職業・産業リハ

両立支援において、労働者・医療・職場それぞれが抱える課題について!

 

両立支援…とはいえ、クライアントが関わる環境それぞれ分野が異なることから、必要な情報や知識を共有化しにくいことが課題としてあげられます。
もちろんその橋渡し役になることが両立支援コーディネーターには必要なのですけど…。
そこで今回は、両立支援においてそれぞれの環境でどのような課題が顕在化してくるのかについて考えてみました。

両立支援の現場の構図



両立支援においては主に、クライアントにあたる“労働者(社員)”、主治医や産業医といった“医療”、そして雇用主である企業といった“事業者”の3者間で情報や支援内容などがやりとりされます。
つまり両立支援コーディネーターはこの3者に関わることになります。
その際、“労働者”、“医療”、“事業者”それぞれがどのような基準で両立支援のために動いていくのか、判断や診断基準が必要になってきます。
それぞれの連携や情報共有の際の基準における課題について、両立支援の流れをベースに考えてみました!

労働者自身の課題

まずクライアントである労働者自身の両立支援に向けての課題ですが、以下のような項目があげられます。

①両立支援対象になる疾病の診断基準が曖昧
②病気になったら治療に専念するため仕事を辞めるケースが多い
③自分の職場のどこに相談したらよいのかわからない
④経済的支援といった社会制度や様々な手続きが、当事者及び家族のみでは困難

①両立支援対象になる疾病の診断基準が曖昧



がんや脳卒中といった「今まさに日常生活(もしくは生命)に支障をきたす重篤な疾病」の場合だったら分かりやすいのですが、糖尿病やメンタルヘルスの場合は即時的に職業生活へ影響を及ぼすかどうかは曖昧だったりします。
どの程度までなら自身の健康管理で対応し、どの程度からが両立支援の対象になるのか…という客観的な基準が必要と言えます。

関連記事:両立支援コーディネーターが関わる3つの対象者について

②病気になったら治療に専念するため仕事を辞めるケースが多い



病気になり長期入院が必要…となった場合、治療に専念するためという理由で務めていた職場を辞めてから治療生活に入られる方が結構多いようです。
雇用先である事業所の病休、有給の利用といった制度がどの程度適用になるのか…を知ることだけでも治療のための「退職」という選択肢を取らずに済む場合があります。
治療生活のために経済的な困窮を招かないためにも、制度についての情報を知る必要があります。

③自分の職場のどこに相談したらよいのかわからない



大企業なら産業医が常駐しているでしょうが、日本の全企業数のうち99.7%が中小企業であり、実質日本の従業員の約7割にあたります。
つまり多くの労働者は企業内の産業医をはじめとした産業医療活動に関わる機会が極端に少ないということになります。
そうなると直属の上司や人事労務管理者に自身の疾病について伝えるという選択肢程度になってしまいます。

④経済的支援といった社会制度や様々な手続きが、当事者及び家族のみでは困難



前述した病休や有給制度を利用や短時間勤務、テレワークといった勤務形態の変更をしたとしても、健康な時に獲得していた給与からは大幅に減額するケースが多いようです。
本人及び家族の経済的な生活支援をどうするか?も課題になってきます。
国や行政の制度はもちろん、民間医療保険といったものを駆使して、治療生活と職業生活の両立を図る必要があります。

医療機関の課題

主治医がいる医療機関によるクライアント(患者)の両立支援に向けての課題については、以下のような項目があげられます。

①疾病の診断はできるけど、職場の作業内容やどのような配慮をすべきなのかわからない
②両立支援において利用できる社会制度についても知識が少ないので情報提供できない

①作業内容や配慮内容についてわからない



医療機関はクライアントの疾病や障害についての診断、障害を有する場合ならその特性、医学的な観点からの予後予測については情報提供できるものの、各職場でどのような作業が適しているか、どのような負荷までなら大丈夫で、どういった配慮が必要なのかはわからないことがほとんどです。
作成する診断書においても作業内容や配慮内容についての表現が曖昧なことも多く、ほとんどはその事業所に判断をゆだねてしまっているのが現状かもしれません。
作業内容や配慮内容については、非常に多様性があるものですので基準を設ける事が難しいのでしょうけど、疾病や障害別、さらには産業別のベースとなる基準を設ける必要があるのかもしれません。

②社会制度についての情報提供ができない



医療機関において社会制度や資源についての情報提供ができるとしたら、社会福祉士(MSW)が一番にあげられます。
主治医は特にクライアントに対して診断書の作成のみで終わらず、その医療機関に在籍しているMSWにつなげ、利用できる社会制度についての情報提供をするよう依頼する…という連携も必要になってくると思います。
入院している病院のMSWに、退院直前で初めて会う…なんてケース、よくあるようです。

事業者の課題

企業や事業場といった事業者によるクライアント(社員)の両立支援に向けての課題については、以下のような項目があげられます。

①疾病や障害における特性や留意点がわからない
②雇用する側としては予後予測や再発の危険性について不安がある
③どのように安全配慮をすればよいのかわからない

①疾病や障害特性、留意点がわからない



雇用する側である企業や事業者は、なにより社員の疾病や障害についての知識が少ないため、「どう接していいのかわからない」というのが本音のようです。
机上での知識なら本やインターネットで調べてイメージが付いたとしても、そこにその社員自身の個性が加わるため、どのような点で留意すればいいのか手探りでしかわからない…というのがほとんどです。

②予後予測や再発の危険性への不安がある



「この状態はいつになったら良くなるのか?」「いつまでも治らないのか?」といった予後予測から、「職場で倒れたり具合を悪くすることはないのか」といった再発の危険性への不安は事業者としては非常に大きいようです。
この不安が大きいと、せっかくクライアントが復職しても、思うような働き方ができなくなってしまう場合が多くあります。

③どのように安全配慮をすればよいのかわからない



再発防止にもつながる項目でしょうけど、勤務時間(及び通勤、退勤時間)における安全配慮も、事業者の責任になるのでどう配慮すればよいのか情報がないとやりようがない…という状態になってしまいます。
大きな事故の予防のためにも、その疾病や障害、クライアントの特性をベースにした安全配慮のための情報提供をすることが必要になってきます。

まとめ

クライアントは医療側からすれば患者であり、職場からすれば従業員であるためそれぞれの役割や立場が異なってきます。
もちろん本人の地域生活を支える家庭内でも、求められるものが変わってきます。
それぞれの役割や立場に求められること、そして表面化する課題をしっかりと抽出して、3者間の“翻訳者”のような立ち位置になることが両立支援コーディネーターの役割なのかもしれません。

産業作業療法士は語りたい!

産業作業療法と両立支援を考えた場合、どのような支援方法が考えられますかね?
両立支援に関わるそれぞれの立場での問題点や課題解決方法を、作業療法的な視点から提供することかと思ってるよ。
それこそ作業分析的視点、環境整備、メンタルヘルスが主要な項目としてあげれそうですね!
あと民間医療保険や制度といった、どうしても作業療法士としては弱い分野においては、それに強い機関につなげるという働きかけも必要だろうから、
各制度においての“インデックス(目次)”程度の知識は産業作業療法士には必要かもしれないね!
働き方をリハビリする産業作業療法研究会の公式サイトはこちら

【参考文献】
・両立支援コーディネーター基礎研修資料

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
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