FAB(前頭葉機能検査)の方法と解釈、カットオフ値についてまとめてみた!

前頭葉の検査である“FAB”は、作業療法でよく使用される評価の一つですが、その方法は結構わかりにくかったりします。
解釈についてもコツがいりますので、前頭前野の評価ツールとしてうまく使えないって作業療法士も多いようです。
今回はこの“FAB”について、検査方法や解釈、カットオフ値などについてまとめてみました!

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FABについて


FAB は“Frontal Assessment Battery at bedside”と呼ばれる前頭前野の機能をみる検査であり、臨床で広く使用されている検査の一つです。
広く使用されている理由としては、短い検査時間で可能なこと、特別な用具を用いないで施行できることなどがあげられます。
ただし日本では標準化されていない点からも、評価の基準がはっきりしていないのが現状のようです。

対象

FABは前頭葉機能のスクリーニング検査として有効なことから、脳血管障害のクライアントに実施する場合が多いようです。
また、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、前頭側頭型認知症などの神経変性疾患、また最近では高齢者の自動車運転評価の一つとしても行われているようです。

各質問項目について

それでは各質問項目について説明します!

1.概念化課題(類似性)

Q.これから言う2つのものは、どこが似ているか考えて答えてください。

①「バナナ」と「みかん」は? -(果物、食べ物)
②「テーブル」と「椅子」は? -(家具)
③「チューリップ」と「バラ」と「雛菊」は? -(花、植物)

方法:この課題では「バナナとみかんはどこが似ていますか?」というような質問をします。この質問に対して口頭で答えてもらいます。

対象領域:答えるには言語による“概念操作”の能力を必要とするので、左半球の前頭前野の活動…つまり言語概念の操作(右利きの人の場合)を反映すると考えられます。

注意点:被験者が左利きの人の場合は、単純に右半球の活動を反映しているということにはならないので注意が必要です。

2.知的柔軟性課題(語の流暢性)

Q.“かきくけこ”の“か”から始まる言葉をできるだけたくさんあげてください。ただし、人の名前や地名などはいけません
方法:「か」からはじまる言葉をできるだけたくさんあげてください」と質問し、口頭で答えてもらいます。

対象領域:自発的に言葉を作り出す領域…左半球の前頭前野(右利きの人の場合)の活動を反映すると考えられます。

注意点:同じ単語の繰り返しや変形、人の名前や固有名詞は正当としません。制限時間は60秒で10語以上答えられたら終了です。

3.行動プログラム課題(運動プログラミング)

指示①:「わたしがすることをよく見ていてください。」
検者自身の右手を、手のひらを上にして机の上に置き、
(1)自分の左手をグーにして、自分の右手のひらをたたく
(2)次にその左手をパーにして(手刀で)、自分の右手のひらをたたく、
(3)最後に、左手をパーのままで、手のひら同士を合わせる(拍手)
以上の連続動作を、3回くり返す。

指示②:「次にあなたの番です。同じことをやってみましょう。まず、私と一緒にやります。次に一人でやっていただきますのでよろしくお願いします。それでは一緒にやってみましょう」
被験者と一緒に(1)~(3)の連続動作を3回繰り返す。

指示③「今度はひとりでやってみましょう。」

方法:自分の左手の掌を右手でグー・手刀・掌で順番にたたいてもらいます。“hand-fist-palm”と呼ばれています。

対象領域:前頭葉の中でも高次運動野の機能(運動プログラミング)を見るものです。

注意点:指示②が理解できない場合でも、そのまま指示③に進みます。指示③の段階で、途中で間違えた場合はそこで終了とします。

4.反応の選択課題(葛藤指示)

指示①:「私がいちど指でポンとたたいたら、続けて自分の指で2回ポンポンとたたいてください。」
検者がポン・ポン・ポン(1-1-1)とタップしたら、、1回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(2-2-2)。 これを3回くり返します

指示②:「こんどは、私が 2 回指でポンポンとたたいたら、自分の指で1回ポンとたたいてください。」
検者がポンポン・ポンポン・ポンポン(2-2-2)と指をタップし、1回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(1-1-1)。これを3回くり返します。

指示③:「では、今の約束を使って、私に続いて、自分の指でたたいてください。」
1-1-2-1-2-2-2-1-1-2(合計10回の連続動作)

順番で指をタップし、1 回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(2-2-1-2-1-1-1-2-2-1)。

対象領域:ルールに従った運動の発現は前頭葉の高次運動野と前頭前野内側面、どのように指をたたいたのかの短期記憶も必要になりますから前頭前野の機能全般を見ていると考えられます。

注意点:途中で間違えてもやり直させず、最後まで課題を終わらせます。

5.GO/NO-GO課題(抑制課題)

指示① :「私が1回指でポンとたたいたら、同じように1回ポンと自分の指でたたいてください。」
ポン・ポン・ポン(1-1-1)とタップし、1回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(1-1-1)。これを3回くり返します。

指示②: 「私が2回指でポンポンとたたいたら、自分の指は動かさないでください」
ポンポン・ポンポン・ポンポン(2-2-2)と指をタップし、これを3回くり返します。
この場合被験者は何もタップせずにいることが正解になります。

指示③:「では今の約束を使って、私に続いてやってみましょう」
1-1-2-1-2-2-2-1-1-2(合計10回の連続動作)

の順番で指をタップし、1回ごとに被験者に続けて指をタップさせます(1-1-0-1-0-0-0-1-1-0)。

方法:指を1回ポンとたたいたときは同じように1回、2回ポンポンとたたいた時にはたたかないというルールを設けます。

対象領域:反応の選択課題で必要となる脳の領域のほかに、行動(指運動)を抑制する両側半球の前頭前野の機能(行動抑制)を見ることになります。

注意点:途中で間違えてもやり直させず、最後まで課題を終わらせます。

6.把握行動課題

指示:「私の手を握らないでください」と言って以下の動作をします
①検者は被験者の正面に座ります。
②被験者の手のひらを上に向けて、両手を机の上にのせます(片麻痺の場合は片側で構いません)。
③検者は、何も言わずに被験者の目を見て、自分の両手を被験者の手のそばによせ、手のひらを合わせるようにそっとつけます。
④手を握らないでじっとしていられるか数秒間観察します。
対象領域:行動の抑制機能を検査する課題であるため、両側半球の前頭前野の機能を反映するものと考えられます。

注意点:もし被験者が検者の手を握ったら「私の手を握らないでください」ともう一度指示してから同じ動作を繰り返します。

平均値とカットオフ値

平均値

疾患別の平均値は、以下の通りになっています([ ]内はSD)。

疾患 平均点
健康群 17.3[0.8]
PD(パーキンソン病)群 15.9[3.8]
MSA(他系統萎縮症)群 13.5[4.0]
CBD(皮質基底核変性症)群 11.0[3.7]
AD(アルツハイマー型認知症) 12.6[3.7]
PSP(進行性核上性麻痺) 8.5[3.4]
FTD(前頭葉型認知症) 7.7[4.2] 
15点以下であれば認知機能の低下が疑われ、
10点以下になると前頭葉型認知症の可能性が非常に高くなるとみていいかもしれないです!

また、年齢別での平均点は以下の通りになります。

年齢別 平均点
20歳代 16.7±0.8
30歳代 17.0±0.8
40歳代 16.1±1.0
50歳代 15.3±1.4
60歳代 14.6±0.9
70歳代 14.4±1.3
80歳代 14.7±1.3

FABのカットオフ値について

FABの明確なカットオフ値は定められていないようですが、11/12との意見もあるようです。
*合計点数18点満点

まとめ

FABはその詳細についての文献がなかなかみつからないこともあり、方法や解釈に多少ばらつきがあるように感じます。
しかし、短い検査時間、特別な用具を用いず手軽に導入できる検査方法ということ、社会的な問題になっている高齢者の自動車運転の評価に使われることからも、
今後FABの方法やデータは重要になってくると考えられます。

作業療法士は語りたい!

FABでの検査対象領域でもある前頭前野って
社会生活を送る上では重要な領域ですよね!
俗にいう「空気が読めない(KY)」ってのも前頭前野の働きが関与しているからね!
大人の発達障害、って最近注目されてもいますからね・・・。

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