アスペルガー症候群という言葉はここ最近では「大人の発達障害」という言葉とともに広く認知されてきたように思います。
それでも、しっかりとした定義や他の自閉症との違いなどについては曖昧に認識されている印象を受けます。

本記事では、このアスペルガー症候群の…

  • 特徴や人口、男女比
  • 抱える社会生活上の課題
  • 治療や支援内容

…などについて解説します。

アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群(Asperger syndrome)とは、

“小児自閉症”と共通する症状を示すものの、言語や認知の発達に遅れを示さない、広い意味での“自閉症”に含まれるひとつのタイプ

…になります。

1944年に最初の症例を報告した、オーストリアの小児科医である“ハンス・アスペルガー(Hans Asperger)”の名前からつけられています。

人口

アスペルガー症候群の人口ですが、全人口の約1%とされています。
日本では計100万人以上20人に1人はアスペルガー症候群のグレーゾーンに当てはまる…といった調査結果もあります。

ちなみにアスペルガー症候群の世界での人口は約3,720万人(2015年)のようです。

男女比

アスペルガー症候群は性別との相関関係があり、男性に多いとされています。
その比率ですが、女性の4倍程度とも言われています。

原因

アスペルガー症候群の原因についてですが、これはまだはっきりとはわかっていないようです。
遺伝的な要因や環境要因が影響している…という報告もありますが、どれもあくまで「その傾向が高い」といったレベルでの報告のようです。

CT・MRIでの画像診断について

アスペルガー症候群はCTやMRIといった脳の画像診断では特定できないとされています。
ただし、脳の帯状回の血流量の低下を指摘している報告もあるようですので、今後何かしらの画像診断によって診断できる方法がでてくるかもしれません。

社会生活上の課題について

アスペルガー症候群の方が抱える、社会生活上の課題とはどのようなものがあげられるのでしょうか?

大きく分類すると次のような課題があげられます。

  • 社会的コミュニケーション
  • 社会的相互作用
  • 感覚過敏
  • 反復動作やルーチン
  • 狭い範囲の高い関心とこだわり

以下に詳しく解説します。

社会的コミュニケーション

アスペルガー症候群や自閉症の人にとって、

  • ジェスチャー
  • 声の調子(トーン)
  • 会話の音量
  • 距離感
  • ニュアンス
  • 表情の変化
  • 抽象的な概念

…といった、言語と非言語の両方の解釈が難しいという特徴があります。
そのため、ちょっとした冗談を本気で受け取ったり、言葉の裏の真意を読み取ることができなかったり…と社会的なコミュニケ-ションで支障をきたしてしまいます。

その結果、周囲の人からは…

  • なんだか付き合いにくい
  • 会話が成り立たない
  • 冗談が通じない

…といった印象を受けてしまいます。

社会的相互作用

社会的相互作用とは、簡単にわかりやすく言えば、対人間で様々に変化する社会的行為のことを指します。
つまり、相手の出方によって自分の振る舞いや言動を柔軟に変化できるかどうか?という解釈でよいかと思います。

アスペルガー症候群の人は、他人の感情や意図を認識し理解すること、そして自分の感情を表現し、相手の真意を「読む」ということが難しいとされています。
その結果、周囲からは…

  • 動きが遅く鈍感に見えてしまう
  • 自分勝手で協調性がない
  • 他の人への配慮に欠けている
  • 動作や行動が奇妙で不適切に見えてしまう

…といった問題が発生しやすくなります。

その結果、学校生活では友人関係の形成が困難になり、社会人になると「仕事ができない」、「使えない」というレッテルを貼られてしまいます。

感覚過敏

アスペルガー症候群の人は…

  • 触覚
  • 味覚
  • 匂い
  • 温度
  • 痛み

…といった感覚に対して過敏になることがあります。

些細な物音を気にしてしまうことや、点滅するライトや回転する物に見入ってしまう…なんてことも多くあるようです。

また、アスペルガー症候群の人が攻撃的な意図はないものの、相手を呼ぶ際に力いっぱい叩いてしまう…なんて現象は、この感覚の過敏性が背景にあると考えられます。

反復動作やルーチン

アスペルガー症候群の人にとっては、日常生活は非常に予測できない事象に富んでいて、複雑に思えているのかもしれません。
他の自閉症と同様、突発的な変化に対応できず、パニックに陥ってしまうことも多いとされています。

そのため、アスペルガー症候群の人は、順序だったものや規則的なものに関心を示すと同時に安心感を覚える傾向にあります。
毎日ルーチン化された同じパターンで行動することが、彼らにとっては最良の生活ともいえるのかもしれません。

狭い範囲の高い関心とこだわり

アスペルガー症候群の人は幼少期の時から何かしらの対象に強い関心を持つ傾向にあります。
この強い関心は時には“偏執的”とも言えるレベルでもあり、社会一般の興味や流行とは離れた独自的なものに興味を抱くケースが多いようです。

一例としてですが…

  • 数字や計算
  • 文字
  • 地理
  • 歴史
  • 道路標識
  • 絵画
  • 電車やバスの時刻表
  • コンピューター
  • パズル
  • 模型
  • 料理のレシピ
  • 世界の天気予報 etc…

…といったものがあげられます。

これらの興味の対象は時間とともに変化する場合もあれば、生涯にわたる場合もあります。

後述するアスペルガー症候群への支援にもつながりますが、彼らのこういった興味や関心の対象を有意義に利用することで、勉強やボランティア、職業といった社会的活動につなげることができます。

治療や支援内容について

では、実際にアスペルガー症候群の人に対してはどのような治療、支援を行うのでしょうか?

そもそも、アスペルガー症候群の人に対しての治療やセラピーといった支援の目的ですが、

決してアスペルガー症候群そのものを無くすということではない

…ということが前提にあげられます。

基本的にアスペルガー症候群は治る…という障害ではありません。

あくまで社会生活に適応しやすくするための支援…ということを念頭に置いておかなければなりません。

その支援内容としては次のようなものがあげられます。

  • 認知行動療法
  • SST
  • 言語療法
  • 理学療法
  • 作業療法
  • 薬物療法
  • 家族療法

以下にそれぞれ詳しく解説します。

認知行動療法

認知行動療法とは、対象者が思っていることや感じていることといった“認知”に歪みがあり、社会生活を送る上で明らかな支障があった場合、それを改善するために行うアプローチになります。
アスペルガー症候群の人に対しての認知行動療法によって、社会生活を送る上での認知の歪みを修正することで、不安やその他の個人的な課題に対処するのに役立たせることができます。

SST

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、対人関係や集団生活の中で必要なスキルを身につける訓練になります。
アスペルガー症候群の人に対してのSSTを行うことで、社会的なルールをデモンストレーション上で経験し学習していくことができます。

言語療法

アスペルガー症候群の人に対しての、STによる言語療法ですが、音声制御といったコミュニケーションの評価と訓練を行うことができます。

理学療法

アスペルガー症候群の人は、感覚過敏という特徴もあり、身体をうまく使うことが困難な場合があります。
理学療法士(PT)によって正しい基本的な運動や動作、体の使い方を身に着けていくことができます。

作業療法

作業療法士(OT)による支援内容としては、主に作業活動を利用して感覚と運動の協調性を高めたり、本人が集中しやすい作業内容や環境の設定を検討したりと、実生活に基づいた支援を行うことが多いとされています。
また、本人の興味の範囲や対象、強みといったものをいかに社会生活のスキルに昇華するか?と検討するのも作業療法士の役割とも言えます。

薬物療法

アスペルガー症候群の人に対して、向精神薬といった薬物療法がおこなわれる場合があります。
これはアスペルガー症候群に関連する不安やうつ病、注意欠陥および多動性障害(ADHD)を管理するのに役立ちます。

家族療法

アスペルガー症候群における家族療法ですが、これはその当事者の家族全員が受けることが多いようです。
家族全員で受けることで、その障害を客観視すること、それぞれの役割や立場を認識し、改めて考え方を知ること…と言った目的があります。

高機能自閉症・非定型自閉症との違いについて

アスペルガー症候群と、高機能自閉症や否定型自閉症は一見すると同じようにみられます。
しかし、高機能自閉症・非定型自閉症などは厳密にはアスペルガー症候群と区別されます。

「知的発達に明らかな遅れがないが、自閉症の特徴を有している」という点では共通していることが、一緒にみられてしまう理由でもあるようです。

ちなみに、“高機能”というのはあくまでも「知的発達に明らかな遅れがない」ことを表す用語であり、自閉症状の程度とは無関係になります。

また、“高機能”でも自閉症状の強いケースもいるので、「高機能=支援が必要ない」というわけではなく、どの種類の自閉症にもその個人にあった支援が必要ということになります。

まとめ

本記事ではアスペルガー症候群について解説しました。

アスペルガー症候群とは…

  • 言語や認知の発達に遅れを示さない、広い意味での“自閉症”に含まれるひとつのタイプ
  • 人口としては全人口の約1%
  • 性別との相関関係があり、女性の4倍程度
  • ア原因はまだはっきりとはわかっていない
  • 社会的なコミュニケーションや相互作用、感覚過敏や反復動作といった社会生活上の課題があげられる
  • こだわりを強みにして社会的なスキルに昇華することも必要
  • アスペルガー症候群そのものを治療するという考え方ではない
  • 認知行動療法やSST、リハビリテーション、薬物療法などが利用される
  • 家族療法は当事者の家族全員が受けることが多い

作業療法士は語りたい!

世の中の天才と言われる人は、おおよそこのアスペルガー症候群の場合が多いようだね。
アインシュタインやエジソンは代表的かもしれませんね!
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