精神・心理学

音楽でリハビリ?音楽療法によって言語障害が回復したガブリエル・ギフォーズ氏の事例について!

 

作業療法の“作業”って非常に幅が広いと思うんです。
もちろん“音楽”だって作業のなかの一つになります。
そこで今回は音楽によって言語障害が回復したというリハビリテーションの症例を見つけたのでご紹介&考察してみます!

Sponsored Link

国会議員Gabrielle Giffords(ガブリエル・ギフォーズ)氏の事例

アメリカ合衆国の国会議員として活躍していたガブリエル・ギフォーズ氏は2011年にアリゾナ州ツーソンのショッピングモールで頭を銃で撃たれるという事件に巻き込まれました。
受傷した部位は左脳であり、一命はとりとめたものの、言語障害である失語症に悩まされるようになってしまったようです。

ガブリエル氏の失語症は“運動性失語症”



もともとスペイン語にも長けていたガブリエル氏だったが、言葉がスムーズにでてこない(運動性失語)、花を見ても「チキン」と頭で浮かんでいる言葉と口から出る言葉が違ってしまう症状(錯語)などに悩まされていました。
政治活動はもちろん、日常生活ですら送ることが困難になってしまい、非常に苦しんだようです。

音楽療法によって改善?

運動性失語という障害で苦しんでいたガブリエル氏ですが、ある日受けていたセラピーの中で歌を歌うよう促されるとスラスラと歌えることに気が付いたそうです。
そしてそれをきっかけに、“音楽療法”を進めていく中で、徐々に普通の会話もスムーズになるという驚くべき症状の改善がみられていったようです。

治療の様子の動画がこちら。



なぜ会話は難しいのに、歌うことはできたのか?



脳の中で言語をつかさどる部分っていうのは、本当に限られた部分なんです。
しかし、“歌を歌う”という作業の場合だと脳の一部分ではなく、非常に広い範囲を使って行われていることがわかっています。
今回のガブリエル氏の症例でも、損傷を受けていない脳の部分を使って言葉をメロディにのせて歌うことができる・・・ということになります。

リハビリテーション(特に脳などの中枢疾患)って完全に100%治す“治療”というよりは、脳の正常な部分を刺激して損傷を受けている部分をカバーするように“再教育”って意味の方が近いような気がします。

ガブリエル氏の担当音楽療法士から

ガブリエル氏の担当音楽療法士は、

「その道ではもう前に進めなくなったとしますでも、あなたはその道からいったん外れて、回り道をして行きたかったところにたどり着くことができるのです。」

と言っているのがまさにそうです。

言葉を司る脳の部位が損傷し、決して元の状態に戻らなくても、“回り道”という意味で他の脳の部位を使い、結果言語機能が回復していく…。
この“回り道”をすすむことを促していくことが、作業療法士が担う中枢疾患へのリハビリテーションの考え方なのかもしれませんね!

ちなみにガブリエル氏はこの後も奇跡的な回復を続けて、会話もかなりできるようになり、現在では銃犯罪撲滅の団体を立ち上げ活躍しているようです!

まとめ

今回の症例では、音楽という作業を使用し言語機能を回復に導いたという事例になりますが、これは作業療法でも同じことがいえます。
特に脳卒中といった中枢性の疾患の場合、いかに脳のネットワークを再編成させるかがカギになります。
この再編成に役立つのが、本人にとって興味深く、熱心に取り組める“作業”そのものと言えます。

作業療法士は語りたい!

思うにガブリエル氏の場合、ただひたすら言語機能訓練ばかりを行っていたら、
このような結果にはならなかったかもしれないよね!
あくまで推測ですけど、「言葉は離せないけど、歌なら“できる”」っていう一種の成功体験が、
脳のネットワーク再編成のためには非常に必要なことなのかもしれませんね!
「あ、私できるんだ!」っていういい意味での“勘違い”って大事なのかもしれないね!

参照サイト
The Kenny Rogers Effect: Music Helps Stroke Victims
USA TODAY
Blessed with Twins

関連記事

  1. アドラー心理学は相手の性格の傾向を知る一つのツールになるって話!…
  2. 軽度認知障害をスクリーニング!MoCAの評価方法とカットオフ値に…
  3. 意思の強さは関係ない?行動するには条件設定が必要!
  4. 1日1分で効果あり?認知症予防のための「健脳」習慣について!
  5. 意欲を引きだし行動につなげる…行動のABCモデルはOTに必要な視…
  6. 大人の発達障害も?自閉症の人に言ってはいけない12のこと
  7. 職場がギスギスして働きにくいのは、偏ったものの見方、考え方の“私…
  8. 作業療法士が覚えておきたいクライアントの生活習慣を変えるためのコ…

おすすめ記事

レーブン色彩マトリックス検査の目的や理由、教示方法と平均点、カットオフ値について 自分の臨床に迷ったら、先人・偉人による名言から振り返ったらいいと思うんよ。 1日1分で効果あり?認知症予防のための「健脳」習慣について! 就労支援が成立するために必要な4つ前提条件について! VRでリハビリを行うと、脳のどの領域が活性化されるのでしょうか?
Sponsored Link

OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
PAGE TOP