リハビリテーション評価

TMT(トレイルメイキングテスト)のカットオフ値と平均値、方法や注意点について

 

“TMT(トレイルメイキングテスト)”は脳卒中による高次脳機能障害の一つである注意障害に対してよく使われる検査ですが、方法は知っていても、意外と注意点やカットオフ値、平均値についてはあまり詳しくない…なんてリハビリスタッフが多いような気がします。
そこで今回は注意障害の評価、検査である“TMT”についてまとめてみました!

TMTとは?

TMTは“Trail Making Test(トレイルメイキングテスト)”の略称であり、リハビリテーション医療において主に高次脳機能障害である“注意障害”の検査として使用される検査の一つです。

TMTの対象疾患

TMT検査の対象疾患としては、

・脳血管障害(脳梗塞・脳出血等)
・頭部外傷
・水頭症
…といった中枢性疾患があげられます。

加えて、認知症や転倒リスクが高い高齢者、そして最近では自動車運転能力の評価のために実施される場合もあります。

TMTの目的

TMTを実施する目的としては…

・注意機能(持続性、選択性、配分性)
・遂行機能(前頭葉機能)
・ワーキングメモリ
…といった能力を検査することが主とされています。

加えて、主な目的ではないもののその検査方法から、

・視覚的探索機能
・視覚運動協調性
…といった視覚性の機能も評価することができます。

準備物品について

TMT検査を行う際に必要な物品は以下の通りです。

・鉛筆
・消しゴム
・ストップウォッチ
・検査用紙

TMTにはA検査、B検査がある

TMT検査は“TMT-A”と“TMT-B”の2つで1セットとして扱うのですが、
おなじTMTの検査でも“TMT-A”と“TMT-B”はそれぞれ評価するポイントが異なってきます。

TMT-Aの概要と検査方法について

用紙サイズ

A4用紙

記載内容

1~25まで数字がランダムに配置されている

検査方法

被験者は1から順番に1-2-3と鉛筆で線を結んでいく

教示方法

TMT-Aにおける教示方法は以下のようにガイドラインにて決められています。

TMT-A検査の練習

TMT-A練習用用紙を被験者に見せながら,

「今から,検査のための練習をします。
この用紙に書かれている数字の1から2,3というように数字の順番に,できるだけ早く,線で結んでください。
最後の8まで結ぶのにかかる時間を測定します。
途中で結ぶ順番を間違ったときには,『間違っています』といいますので,すぐに訂正して次に進んでください。
また最後の数字を結ぶまで鉛筆を紙から浮かさないでください。もしも浮いてしまったときには,『鉛筆が浮いています』といいますので,すぐに鉛筆を紙につけてください。
それでは始めます。
鉛筆を紙から浮かさずに,できるだけ早く,数字の順に,線で結んでください。
ではどうぞ」
と教示をし、終わったと同時にストップウォッチをスタートする。

TMT-Aの本検査

TMT-A本検査用紙を被験者に見せながら,

「今度は本番です。
数字が多くなっていますが,やり方は一緒です。
この用紙に書かれている数字の①から順に,できるだけ早く,線で結んでください。
最後の数字まで結ぶのにかかる時間を測定いたします。
途中で結ぶ順番を間違ったときには,『間違っています』と言いますので,すぐに訂正して次に進んでください。
また最後の数字を結ぶまで鉛筆を紙から浮かさないでください。
もしも浮いてしまったときには,『鉛筆が浮いています』と言いますので,すぐに鉛筆を紙につけてください。
それでは始めます。
鉛筆を紙から浮かさずに,できるだけ早く,数字の順に,線で結んでください。
ではどうぞ。」

と、練習同様、教示が終わったと同時にストップウォッチをスタートする。

計測

25をゴールにし、そこまで到達するまでの所要時間を計測する

TMT-Bの概要と検査方法について

用紙サイズ

A4用紙

記載内容

1~13までの数字「あ」から「し」までの平仮名がランダムに配置されている

検査方法

被験者に数字と平仮名を交互に順番通りに線で結んでいく(1→あ→2→い→3…)

教示方法

TMT-Bにおける教示方法は以下のようにガイドラインにて決められています。

TMT-B検査の練習

TMT-B練習用用紙を被験者に見せながら,

「今度は少し違うことをしていただきます。
最初はまた練習です。
今度は『1-あ-2-い-3-う』というように数字と仮名とを交互に,順番に,結んでいっていただきたいのです。
もし途中で数字と仮名が交互でなかったり,順番を間違ったりしたときには,『間違っています』といいますので,すぐ訂正して次に進んでください。
また,鉛筆が紙から離れたときには,『鉛筆が浮いています』といいますので,すぐに鉛筆を紙につけてください。
それでは始めます。
鉛筆を紙から浮かさずに,できるだけ早く,数字と仮名を交互に,順番に,線で結んでいってください。
いいですか,ではどうぞ」
と教示をし、終わったと同時にストップウォッチをスタートする。

TMT-Bの本検査

TMT-B本検査用紙を被験者に見せながら,

「今度は,本番です。
数字と文字が多くなっていますが,やり方は一緒です。
今度も『1-あ-2-い-3-う』というように数字と仮名とを交互に,順番に,結んでいっていただきます。
もし途中で数字と仮名が交互でなかったり,順番を間違ったりしたときには,『間違っています』といいますので,すぐ訂正して次に進んでください。
また,鉛筆が紙から離れたときには,『鉛筆が浮いています』といいますので,すぐに鉛筆を紙につけてください。
それでは始めます。
鉛筆を紙から浮かさずに,できるだけ早く,数字と仮名を交互に,順番に,線で結んでいってください。
いいですか,ではどうぞ」

と、練習同様、教示が終わったと同時にストップウォッチをスタートする。

計測

13をゴールまで到達するまでの所要時間を計測する

TMT-AとTMT-Bで共通する点、異なる点

“TMT-A”、“TMT-B”それぞれの共通する点、また異なる点については以下のとおりです!

共通点

“TMT-A”、“TMT-B”の両者に共通する点としては、

・視覚性の探索能力
・注意機能の選択性注意
があげられます。

異なる点

また、異なる点としては、
“TMT-B”は“数字と平仮名を順番に交互に線で結ぶ”という課題のため、

・ワーキングメモリ
・分割的(分配)注意機能
を検査することができます。

つまり“TMT-A”、“TMT-B”の両方とも著しく低い検査結果の場合は「視覚性の探索能力」「注意機能の選択性注意」の障害としてみるのが妥当ですし、
“TMT-B”のみに著しく低い検査結果の場合は、「ワーキングメモリ」「分割的注意機能」の障害、、、いわゆる前頭葉の機能低下として推測することができます。

端的に言っちゃえば、TMT-Aは注意の選択性、TMT-Bは転換性と配分性が検査できるって解釈でよいかと!

TMT検査における注意点について

TMT検査を実施する際には以下の点に注意が必要です!

①本番前には必ず練習問題を行う!
②鉛筆は紙から浮かさない!
③B検査では制限時間が5分!
では、以下にそれぞれ詳しく説明します!

①本番前には必ず練習問題を行う!

“TMT-A”、“TMT-B”両者とも必ず練習用紙を用いた練習問題を行ってから本検査を行います。
この時点でしっかりと検査指示内容の理解ができているかどうかを把握しないといけません!
ちなみにTMT-A,TMT-Bともに練習問題自体が施行できない場合は中止となります。

②鉛筆は紙から浮かさない!

“TMT-A”、“TMT-B”ともスタートからゴールまで鉛筆を用紙から浮かさないようにして線を結んでいきます。
この点も練習問題を実施する段階で被験者に伝えておく必要があります。
また、教示内容でも触れたように、鉛筆が紙から離れたときには「鉛筆が浮いています」と注意することは認められていますが、検査上の観察ポイントとしてチェックしておく必要があります。

③B検査では制限時間が5分!

“TMT-B”では制限時間が最大5分とされています。
制限時間内でゴール間で達成できなかった場合は「評価不能」と判断します。
もちろん作業療法士としては単純に「評価不能」で終わらせるのではなく、「なぜゴール達成ができなかったか?」を分析的に追求していく必要があります!

TMT検査適応外の例

またTMT検査を行うべきでない…いわゆる適応外の例についてですが…

①鉛筆を使用できない場合
②指示理解困難の失語症の場合
③半側空間無視の場合
…などがあげられます。
以下それぞれ詳細について説明します!

①鉛筆を使用できない場合

被験者が重度の運動障害で、鉛筆を把持し線を結ぶことができない場合はTMTの検査対象外とします。
ただし鉛筆の持ち方や使用方法については言及していない点から、自助具や補助道具を使用した上で鉛筆の使用が可能かどうかを試してみるのも作業療法士としては必要なアプローチといえます。
もちろん片麻痺のクライアントで利き手が麻痺手の場合でも、非利き手を使用し拙劣でも鉛筆を使用することができれば問題はありません。

②指示理解困難の失語症の場合

被験者が重度の失語症などの指示理解が困難な場合は適応外とします。
あくまで“指示理解困難”の場合ですから、ブローカ失語症といった言語理解に問題はない場合はTMTの適応対象になります。

③半側空間無視の場合

被験者が軽度でも半側空間無視を有している場合も、その点数結果に大きな影響を及ぼす場合があるので適応外とします。

TMTの平均値、カットオフ値について

“TMT-A”、“TMT-B”における検査結果における平均値、カットオフ値については以下の通りです。

TMT-Aの年齢別平均値

年齢別 平均時間 標準偏差
20歳代 66.9秒 15.4
30歳代 70.9秒 18.5
40歳代 87.2秒 27.9
50歳代 109.2秒 35.6
60歳代 157.6秒 65.8

TMT-Bの年齢別平均値

年齢別 平均時間 標準偏差
20歳代 83.9秒 23.7
30歳代 90.1秒 25.3
40歳代 121.2秒 48.6
50歳代 150.2秒 51.3
60歳代 216.2秒 84.7

TMTのカットオフ値について

TMT-A、TMT-Bそれぞれに対しての明確なカットオフ値を算出した文献や先行研究、論文は少ないのですが、上城らの研究によると認知機能状態を判別するためのTMT-Aのカットオフ値は117.5秒という結果がありますので、参考値とするとよいかもしれません。
参考論文:地域在住高齢者における注意機能と心身機能との関連性

リハビリの様々な検査のカットオフ値についての記事一覧はこちら

TMT検査と自動車運転のカットオフ値について

注意機能や遂行機能の検査として有用なTMT検査ですが、高次脳機能障害の方や高齢者の自動車運転再開、運転免許更新のための指標としての研究も行われています。
しかし現段階では自動車運転におけるTMT検査のカットオフ値は明確に指定はされていないものの、

・TMT-A:168秒
・TMT-B:244秒
…という暫定的なカットオフ値が算出されています。
参考論文:生活訓練利用者における実車運転評価と神経心理学的検査との関連性について

まとめ

今回、注意障害,遂行機能障害といった高次脳機能障害を評価する検査方法であるTMTの方法や注意点についてまとめてみました。
注意機能や遂行機能といった能力は、日常生活で様々な活動を行う上で必要不可欠な能力です。
TMTだけですべてを判断をつけることはできませんが、評価方法の一つとして作業療法士は身に着けておく必要があるでしょうね!!

作業療法士は語りたい!

さっきも少し触れたけど、
今後TMTは高齢者の自動車運転適性検査として使われていくだろうね!
高速道路を逆走した…なんて事故のニュース、結構聞きますからね。
高齢者の自動車運転の社会的な問題を考えると、
作業療法士が必要とされる場はもっと広がっていくのかもしれないね!

 

関連記事

  1. 抑うつを検査!BDI-Ⅱの方法と注意点、点数解釈とカットオフ値に…
  2. 老研式活動能力指標はもう古い?JST版活動能力指標について
  3. FAIによるIADL、APDL評価方法について!
  4. PULSES Profile(パルセス プロフィール)によるAD…
  5. 作業療法評価における重要な3つの手順について!
  6. CAT標準注意検査法の特徴とその目的、各検査の方法について!
  7. 脳卒中発症時の症状と、覚えておくべき“FAST”につ…
  8. 痛みの程度を評価!VASの検査方法と注意点について!

おすすめ記事

両立支援に当たっての5つの注意事項について! 今後の作業療法士にはもっとマネジメント能力が必要ではないでしょうか? 続ける力…『継続力』がOTにとって重要なんだと思うんです。 A10神経を活性化すると得られる5つのメリットとその方法について! TMT(トレイルメイキングテスト)のカットオフ値と平均値、方法や注意点について
Sponsored Link

OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
PAGE TOP