パソコンは障害を持つ方のQOL向上や就労支援などへの強力なツールになります。
ただし、いざパソコン支援をするとなると「いかに使いやすくするか…」という課題に直面するかと思います。
本記事ではWindowsのOSに備わっているコンピュータアクセシビリティ機能を使うことで、無料で使いやすくする方法について解説します。
*執筆者のパソコンのスペックの関係上、Windows7に限定しています。
目次
コンピュータアクセシビリティとは?
聞きなれない言葉ですが、コンピュータアクセシビリティとは直訳すれば、コンピューターの利用しやすさ…になります。
つまり…
様々な障害を有する人がコンピュータを利用しやすくするための機能
…という意味になります。
Windowsの標準アクセシビリティ機能について
アクセシビリティ機能はWindowsの場合、Windows95から標準搭載されているため現在流通しているほとんどのコンピュータに備わっている機能と言えます。
もちろん使用することは無料ですので、クライアントのパソコン操作支援を行う際、経済的な負担を考えてもこのOSによるアクセシビリティ機能で問題解決ができるかどうかを考えていくことが最優先とも言えます。
視覚に障害がある場合
全盲やロービジョンといった視覚障害だけでなく、糖尿病による緑内障、高齢による白内障で視覚に障害がある人にとって、パソコンのディスプレイが見えにくい…もしくは一部しか見えないというのは非常に大きな問題です。
こういった場合、Windowsの標準アクセシビリティ機能によって解決することができるかもしれません。
ここではWindowsのアクセシビリティ機能である…
- 拡大鏡
- 文字、アイコンの大きさ拡大
- 画面のコントラストの設定
- 画面の情報を読み上げ機能
…について解説します。
拡大鏡
Windowsのアクセシビリティ機能には、画面全体を拡大したり、一部分を拡大するといった機能である「拡大鏡」が標準で搭載されています。
この拡大鏡の機能には…
- 全画面を拡大する“全画面表示モード”
- レンズモード
- 固定モード
…の3つが備わっています。
拡大鏡機能についての詳しい記事はこちら文字、アイコンの大きさ拡大
前述した“拡大鏡”の機能は部分的な文字やアイコンの拡大ですが、画面全体の文字やアイコンを大きく設定することも可能です。
画面の文字やアイコンを大きくする方法ですが、
- [スタート]→[すべてのプログラム]→[アクセサリ]→[コンピュータの簡単操作]のフォルダ内にある『コンピュータ簡単操作センター』を開く
- 『コンピュータ簡単操作センター』内の[コンピュータを見やすくします]をクリック
- 「画面上の項目を拡大します」の項目にある[テキストとアイコンのサイズを変更します]をクリック
…の流れで起動可能です。
画面のコントラストの設定
画面がなんだかまぶしい…文字が背景に埋まってわかりにくい…なんてときはコントラストを変更することで解決できるかもしれません!
コントラストとは「明暗の差」という意味で、このコントラストを設定しなおすだけでも見やすさが大きく変わる場合があります。
画面の情報を読み上げ機能
Windowsでは視覚障害の方のために画面情報、キー入力、メモ帳のテキストの読み上げ機能が備わっています。
ただし“Microsoft Word”などのソフト内での読み上げには対応していないため、別途ソフトをインストールする必要があります。
読み上げ機能についての詳しい記事はこちら
身体機能に障害がある場合
脳血管障害による片麻痺や脳性麻痺、その他神経難病による上肢機能の低下によってパソコンを使用したいのにキーボードやマウスがうまく使えない…という状況は多いかと思います。
そういった時にもWindowsの標準アクセシビリティ機能で解決できるかもしれません!
様々な機能があるとは思いますが、今回は…
- 固定キー
- フィルターキー
- スクリーンキーボード
- 音声操作
…について解説します。
固定キー
キーボード操作を行う際に、例えば…
- 大文字の[A]を打ちたいとき:[Shift]キーと「A」キーを同時に押す
…の必要がありますが、脳卒中片麻痺などの障害のために同時にキーを押すことが困難な場合があります。
その際はWindowsのコンピュータアクセシビリティ機能である“固定キー』をONにすることで解決できるかもしれません。
この“固定キー”をONにした状態で[Shift]キーを押すと[Shift]キーがロックされた状態になるので、その後[Shift]キーを離しても、「A」を押すことで小文字の「a」ではなく大文字の「A」を入力することができます。
フィルターキー
パーキンソン病による不随意運動や、上肢の筋力低下によって打ちたいキーをうまく押せない、キーを押しっぱなしにしてしまい「あああああああああああ」となってしまう…という場合は、“フィルターキー”の機能を使用すると解決できる場合があります。
“フィルターキー”を有効にすることで、短時間のキー入力や繰り返されたキー入力を無視することができ、キーボードの繰り返しを遅くすることができます。
スクリーンキーボード
麻痺などによってキーボードのキーに手が届かない、キーを押せない場合は、モニター上に“スクリーンキーボード”を表示してキー入力を行うことができます。
スクリーンキーボードを使用することで、マウス操作のみで文字入力を行うことができます。
また障害の程度によりますが、マウスのクリック操作も困難な場合はポインタをスクリーンキーボード上のキーの上に数秒(設定可能)停留させるのみで選択できる機能である“ホバリング(自動入力)”を使用することで解決できるかもしれません。
加えて、スクリーンキーボードには「スキャン入力」も搭載されているので、一つのスイッチ操作が可能であれば利用することができます。
音声操作
最近ではSiriといったスマホの音声入力機能が一般的になってきましたが、Windowsにも標準アクセシビリティ機能として音声入力の機能が搭載されています。
Windows XPでは“音声操作”というよりは声でテキスト入力をする“音声入力”のみの機能ですが、Vista以降はiPhoneのSiri同様音声指示によって操作をすることが可能となっています。
またWinsdowsの音声操作の場合は学習機能も搭載されているので使えば使うほど音声操作の制度が上がっていくようです!
マウスが使いにくい場合
パソコン操作には必須のマウスですが、障害によってはこのマウスを操作しづらい場合があります。
ここでは…
- マウスの速度の調整
- ボタンの構成変更
- ダブルクリックの速度調整
- クリックロック
…について解説します。
マウスの速度の調整
不随意運動がある人にとってマウスの操作は非常に難しいもののようです。
そういったときはマウスの動く速度を調整することによって解決できる場合があります。
ポインタが移動する速度を少し遅く設定するだけで、大きくマウスを動かしてしまってもポインタはわずかしか移動しなくなります。
こうすることで不随意運動や振戦、失調といった症状がある人でもマウス操作がしやすくなるかもしれません。
ボタンの構成変更
麻痺や指の欠損によってはマウスのボタンの左右の位置を変えたほうがスムーズに操作できる場合があります。
ボタンの構成変更についての詳しい記事はこちらダブルクリックの速度調整
ダブルクリックのような連続した動作も、筋緊張が亢進している人にとっては非常に難しい操作の場合があります。
このダブルクリックの速度も、設定によって調整が可能です。
ダブルクリックの速度調整についての詳しい記事はこちら
クリックロック
マウスでドラッグするときは通常はクリックボタンを押したままポインタを移動させる必要がありますが、その動作が困難な場合は「クリックロック」の機能を使用することで解決できるかもしれません。
クリックロック機能をONにすることで、クリックを長押しするとドラッグしたい状況を保持できます。
マウスが使えない場合
上肢や手の機能によっては、全くマウスを使用することができない場合もあります。
ここではその解決策として…
- ショートカットキー
- マウスキー
…について解説します。
ショートカットキー
一般的にはパソコン操作でプリントや保存などをする際はマウスでボックスを開いてから行うことが多いと思います。
しかしショートカットキーを使用することでマウスが使えなくてもキーボードのみで工程が少なく操作を行うことができます。
ショートカットキーについての詳しい記事はこちら
マウスキー
マウスの操作をキーボードで代替する機能をマウスキーと呼び、これもwindows標準のアクセシビリティ機能です。
マウスキーについての詳しい記事はこちら
パソコン支援にはコンピュータアクセシビリティの知識は必須
障害の種類や程度、どのようにパソコンを使用するのかによってコンピュータアクセシビリティの組み合わせ方が変わってくるので、それぞれの特徴をしっかりと把握しておく必要があります。
そうすることで、パソコンというツールが使いやすくなり、様々な社会参加も可能になってくると思います。
まとめ
本記事では、おおまかにですがWindowsの“コンピュータアクセシビリティ”について解説しました。
- 様々な障害を有する人がコンピュータを利用しやすくするための機能
- 元々OSに備わっているため、コストが無料で利用できる
- 視覚障害の場合は、拡大鏡やコントラスト設定、読み上げ機能などを利用する
- 上肢や手の機能障害の場合は、固定キー、フィルターキー、スクリーンキーボード、音声操作などを利用する
- マウスが使いにくい場合は、速度の調整やボタンの構成変更、ダブルクリックの速度調整やクリックロックを利用する
- 全くマウスが使えない場合は、ショートカットキーやマウスキーを利用する