複雑なもの)
点数:280点
…となります。

まとめ

リハビリテーションの実施だけでなく、日常生活上非常に問題になりやすい遂行機能障害ですが、BADSという標準化された日常生活上起こり得る事象に近い課題を使った検査を行うことで、
非常に多くの情報を得る事ができると思います。
ただし、BADSの検査方法はやや複雑なことからも、事前にしっかり弁巨うしておく必要はありますね!

作業療法士は語りたい!

遂行機能障害は目に見えない障害であることだけでなく、その症状の現れ方からも理解されにくい症状の一つだろうから、
BADSの検査項目を通して、評価することは必要だろうね!
検査結果だけでなく、課題へどのように取り組んでいたかの様子なんかも、
家族や他の医療スタッフに伝えることも重要でしょうね!
 

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
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