高次脳機能障害

半側空間無視の発生機序に関わる6つの説について

 

半側空間無視の発生機序について調べていると、いくつかの“説”があることがわかります。
そこで今回は『半側空間無視の発生機序に関わる6つの説』についてまとめてみました!

半側空間無視の発生機序について

半側空間無視の発生機序に関わる説として言われているものは、

①表象障害説
②注意障害説
③方向性運動低下説
④眼球運動障害説
⑤amorphosynthesis説
⑥一側性記憶障害説
…があげられます。
以下にそれぞれ詳しく説明します!

①表象障害説

1978年にイタリアの“Bisiach”らが唱えた説。
意識下において、“外空間”、“自己の身体に関する表象の認識不可”によるものとされています。

Bistachらはミラノの大聖堂広場の周辺を熟知していたある半側空間無視のクライアントに対して、
①大聖堂を背にした方向
②大聖堂に向かって立った方向
…この2つの状態を想定させ頭の中で広場の細部まで思い出させるように指示したそうです。
そうするとどちらの場合でもそのクライアントは本人からみた“右側”だけを思い出し、左側は無視したようです。

つまり、決して視覚で認識していなくても、頭の中で想定したイメージにおいても左側の無視が起こることから、
Bistachら記憶や感覚情報を顕在意識として想起させる際の“表象マップ”の存在を想定しました。
半側空間無視はこのマップの左側が障害された結果、無視の症状として現れる…と考えたようです。

半側空間無視のクライアントの脳内では、左半分のイメージそのものが欠如されている…ということです。

ただ、このBistachらによる“表象障害説”は証明が困難なこと、
無視の症状の大半がこの説でなくても説明可能ということが問題になっているようだね。

②注意障害説

1987年に“Kinsbourne”が、1989年に“Weintraub”が唱えた説がこの“注意障害説”になります。
この説は、半側空間無視のクライアントは右側に強く注意が引きつかれやすいこと、そしてそこから左側にも注意を向けることが困難であること…。
その結果左側を無視するような症状が現れる…という説です。

そもそも右半球は左半側空間にも右半側空間にも注意を向けることができる一方、左半球は右半側空間にしか注意を向けることができないようです。
つまり、健常な状態の脳では、両側の半球の注意配分が合わさることで左右の空間へ平等に注意配分が可能ですが、右半球が損傷されるとその配分が崩れ、
結果として、右方向への注意が優位になり、左側への注意配分が減弱し、無視という症状になる…という考え方になります。

③方向性運動低下説

1993年に“Heilman”らが唱えた説。
これは、半側空間無視のクライアントは麻痺側である左方向に向かう運動の開始や遂行に障害があるために虫が起こる…と考えるものになります。
つまり、この“方向性運動低下説”では、半側空間無視は視知覚や注意の問題というよりも運動の問題によって生じる症状…ということになります。

“方向性運動低下説”は主に前頭葉、基底核病変と関連することが確認されているようです!

④眼球運動障害説

左側への眼球の“サッケード(興味の対象物に視線を向ける高速で一過性の眼球運動)”…の立ち上がりが不良で,左右同時に刺激されると右へ優位に引かれるため、無視の症状になる…という説になります。

⑤amorphosynthesis説

1954年に“Denny Brown”らが提唱した説。
半側空間無視の責任病巣は左右の頭頂葉に同程度の割合で存在し、その頭頂葉が損傷されることで複数の感覚情報を空間的に統合することが困難になるため、無視という症状になる…ということです。

ただ、この説では“半側空間無視=頭頂葉の損傷のみ”という解釈が前提になるので、今日では不十分な説かもしれません。

⑥一側性記憶障害説

左半側空間に提示された刺激を忘れてしまう…という説になります。

まとめ

半側空間無視がどういう経緯で起こるのか?様々な説があることがわかりました。
今日では“①表象障害説”や“②注意障害説”が有力…という意見も多くありますが、“空間性注意の神経ネットワーク”を軸とした考え方もあるため、
まだはっきりとされていない…というのが本当のところのようです。
作業療法士としては発生するメカニズムを紐解いていくことも重要ですが、半側空間無視という症状の緩和、その障害を有していたとしても日常生活をどのように不便なく送ることができるか?という課題に真摯に取り組んでいくことも重要なんだろうなって思います。

作業療法士は語りたい!

半側空間無視のメカニズムを解明するには、
視線解析、脳画像、脳血流量といった検査まで行った上で解明されていくのかもしれないね。
検査技術の発展とともに明確化されていくんでしょうね!
 

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
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