リハビリテーション評価

脳卒中上肢機能検査(MFT)の方法と注意点や解釈、カットオフ値について

 

上肢の機能検査の方法としてはSTEFがありますが、脳卒中に特化した上肢機能の検査方法としては“脳卒中上肢機能検査(MFT)”が代表的です。
今回はこの脳卒中上肢機能検査(MFT)の方法と注意点や解釈、カットオフ値についてまとめてみました!

脳卒中上肢機能検査(MFT)とは?


脳卒中上肢機能検査(Manual Function Test:MFT)とは、脳卒中の早期リハ、神経学的回復の時期における上肢の運動機能の経時的変化を測定・記録することを目的として開発された検査方法です。
ちなみにMFTは作業療法評価の推奨グレード分類でも推奨グレードAの検査方法です。

MFTの特徴について

MFTの特徴についてですが、この検査は、

・短期間の機能レベルの変化の把握が可能
・将来の機能レベルの予測が可能
…などがあげられます。

MFTの構成について

MFTは8種類のテストから上肢や手指動作を判定します。
各テストは難易度順に3~6項目のサブテストに分かれており、計32項目準備されています。

このテストは、大別すると

①腕の動作テスト
②手指の動作テスト
…の2つになります。

腕の動作テスト

腕の動作テストは、

・上肢の前方拳上(FE)
・上肢の側方拳上(LE)
・手掌を後頭部につける(PO)
・手掌を背部につける(PD)
…の4つで構成されており、肩関節や肩・肘・手関節の組み合わせ動作の範囲や保持能力を検査します。

手指の動作テスト

手指の動作テストは、

・握る(GR)
・つまむ(PI)
・立方体運び(CC)
・ペグボード(PP)
…の4つで構成されており、上肢と手指の基本動作や巧緻動作の遂行能力を検査します。

MFTの方法について

では、各テストの方法について説明します!

FEテスト:上肢の前方拳上

方法:肘を伸ばしたままで麻痺側の腕を前方へできるだけ高く上げます。
注意点:肘関節の屈曲は60°以内、肩関節外転は45°以内でテストを行ってください
判定基準
LE-1:肩関節外転運動が少しでも認められれば可とする
LE-2:肩関節外転角度が45°以上90°未満
LE-3肩関節外転角度が90°以上135°未満
LE-4:肩関節外転角度が135°以上

LEテスト:上肢の側方拳上

方法:肘を伸ばしたままで麻痺側の腕を側方へできるだけ高く上げます
注意点:肘関節屈曲は60°以内、肩関節屈曲は45°いないでテストを行います
判定基準
LE-1:肩関節外転運動を少しでも認めれば可とする
LE-2:肩関節外転角度が45°以上90°未満
LE-3:肩関節外転角度が90°以上135°未満
LE-4:肩関節外転角度が135°以上

POテスト:手掌を後頭部につける

方法:麻痺側の手掌を後頭部につけます。
注意点:上肢の可動域が低下していて、後頭部につけられないときは耳or口に触れるように指示します。
判定基準
PO-1:肩関節外転、肘関節屈曲のいずれかを認められれば可とする
PO-2:手が胸部(剣状突起)より高く上がって入れば可とする
PO-3:手の一部が後頭、側頭(耳を含む)、頭頂部(額を含む)のいずれかに触れたとき可とする
PO-4:MP関節が後頭結節を超えていること、手掌が後頭部にぴったりついていることの両方を満たしたとき可とする

PDテスト:手掌を背部につける

方法:麻痺側の手掌をしっかりと背中につけます。
注意点:体幹が前傾しても問題ありません
判定基準
PD-1:肩関節伸展運動を少しでも認められれば可とする
PD-2:手が体側を超えて指先、手背など手の一部が同側臀部に触れれば可とする
PD-3:指先、手背が脊柱に到達すれば可とする
PD-4:MP関節が脊柱を超えていること、手掌が脊柱にぴったりついていることの両方を満たしたとき可とす

GRテスト:握る(つかむ)

使用物品:ボール
方法:ボールをつかんで持ち上げ、放して落とします
注意点:必要であれば、被験者の腕を補強するように介助します
判定基準
GR-1:握りやすいように検者によって手掌に収められたボールを握り続け、手掌を下に向けて前腕を持ち上げられてもボールが落ちなければ可とする
GR-2:ボールを握っている状態からはなすことができたとき可とする
GR-3:机上に置かれたボールを自らつかみあげられたとき可とする

PIテスト:つまむ

使用物品:六角棒(鉛筆)、メタル(コイン)、針、ケース
方法:机上にある六角棒(鉛筆)、メタル(コイン)または針を拾い上げます
注意点:数回の練習を行い、やり方を理解してからテストしてください
判定基準
PI-1:鉛筆をつまみあげられたとき可とする(横つまみ、指腹つまみのいずれでもよい)
PI-2:コインをつまみあげられたとき可とする
PI-3:針をつまみあげられたとき可とする

CCテスト:立方体を運ぶ

使用物品:立方体、CCボード、タイマー
準備:机上の手前に立方体8個を一列に並べ、立方体の向こう側にCCボードを平行に置きます
方法:手前の立方体を患側の手でつかみ、CCボードの向こう側(10㎝以上の距離)まで運び、机上に置きます
注意点:数回の練習を行い、やり方を理解してからテストしてください。
判定基準
CC-1:1~2個
CC-2:3~4個
CC-3:5~6個
CC-4:7~8個

PPテスト:ペグボード

使用物品:ペグボード,ペグ,タイマー
準備:ボードについている皿にペグを入れておきます。
方法:皿からペグを1本ずつとり、縦方向に並んだ孔にボードの先端(遠方)から順に立てます。
注意点:数回の練習を行い、やり方を理解してからテストしてください。
時間制限:30秒
判定基準
PP-1:1~3本
PP-2:4~6本
PP-3:7~9本
PP-4:10~12本
PP-5:13~15本
PP-6:16本以上

脳卒中上肢機能検査(MFT)の注意点について

MFTを実施する際にはいくつかの注意点があります。

①被験者が注意散漫にならず、能力を十分に発揮できる環境下でテストを行うようにする
②腕の動作テストでは、被験者は背もたれがない椅子に座って、座面の高さを足が自然につく高さに調整する必要がある
③手指の動作テストでは、腕を机の上においたとき、肘関節が90°になるように椅子or机の高さを調整する必要がある
④教示は言葉と実演を併用し、被験者がしっかりと理解したうえで実施してください
⑤テストは難易度順に検査用紙に掲載しているため、用紙の順番通りに行います

脳卒中上肢機能検査(MFT)の点数、採点方法について

MFTでは各サブテストそれぞれ0or1で判定し、結果は32点満点を100として上肢機能スコア(manual function score:MFS)を算出します。

MFTのカットオフ値について

MFTにおけるカットオフ値というのは、実用手になるか?もしくは非実用手のままか?ということと言えます。
MFTの各テスト結果をMFSプロフィールに記載することで脳卒中患者120名のデータと比較検討できるので、その被験者が上肢機能でも主にどの運動を苦手としているか?が明確になります。
つまり、その低い点数の運動項目の機能を回復するような作業療法プログラムを設定していく必要があります。
曽根の2015年の研究発表によると、実用手を評価するMFTのカットオフ値は22/21点という報告があります。

リハビリの様々な検査のカットオフ値についての記事一覧はこちら

MFTと他の検査の相関性について

MFTとSTEFは優位な相関性がある
MFTと上田の上肢、手指のグレードと相関している。

MFTは麻痺側のみ?両側も?

基本的にMFTは両側の上肢それぞれ検査することが推奨されています。
その際、非麻痺側から検査を行います。

感覚障害が重度の場合はどうすればよいか?

麻痺側の随意性が低い場合、もしくは重度の感覚障害がある場合は、検者が被験者の手をとって運動方向をきちんと教示した後に検査を行います。

検査途中で被験者の痙性が高まってしまった場合は?

MFTの途中で被験者の上肢の痙性が高まってしまった場合は、検者が他動的に痙性が更新してしまった筋の伸長を行った後にテストを継続することが推奨されています。

まとめ

脳卒中のクライアントの上肢機能でも、MFTのようにどの機能を苦手とするのか?という点を明確にすることって非常に重要なことだと思います。
その麻痺側の上肢が実用手としての能力を取り戻せるのか?もしくは補助手としての役割に転換する必要があるのか?それとも廃用手の機能のままなのか?
早期からMFTによって検査をしどの程度まで回復するのかを予測することで、その後の作業療法プログラムの設定の参考にし、少しでも生活遂行の能力を再獲得することができるんだと思うんですよね!

作業療法士は語りたい!

MFTもSTEFも生活動作能力に大きな影響がある上肢機能を検査する方法としては非常に有用なものだから、
しっかりとその方法と解釈について知っておく必要があるね!
ただ点数を算出するだけでなく、どのサブテストで失点があるか…
どのように課題を遂行していたのか?という点もきちんと観察できるようにしないといけませんね!
 

おすすめ記事

ユニバーサルデザインの7原則とバリアフリーとの違いについて! 職業生活における運動不足がもたらす影響と、その解消方法について ストループ効果とストループテストの目的、やり方について 自分の臨床に迷ったら、先人・偉人による名言から振り返ったらいいと思うんよ。 音楽が心臓、脳、健康にもたらす7つの効果について!

関連記事

Sponsored Link

OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
PAGE TOP