リハビリテーション評価

パーデュー・ペグボード・テスト(Purdue pegboard test)の方法と注意点、平均点数やカットオフ値について

 

手指の巧緻性や操作性を評価する検査でもパーデュー・ペグボード・テストはその方法がやや複雑かもしれません。
ただ、被験者の巧緻能力だけでなく、職業適性検査としても有用なため、作業療法士は覚えておく必要がある検査とも言えます。
そこで今回は『パーデュー・ペグボード・テスト(Purdue pegboard test)の方法と注意点、平均点数やカットオフ値』についてまとめてみました!

パーデュー・ペグボード・テストとは?



パーデュー・ペグボード・テストは、1948年にパーデュー大学工業心理学者であるジョセフ・ティフィン(Joseph Tiffin)博士によって開発された検査です。
開発目的としては、組み立て作業、パッキング、機械の操作や手作業のような生産工場の従業員の手先の器用さ…つまり巧緻性を評価するために開発されたテストのようです。
実際にこのテストは様々な産業現場で数千人の作業員に対して実験され標準化されたという背景もあります。

テストに使用する物品について


パーデュー・ペグボード・テストで使用する物品としては、

・ピン
・カラー
・ワッシャー
・ボード
ストップウォッチ
…などがあります。

テスト時の環境について

まずこのテストは、被験者が集中できるような環境で行います。
パーデューペグボードは被験者の真正面に設置し、皿の列が被験者から遠くなるような向きにします。
右端と左端の皿にはそれぞれ25個のピンを入れ、中央右側の皿には20個のカラー、中央左側の皿には40個のワッシャーを入れておきます。

注意点

パーデュー・ペグボード・テストを実施するにあたっての注意点としては、

①被験者のみならず、検査者もテスト方法をきちんと理解しておく必要があること
②利き手から始めること
③左右どちらかの上肢・手指機能に障害がある場合は、健側からはじめること
④各サブテストの前に検者は検査方法の説明とデモンストレーションを行うこと

テストの方法について


パーデュー・ペグボード・テストは4つのサブテストで構成されています。

a)右手(利き手)
b)左手(非利き手)
c)両手
d)アッセンブリー

教示方法について

テストの準備が整ったら、以下のような教示を行います。

『このテストは、あなたの手でどれだけ早く、正確に仕事ができるかを見るテストです。テストの各部分を始める前に、何を行なうかの指示があります。
それから、練習する機会が与えられます。何を行なうのか、正確に理解して下さい。』

a)右手(利き手)

『右側の皿から、右手でピンを1本つまみあげて、右側の最上段の穴からピンを入れていきます。
(デモに使用したピンは、そのままにしておくこと)
では、ここで、2、3 本練習して下さい。
テスト中にピンを落としたら、拾わずに皿から次のピンをつまんで、テストを続けて下さい。』

被験者の練習時にピンを入れる穴を間違えた場合は、正しく訂正することが必要です。

被検者が、3∼4本のピンを入れて手順が理解できた様子を確認したら、次の様に教示します。

『やめて、練習で使ったピンを元の右側の皿に戻して下さい。』

次に続けて、

『私が「始め」と言ったら、右側の列にできるだけ多くのピンを入れて下さい。
最上段の穴から始めます。
私が「止め」というまでは、出来る限り早く作業して下さい。』

その後、「始め」と言い、テストを開始します。
この際、ストップウォッチで正確に30秒計り、30秒経過したら『止め!』と言い、ペグを差す作業をストップさせます。

差し込んだピンの数を数えて、右手スコアを記録しますがピンはそのまま穴に残しておき、次の左手(非利き手)のテストに移ります。

b)左手(非利き手)

『左側の皿から、左手でピンを1本つまみ上げて、左側の最上段の穴からピンを入れていきます。
さて、ここで、2、3本練習して下さい。』

左手(非利き手)の練習時も、先ほどと同様に被験者がピンを入れる穴を間違えた場合は、正しい位置を訂正します。
被検者が、3∼4本のピンを入れて手順が理解しできたら次の様に教示します。

『やめて、練習で使ったピンを元の左側の皿に戻して下さい。』

次に続けて、

『私が「始め」と言ったら、左側の列にできるだけ多くのピンを入れて下さい。
最上段の穴から始めます。
私が「止め」と言うまでは、出来る限り早く作業して下さい。』

左手(非利き手)の場合も同じ様に「始め」と言ってから、30秒の時間を計ります。
30秒経過したら『止め!』と言いペグを差す作業をストップさせます。

差し込んだピンの数を数えて、左手スコアを記録します。
右手と左手のテストが完了したら、ピン全部を所定の皿へ戻します。

c)両手

『テストのこの部分では、同時に両手を使っても構いません。
右手で右側の皿からピンを1本つまみ上げ、同時に左手で左側の皿からピンを1本つまみ上げて両方の最上段の穴からピンを入れていきます。
(デモを行ないます。デモに使ったピンは元に戻します。)
ここで、2、3本練習して下さい。』

被験者が練習用のピンを3∼4組正しく、両方の最上段の穴から順番に差すことができたら、次の様に教示します。

『やめて、練習で使ったピンを元の皿に戻して下さい。』
次に続けて、
『私が「始め」と言ったら、両手でできるだけ多くのピンを並べて入れて下さい。
両側の最上段の穴から始めます。
私が「止め」と言うまで、できる限り早く作業して下さい。』

先に行った2つのサブテストのように、「始め」と言ってから、ストップウォッチで30秒時間を計ります。
30秒経過したら『止め!』と言い、差し込んだピンの組数を数えてスコアを記入します。

テストが完了したら、ピン全部を所定の皿へ戻します。

d)アセンブリー

このアセンブリーと呼ばれるサブテストはやや方法が複雑なので、検者自身がしっかりと方法を把握しておこないといけません。
端的に言えば、

①右手で右側の皿のピンを1本つまみ上げる
②右側の最上段の穴にピンを入れると同時に、左手でワッシャーを1つつまみ上げる
③左手でつまみあげたワッシャーを先ほど穴に入れたピンの上から落としている間に、右手でカラーを1つつまみ上げる
④右手でつまみ上げたカラーをピンの上から落としている間に、左手でもう1つのワッシャーをつまみあげてカラーの上から落とします。
この①~④の工程で1つのアセンブリー(ピン-ワッシャー-カラー-ワッシャー)を組み立てていき、1分間でできるだけ多くのアセンブリを完成させる…というサブテストになります。
教示と検者による手順のデモンストレーションは以下のとおりです。

『右手で右側の皿からピンを1本つまみ上げます。右側の最上段の穴にピンを入れながら、ワッシャーを左手で1つ、つまみ上げます。
ピンを入れたら、すぐに、ピンの上からワッシャーを落とします。ワッシャーをピンの上から落としている間に、右手でカラーを1つ、つまみ上げます。
カラーをピンの上から落としている間に、左手でもう1つワッシャーをつまみ上げ、カラーの上から落とします。これで最初のアセンブリーが完了します。
ピン、ワッシャー、カラー、ワッシャーの構成です。
最初のアセンブリーの最後のワッシャーを左手で入れている間に、右手でピンを1本つまみ上げて、2回目のアセンブリーを開始して下さい。
このピンを次の穴に入れ、左手でワッシャーを落とします。という様に続けて、2 回目のアセンブリーを終了します。
さあ、2、3回アセンブリーの練習をしましょう。』

注意点としては、このアセンブリでは被験者は常に両手が動いている状態である…ということです。
教示とデモンストレーションに加え、被験者に何度か練習をしてもらい、本試験前にこのことをしっかりと理解してもらわないといけません。
被験者がこのアセンブリのテスト方法を理解できたら、次の様に教示します。

『やめて、ピン・カラー・ワッシャーを所定の皿に戻して下さい。』

次に続けて、

『私が「始め」と言ったら、出来るだけ多くのアセンブリーを作って下さい。右側最上段の穴から始めて下さい。私が「止め」と言うまで、出来るだけ早く作業して下さい。』

このアセンブリのテストでは、「始め」と言ってから、ストップウォッチで1分間時間を計ります。
1分経過したら『止め!』と言い、アセンブリーのできたパーツの数を数えて、アセンブリースコアに記入します。

採点方法

採点方法については以下のとおりになります。

右手(利き手)

パーデューペグボードの右側の最上段から差し込んであるピンの数がスコアになります。

左手(非利き手)

パーデューペグボードの左側の最上段から差し込んであるピンの数がスコアになります。

両手

パーデューペグボードに差し込んだピンの組数がスコアになります。

右手+左手+両手

右手のスコア+左手のスコア+両手のスコアの合計になります。

アセンブリー

アセンブリーのできたパーツの数がアセンブリースコアになります。
1つのアセンブリーは“ピン-ワッシャー-カラー-ワッシャー”という4つのパーツで構成されますので、4点という採点になります。
例として、8つの完全なアセンブリーが完成したとしたら4×8=32となり、
もし、6つの完全なアセンブリーと、7つ目のアセンブリーを作ろうとしたけど最初のピンと最初のワッシャーのみで1分のタイムアップになってしまった場合は、4×6+2=26となります。

点数やカットオフ値について

ここでは、いくつかの職業と各サブテストの平均点とを一覧表として記しておきます。
カットオフ値については特に定められてはいないため、以下の一覧表を一つの参考値とするとよいかもしれませんね!

職業 右手 左手 両手 右+左+両手 アセンブリー
組み立て作業を行う男女(N-146) 17.86 16.60 14.38 48.81 43.58
一般工場作業を行う男女 17.15 16.01 13.79 46.76 39.30
製造作業を行う男女 17.94 16.81 14.10 48.85 40.67
電子製品の製造作業をする女性 18.47 16.77 14.53 49.84 43.76
時間単位で製造作業をする女性 18.02 16.81 14.34 49.14 38.08
時間単位で製造作業をする男性 16.45 16.31 13.37 46.11 36.89
メンテナンスサービスをする男性 15.49 15.25 12.31 43.04 38.71
ミシン操作を行う女性(3回の合計) 55.20 51.78 44.03 151.09 133.41

リハビリの様々な検査のカットオフ値についての記事一覧はこちら

まとめ

パーデュー・ペグボード・テストは被験者の手指の巧緻性を評価するだけでなく、実際に組み立てるという両手作業もスコアにして評価するので、
職業適性テストとしても有用な方法です。
作業療法士はクライアントの復職支援にも関わるので、単純な巧緻性の検査のみならず、こういった職業適性テストの要素を含んだ巧緻性検査も行う必要があると思います。

作業療法士は語りたい!

このパーデュー・ペグボード・テストでは特にアセンブリーのテストの方法の理解がしにくいから、
検者自身がきちんと理解していないといけないね。
両手を同時に動かしていないといけない…って検査はあまりないですしからね。

関連記事:一般的な上肢機能の検査の種類と、その用途についてまとめてみました!

Purdue pegboard examiner manual science research associated ・パーデュー・ペグボード・テストマニュアル

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
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