作業療法や介護の現場での、アクティビティとしての「塗り絵」ですが脳科学においても心理的においても様々なメリットや効果があることが分かっています。
では実際に高齢者に対して「塗り絵」を行うことで、どのような効果が期待できるのでしょうか?
少し「高齢者×塗り絵」という枠組みにフォーカスして考えてみたいと思います。
高齢者×塗り絵で期待できる効果
高齢者に対しての塗り絵という作業で、期待できる効果としては…
・自尊心の再獲得
・他者との交流のきっかけ
・社会参加のきっかけ
以下に詳しく解説します。
認知症の予防
ここ一ヶ月ぐらい、爺いの?塗り絵をしています。
何点かお見せします。🖍
色合わせが難しいですね。これも、認知症予防です! pic.twitter.com/cQ8Qydsrqv— 酔いどれeroji (@eroji3) 2017年3月6日
塗り絵は前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉といった脳の広い領域における活性化を促すことは『大人の塗り絵がもたらす脳科学と心理的効果と、行う際の注意点について!』でも触れましたが、これは高齢者においては認知症の予防につながります。
もちろん進行してしまった認知症を『治療』するということは難しくなってしまいますが、それ以上の進行を遅らせることや、周辺症状(BPSD)を落ち着かせることにつながる場合があります。
自尊心の再獲得
入院中の祖母に楽しみができればと差し入れた塗り絵の本。うまく塗れないと言うので、綺麗やねー色を重ねるといいよー筆圧を使い分けるといいよーと話す。最近は看護師さんから上手ですねって言われたと自慢してくれるから、90の手習いやねーって笑う。歳とってからも上達する事あるの楽しいよね。
— yukichi (@susiyukichi) 2016年6月27日
健康で元気だった時に比べると高齢者は心身ともに「喪失体験」が増え、自信を喪失していることが多いとされています。
そのことでなかなか新しいことにもチャレンジできず、失っていくもののほうが多いため自分の能力に落胆することも頻繁にあるようです。
簡単に導入でき、絶対的なルールがない「塗り絵」というアクティビティだからこそ、成功体験を積みやすく、失った自尊心を取り戻すきっかけになることがあります。
他者との交流のきっかけ
みんなに塗ってもらい貼り合わせた巨大な七福神〜♪♪みんなで作った感じが出ていてとても良い! #デイサービス #七福神 #塗り絵 pic.twitter.com/326oP0Vgbe
— たいよう形原デイサービス (@taiyoukatahara) 2017年5月28日
高齢者が1人で黙々と塗り絵を行うことでももちろん効果は得られますが、この塗り絵を集団で行うことによって「集団作業療法」としての効果が期待できます。
他の人と協力して一つの作品を仕上げること、他の作品と比べてみること、などは個人で行うこととは違う刺激になります。
社会参加のきっかけとして
大人の塗り絵になってしまいますが、これは『第3回大人の塗り絵コンテスト』で入選(次点)した作品です。タイトルは『蛍の丘』で蛍が飛んでる所をイメージして描きました。#みどりの日なので緑色の画像を貼る #大人の塗り絵 #coloringbooks #coloring pic.twitter.com/PsWv8NG3Sf
— いねむり姫 (@Magical_Megchan) 2017年5月4日
「大人の塗り絵コンテスト」というものが定期的に開催されているため、これらのコンテストに作品を出典することは社会参加の一つとして捉えられます。
塗り絵を導入するとしても、ただ「脳トレだから」「リハビリだから」「認知症予防の為」という理由で塗り絵を提供するよりは、「今年、こんなコンテストがあるから一緒に応募してみない?」という誘い方の方が非常に得られる効果が高いと考えられます。
塗り絵というアクティビティにおいても、ICFにおける「参加」を考えることで、その高齢者の課題を包括的に捉え対応することができると言えます。
まとめ
今回は「塗り絵」というアクティビティを作業療法やデイサービス、デイケアといった現場で高齢者を対象にした場合、どのような効果が期待できるのかを考えてみました。
身体機能としては「巧緻性の向上」なんてあげられるかもしれませんが、どちらかと言えばこういった認知面、心理面、社会的交流といった部分を支援するきっかけになることが多いように感じます。
よく使われる「塗り絵」ですが、こういった効果が期待できることから、きちんと目的をもって導入すると非常に有益な手段になると言えます。
作業療法士は語りたい!
塗り絵関連記事
大人の塗り絵がもたらす脳科学と心理的効果と、行う際の注意点について!
大人の塗り絵がもたらす脳科学と心理的効果と、行う際の注意点について!
塗り絵は片麻痺のリハビリ治療効果も期待できる?イラストレーター“門馬朝久”さんの事例
【関連記事】
大人の塗り絵がもたらす脳科学と心理的効果と、行う際の注意点について!
作業療法の「作業」は意味がある+面白いものであるべきだと提案します!