ここ最近は認知症の方による自動車運転事故の問題が社会的に問題視されていることからも、作業療法やリハビリテーション分野における自動車運転支援の重要性が強く謳われてきています。
もちろんその対象は認知症をはじめ、脳卒中による片麻痺や高次脳機能障害の方といった範囲まで広く扱う必要があります。
そこで今回はこの作業療法士が自動車運転支援においてできることについて考えてみました!
目次
作業療法士が自動車運転支援に対してできること
作業療法士がどの疾患にも関わらず、クライアントの自動車運転支援を行う際にできることは大きく分けて以下の3つになります。
②教習所や免許センターとの連携
③免許更新など手続きのアドバイス
①基礎的運転能力の評価・指導
ではまず、この基礎的運転能力の評価・指導とはどのようなものになるのでしょうか?
様々な文献や論文、取り組みの現状などをみると…
・脳卒中ドライバーのスクリーニング評価(日本版SDSA)による評価
・ドライビングシミュレーターによる評価と指導
神経心理学検査による評価
この神経心理学検査は入院中の病院内でも可能なこと、作業療法士にとって自動車運転支援に関わらず使用してきた検査バッテリーがメインであることから実施しやすいという利点もあげられます。
実施されている主な神経心理学検査バッテリーの内訳としては、
・かなひろいテスト
・コース立方体検査
・レイ複雑図形検査( Rey-Osterrieth Complex Figure Test :ROCFT)
・レーヴン色彩マトリックス検査 (RCPM : Raven’s Colored Progressive Materices)
・Mini-Mental State Examination(MMSE)
・改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
脳卒中ドライバーのスクリーニング評価(日本版SDSA)による評価
脳卒中ドライバーのスクリーニング評価(日本版SDSA)とは、イギリスで開発された脳卒中患者が安全に運転可能かどうかを予測するための検査です。
いままでイギリスやアメリカ、北欧やオーストラリアで実施された研究により、高いエビデンスを持った検査との報告があるようです。
実施内容としては、①ドット抹消、②方向スクエアマトリックス、③コンパススクエアマトリックス、④道路標識の4つのテストで構成されており、被験者の注意、空間認知、非言語性推測力を評価し、統合的に運転適性を評価していきます。
ドライビングシミュレーターによる評価と指導
画像引用:Hondaセーフティナビ
紙面上で行われるペーパーテストのみでは、実際の自動車運転の適性評価には限界があるということで、最近では各リハビリテーション施設でドライビングシミュレーターを導入して評価しているケースも多くなってきています。
リハビリテーション医療機関におけるドライビングシミュレーターで高いシェアを占めるものは、HONDA社による“Hondaセーフティナビ”があげられます。
パソコンを使用し、市販のステアリングと組み合わせることで、簡易型シミュレーターとして使用できることからも導入しやすいというメリットがあります。
②教習所や免許センターとの連携
もちろん病院内や施設内と言ったクローズドの環境内でいくら運転適性検査を行ったとしても、実際の自動車運転環境と乖離する場合が多くあります。
限界はあるでしょうが、教習所や免許センターと連携することで、教習所内での運転教習、路上運転教習を教習所の指導員に受けたりするように設定することも必要になってきます。
この院外での自動車運転評価をスムーズに行うためには、クライアントの情報共有の方法や教習の予約の取り方、教習所までのアクセスや方法といった細かい部分にまで事前設定しておく必要があります。
③免許更新など手続きのアドバイス
加えて自動車運転免許の更新の際の手続き方法や、医師に記入してもらうための診断書の取得の方法などのアドバイスも、自動車運転支援に関わる作業療法士は知っておく必要があります。
この場合免許センターとの連携だけでなく、各都道府県の警察署や公安委員会との連携も必要な場合が多くあります。
しかもその都道府県によって手続きの段取りも様々で、まだ統一されていない点も多いことから自分が関わる地域の手続きの流れを把握しておく必要があるかもしれません。
まとめ
自動車運転支援に作業療法士が関わる際には、“基礎的運転能力の評価・指導”、“教習所や免許センターとの連携”、“免許更新など手続きのアドバイス”といったセラピストとしての関わりだけでなく、コーディネーターとしての関わり
方も必要になってきます。
また医療以外の機関との連携も必要になってくることからも、支援する作業療法士自身のマネジメント能力も必要になってくると思います。
今後ますます自動車運転支援というカテゴリーは必要とされてきますので、作業療法士ができることをしっかりと把握し、早急に整備していく必要があります!