職業・産業リハ

脳卒中後でも復職することの4つの意義とそれに伴う問題点とは?

 

脳卒中といった脳血管障害を発症し、片麻痺などの障害を有してしまったあとでも“復職”を果たすということは、一つの大きな目標にもなりえます。
今回はこの脳卒中後の復職の意義と、それに伴う問題点について考えてみました。

脳卒中後の復職の意義と問題点

まず結論として、脳卒中後の復職には、どのような意義があり、さらにどのような問題点や課題が付帯するのかについてです。

①社会復帰の一形態(QOL)



人を「社会的な動物」と捉える視点からすれば、ただADLが自立しただけでは不十分です。
「復職」することで社会生活においてその人に「役割」が与えられます。
この社会生活における役割の有無は、マズローの欲求5段階説で言う「社会的欲求」に位置するものと考えられます。
ちなみにこの社会的欲求が低い状態は“孤独感”や“不安感”の増悪による鬱状態の大きな原因になると言われています。
人が社会で生きていくためには、他者から必要とされているという“役割”が必要不可欠ということですね!

②経済的側面(Tax Payer)



リハビリテーションの意義は障害を有する人を「tax eater」から「tax payer」に変える事だ…という意見があるようです(過去のアメリカを中心に…だそうですが)。
この意見に対して作業療法士を始め多くの人(特に医療、介護関係者)は、「障害を有する人に失礼だ!」「もっと大事に扱うべきだ!」「働きたくても働けないんだから、健常者が経済的にも支援すべきだ!」…といった意見を持つと思います。
少なくても障害者の復職とtax payer(納税者)という単語をリンクさせるのに違和感を感じる人も多いかもしれません。
ただし障害を有する人に対しての“支援”はあくまで本人の自立を一時的、部分的に“手助け”することであって、“永続的”に保護することではありません。
その障害の種類や程度、背景も考慮しないといけませんが、障害を有する人が復職をし、労働することで少しでも経済を回すことを意識することは、さらにその人よりも重篤な障害を持つ人への支援に間接的にでもつながる…という発想が大事かもしれません。
「障害を持っていても働くことで経済活動に協力し、それが巡り巡って自分よりももっと支援が必要な人の一助に成り得る」という考え方は、障害を有する人の社会生活においても必要な要素と言えると思います。

③適正配置(Fitness for Work)



この“適正配置”については雇用する側…事業主に望まれることとして厚生労働省の文章にも以下のような文言が記載されています。

障害者のための職場づくりについて望まれること
・障害者の適性や希望等も勘案した上で、その能力に応じ、キャリア形成にも配慮した適正な処遇
一部引用:厚生労働省

障害は医学的モデルから見れば「治療」する対象になりますが、社会的モデルからみれば「適応」する対象と考えられます(私見ですが)。
その障害を治療対象としてみてしまえばその障害自体をどのように改善していくか?になりますが、適応対象としてみることは、その目的を達成するためのの“目的指向型”といえるので結果的に環境面への配慮も視野に入れることができます。
障害を有する人の復職において、その障害特性に合った適正配置を行い「細く長く」社会参加を続けて行けるように支援することが必要といえます。

④職場適応(Workplace accommodation)



前述した“適正配置”は“適応”に向けての事業主側の課題としての意味合いが強いですが、“職場適応”に関しては雇用される障害を有する人…クライアント側の課題としての意味合いが強いと言えます。
職場の環境…といってもそこには物的環境、人的環境もあり、日や時間によっても様々で変動的です。
その変動的な環境にいかに巻き込まれず、応用的に対応できるかどうか…という能力(適応力)も復職をし、社会生活を行う上では必要になってきます。
この課題には多くはジョブコーチ(職場適応援助者)が関わってくると思いますが、作業療法士が早期にクライアントにこの適応力の向上を意識して関わっていくことも必要不可欠と言えます。

まとめ

脳卒中の発症年齢を考えると全体の60%が70歳以上のようですが、生活習慣の変化、ストレスの増強といった要因も加味すると、“働き盛り”である30代以降の脳卒中の発症率は年々上昇していくとみられます。
そうなると、単純にADLの自立…を目標にするだけでは不十分になってきます。
作業療法士に至っても病院勤務の割合が多いことから、ADL(もしくはAPDL)における課題対策には強くても、復職といった社会復帰に関しての課題対策には二の足を踏んでいるケースが多い印象を受けます。
断言しますが、ADLの自立は通過点であって最終目標ではありません。
上述した4つの意義のように、もっと復職をはじめとした“社会参加”を意識した作業療法の介入を行っていくべきではないでしょうか?

作業療法士は語りたい!

“tax eater”から“tax payer”への移行って発想は、
医学的モデルにどっぷり浸かった医療従事者にとっては馴染みないのかもしれないね。
たしかに「経済活動」って視点までは考える機会少ないですよね。
広すぎる視点も危ういけど、支援の対象の生活をある程度俯瞰的な目でみることも、
生活を支援する作業療法士には必要なことなんだけどね!

【参考文献】
脳卒中後の職場復帰の予測要因

 

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
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