ワークパーソナリティと個人特性の階層構造は就労支援の課題抽出に役立つ!って話

障害を持つ人の就労支援を行う際、その個人が持つ特性を把握し課題抽出をしていく必要があります。
そこで今回はこの課題抽出をスムーズにし、段階的、階層的に把握するために利用できる『個人特性の階層構造』についてまとめてみました!

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ワークパーソナリティについて



職業的な自立に向けた支援を進めるには、支援対象の“個人特性”と“環境特性”の2つの方向性を正確に把握する必要があります。
職業リハの分野において、この仕事に従事するために必要な“個人特性”は“ワークパーソナリティ(work personality)”もしくは“職業個性”と呼ばれています。

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“職業個性”は基本的な個性

このワークパーソナリティは何か特定の職業や職場に限定されるものではなく、職業生活の全体を通して形成される職業人としての基本的な特性を主に指します。
また発達の過程を通して形成され、仕事を効果的に行うのに必要な適正、行動、価値観や能力などの側面が含まれているので、仕事を探し、その仕事に従事し適応するというプロセスで大きな影響を及ぼします。

個人特性の階層構造について


個人特性における職業的な能力は、地域生活に不可欠であるとともに、働くためにも必要となる基礎的な能力を土台として、その上に、ある特定の職務を行うための能力を設けた、階層的な構造として考えることができます。

①社会生活の遂行

地域社会の中にあって役割を果たして日常生活を行うのに必要とされる、最小限度の個人的な条件を網羅したものがこの“社会生活の遂行”に位置します。
地域のなかで日常生活を営む上で必要とされる個人特性の基礎的な部分で、以下の“学習の基礎的技能”・“適応の基礎的技能”・“地域社会への適応行動”の3つから構成されています。

社会生活の遂行に関わる条件

領域 項目 内容
学習の基礎的技能 1.基礎的な発達
2.基礎的な数的処理
3.基礎的な理解力
4.コミュニケーション
・感覚機能の発達・運動機能の発達
・認知機能の発達
・算数の能力
・時間の管理
・基礎的学業・読解力
・話す能力・言語的読解力・書く能力
・コミュニケーションの方法
適応の基礎的技能 1.事故の理解
2.情動的な対人関係
3.社会的な対人関係
・自己の知覚・自己概念
・適切な感情表出・自己への過敏
・対処行動
・基礎的対人技能・集団への参加
・余暇の活動・社会的礼儀・性的行動
・責任感
地域社会適応行動 1.日常生活技能
2.家事の技能
3.健康の管理
4.消費者技能
5.地域社会の知識
・衣服の着脱・食事・トイレ・衛生と整容
・料理・清掃・洗濯・衣服の管理
・簡単な医学知識・病気への予防
・服薬の管理・医療機器の利用
・余暇の金銭の扱い方・預貯金の仕方
・予算の立案・購買行動
・余暇の移動の自立・地域の規約
・社会資源の利用・電話の利用

これらは“社会生活能力”とも呼ばれる部分でもあり、ADLやAPDL能力といった従来の作業療法が支援対象とする項目がこの階層に当てはまります。

②職業準備行動

どのような仕事に就いても共通して求められる能力であり、職業人としての役割を遂行するのに必要な条件がこの“職業準備行動”の階層に位置します。

職業準備性に関わる条件

領域 項目 内容
職業準備行動 1.職業の理解
2.基本的ルールの理解
3.作業遂行の基本的能力
4.作業遂行の態度
5.対人関係の態度
6.求職と面接技能
・働く意味の理解・職業領域の知識
・事業所の知識・役割遂行の理解
・継続勤務・連絡や報告の仕方
・時間の区別・準備と後始末・質問の仕方
・注意の効き方と守り方・身だしなみ
・正確な手順と遂行・機器の使用法・遂行の工夫
・作業耐性・安定した成果・危険への配慮
・意欲と自発性・取り掛かり・作業への集中
・機器類の扱い・指示への対応・責任感
・あいさつや返事・言葉遣い・謝り方
・他者との協調・会話への参加
・求人情報の理解・書類作成の知識
・面接態度

③職務との連合

ある職業群や職務についてそれぞれを維持する可能性を明らかにするのに必要な情報であり、その特殊な職務を遂行する上での必要条件がこの“職務との連合”になります。

職業適合性に関わる条件

領域 項目 内容
職業適合性 1.能力面の特性
2.非能力面の特性
3.訓練の特性
・知能・空間知覚・近くの速さと正確
・精神運動機能・学力・技能
・性格・興味・価値観
・職務技能の学習・職務技能の転移

一般就労には“社会生活能力”と“職業準備性”が必要

その職場で実際の作業をこなしつつ職業生活を継続するためには、上記の階層の諸条件をクリアしていることが求められていて、それぞれが十分にできていれば一般企業に就職し、定着する可能性が高いと言えます。
しかし、『社会生活能力』『職業準備性』に問題が多い場合は、就職できたとしてもその職業生活の維持は困難になってしまいます。
職業リハにおいてはこの問題に対しての訓練や就職した後の継続した支援が必要になってきます。

“社会生活能力”と“職業準備性”に問題が多い場合

職業生活を送る上で基礎的な能力になる“社会生活能力”と“職業準備性”に大きな問題を抱える場合は、代償アプローチとして“環境特性”においての配慮が必要になってきてしまいます。
つまり職場側から寄り添い、配慮する形になるため一般就労よりは“障害者枠での雇用”や“福祉的就労”といった可能性を探っていくことにシフトしていく必要があります。

“社会生活能力”と“職業準備性”は全て整わないといけない?

しかし就労する際にこの“社会生活能力”と“職業準備性”が全て整って準備ができていないと一般就労が困難かというと必ずしもそうとは言えません。
訓練場面で修正・改善されなくても、就職してからその重要性に気づき、その現場や仕事を通して改善されるということは多くあるようです。
精神疾患の方を対象とした復職支援プログラムである“IPS”で謳われている「Place-Trainアプローチ」と同義と言えます。

まとめ

この個人特性の階層構造を知ることで、障害を有する対象者の就労へ向けて作業療法士がどの部分を支援するか?ということが理解できやすくなるかと思います。
もちろんこの階層構造は支援を受ける当事者自身も理解することで、客観的に自身が持つ課題把握をすることができるので、支援者、当事者自身がこの階層構造の図を理解し、目指す方向を一致させ就労へ向かうことが必要なのかもしれませんね!

産業作業療法士は語りたい!

この階層構造は障害を有する人だけでなく、何かしら「働きにくさ」を感じている人にとっても非常に有益なものだと思うんだよ。
職業生活を送る上で自分がもつ課題を客観的、かつ構造的に把握するツールとして活用できますからね!
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