働くことの意味を産業作業療法士の視点で考えてみました。

働くことの意味ってなんでしょうか?
実はこの意味を捉え違うだけで、非常に「働きにくさ」を招いてしまいます。
今回は働き方をリハビリする産業作業療法士の視点から、働くことの意味について総論的にまとめてみました!

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働くことの意味について



「働くこと」とはどのようなことでしょうか?
結論から言えば「働くこと」は以下の2つの視点からみることができます。
①社会的視点
②個人的視点
では、それぞれどのような視点になるのでしょうか?

①社会的視点

まずこの“社会的視点”における職業は、

社会の存続や発展に必要な活動を個人に分割して割り当てたもの、そせに継続的に十字することで賃金などの報酬が分配される活動
…とされています。
つまり「働くこと」を“生産・経済的な観点”から捉えたものと解釈できます。

②個人的視点

その一方、“個人的視点”における職業は、

収入を得る手段のみならず、自分の能力を発揮して様々な心理的な満足を得る源泉であり、働くことで社会に貢献し社会的連帯の実現を図る活動
…とされています。
つまり、「働くこと」を“自己実現という観点”から捉えたものと解釈できます。

どちらが大事?どちらも大事?

「働くこと」の意味をこの2つに大別したからと言って「どちらが大事か?」という優劣については、その個人の状況や価値観について変わってきます。
むしろ働くことを支援する作業療法として重要視しておくべきことは、「どちらも大事」という捉え方なんだと思います。
人生の質(QOL:Quality of Life)の観点からも、どちらかが極端に多かったり少なかったりしては破たんしてしまうため、適度なバランスが必要になってくると考えられます。

職業選択の条件について



ではそのQOLにもつながってくる「働くこと」ですが、どのような職業を選ぶのかによっても大きく変わってきます。
この職業選択は、米国のキャリア研究者、ドナルド・E・スーパー(Donald E Super)やジョーダン(Jordan, J.P)らによるって概念化されている「職業的発達段階」により影響されます。
職業リハ的な観点では、障害を持つことによってこの職業的発達に支障をきたすとされています。
理由としては、身体的、精神的な障害は大なり小なり自我概念の成長に影響を及ぼし、その自我概念の成長への影響は職業的発達にも影響を及ぼす…ということからになると解釈できます。
職業リハにおける作業療法士の就労支援というものは、この発達段階を考慮したうえでの支援でなければなりません。
もちろん未発達=支援の対象外ということではなく、支援を通して職業的発達を促していくというのも目標になってきます、

関連記事:職業的発達段階の課題それぞれに、産業作業療法士は関われるのでは?って話。

離職について



働くことの意味を見いだせなくなってしまうと、それは欲求不満となりその結果「離職」というライフイベントに繋がっていってしまいます。
心理学的観点からは離職は欲求不満が根底にあることで起こる行動…と解釈できます。
終身雇用の幻想が崩壊している現代では、昔のように離職、転職はそれほど珍しいものでもなくなったのでしょうが、障害者の場合は、離職した後の復職はまだまだ困難であるためできる限り不必要な離職は避けるべきでしょう。
その対策としても、離職行動の顕在化過程と諸要因を知り、対象者の職業継続の支援を行うことも、働くことを支援する作業療法士…“産業作業療法士”にとっては必要なことと言えます。

職業と疲労について



働くことはエネルギーを使うことですし、程度に違いはあれど「疲労」を伴う活動であることには違いありません。
この疲労の定義は様々ですが、働くことにおける疲労については、精神、身体諸能力の低下…と考えられます。

労働における疲労度については『労働における疲労に関する各要因と評価方法についてまとめてみました。』を参照

疲労と飽きは同じ?



疲労という現象に近いものとして飽き(精神的飽和)があげられます。
これは同義的な使い方をされてもいますが、実際のところは以下のような違いがあります。
疲労:諸能力の低下
精神的飽和:持続意思の低下
この本質的な違いを捉え違うと、支援対象の課題を見間違えてしまう可能性が高くなってしまいます。

働くことを支援する際、その対象が障害者であろうが、「働きにくさ」を感じている人であろうが精神面、身体能力面の評価は必要です。
しかしこの2つのみではやはり不十分であり、就労の継続、定着を支援する際には就労によってもたらされる疲労と疲労回復の視点を持つことが重要になってきます。
つまり対象者の精神的、身体的疲労に対する耐性や回復度と、その職務や勤務体制との調和がとれていなければ、いずれ精神的、身体的な破たんを招き「過労」という現象につながっていきます。
これを避けるためにも、疲労に関連する要因について、産業作業療法士としておさえておく必要があります。

ちなみに精神的飽和の対策としては「継続力」を高める必要があります。

職業を支える条件



仕事をする…職業生活を過ごすためには職業人としての役割を果たすのに必要な心理・行動的な条件、つまり「職業の準備性」が必用です。
この「職業の準備性」は障害者の就労を支援する職業リハにおける作業療法士にとって非常に課題的なものではありますが、「働きにくさ」を支援する立ち位置にいる産業作業療法の分野にとっても重要視すべき課題です。

ワークパーソナリティについて


この職業人としての心理・行動的な全体をまとめて「ワークパーソナリティ:職業個性」と呼ばれています。
このワークパーソナリティは階層的な構造として考えられています。
地域での生活を過ごすために必要な基礎能力を土台にし、その上に働くためにも必要な基礎的な能力、最後にある特定の職務を行うための能力(専門性など)が階層的になっている捉え方です。

まとめ

今回は働くことを支援する産業作業療法としての観点で仕事や働くことの意味について総論的にまとめてみました。
障害の有無に関わらず多くの人が様々な理由で働きにくさを感じている昨今は、働くことの意味を前述した社会的視点のみで捉えてしまっているからなんだと思うんです。
「仕事=生活の為」という誤った方程式を見直すことで、少しずつでも働き方のリハビリを進めていくことができると思います。
そのために働くことを支援する作業療法…産業作業療法は非常に社会の役に立つと思うんです。

産業作業療法士は語りたい!

よく「働いたら負け」って一部の方が言ってるけど、あの「働く」の定義って結構狭いんだと思うんだよね。
俗語で言う「社畜」としての働き方を言っていますからね。
働くことを生活の為…つまり社会的視点でしか見ていないと「働いたら負け」って結論に至っちゃう。
働くことに自己実現を加える事でもっと「道楽」的に働くことができるはずなんだよね。
それについては糸井重里さんも「仕事をするように遊び、遊ぶように仕事をする」って言っていましたからね!
結局、その仕事を自分でコントロールできるかどうか?って部分に繋がっていくんだと思うんだけどね!
これからはますます「働き方」の多様性が認められていく時代とも言えますね!
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