職業リハビリ

脳卒中後の職業復帰に結びつくクライテリア(尺度・基準)って結局なんなのさ?

脳卒中を発症した後でも職業復帰につながるケースと、そうでないケースはどこに違いがあるのでしょうか?
今回はそのクライテリア(尺度・基準)について、クライアント本人と環境の2方向から考えてみます!

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脳卒中後の職業復帰に必要な要素について



Melamedらの論文を参考にすると、以下の4つがあげられます。
①ADL遂行能力が高い
②疲労なしに少なくとも300mの距離を歩行できる
③作業の質を低下させないで、15秒以上の精神的負荷を維持できる
④障害の受容ができている

これらの4つを、職業復帰に結びつく総合的なクライテリア(尺度・基準)として示しています。
以下にそれぞれ、詳しくみていきます。

①ADL遂行能力が高い



このADL遂行能力を一つのクライテリアとする場合ですが、基本的な動作、活動が行えるかどうかは雇用する企業、事業所にとっても一つの基準として捉えられる傾向にあると思います。
自分の身の回りのことが一通り自立レベルになることで、初めて「就労」できる…という考え方が一般的ということとも言えます。
障害を持つ人への就労支援を勉強していき様々な成功事例に触れていくと、代替手段や環境調整によってカバーできるとも考えられますが…やはりまだまだそこまで到達していないのでしょうね。

ちなみに本記事執筆の段階ではカットオフ値といった数値的な基準について言及している論文は見つかりませんでした。
見つけ次第追記していきたいと思います。

②疲労なしに少なくとも300mの距離を歩行できる



“歩行”という点で移動手段が限定されているのはやや疑問ではありますが、確かに移動手段が歩行で可能ならなお復職には有利…という判断で問題ないのかと。
300m疲労なしに歩くことができる…という点からも、職場復帰するためにはある程度の耐久性も必要ということでしょうね。

③作業の質を低下させないで、15秒以上の精神的負荷を維持できる



これを評価するためにはなかなか難しいなと思ってます。
何を持って“作業の質”を判断するのかにもよりますし、どのような精神的負荷なのかも曖昧です。
俯瞰的な視点で見れば、ある程度の精神的な抵抗力が必要…という解釈でいいのかもしれません。

評価方法としては…単純作業においての脳波計測などで客観的、数値的に評価するのがいいかもしれませんね。

④障害の受容ができている



この障害の受容というのは、復職をし、職業生活を送る上で「自身の特性」を客観的に知ることと言えます。
自身の障害による弱みをしっかりと把握することで、就労するうえでのリスクヘッジに繋がっていきます。






以上の4点が脳卒中後の職業復帰に必要な4つのクライテリアと言われているものですが、職業復帰し継続していくためには本人だけの力では限界があります。
脳卒中後の復職、職業生活を成功させるためには、環境因子への配慮も必要です。

脳卒中後の復職を成功に至らせる環境要因

様々な論文でも言及されていますが、脳卒中後の復職、職場復帰を成功させるための環境要因としては以下の4つになります。

①職業的な方向性をもったリハビリテーションの提供
②雇用主の柔軟性
③社会保障
④家族や介護者からのサポート

①職業的な方向性をもったリハビリテーションの提供



復職や就労支援といった職業リハに関わる人ほど、「早期からの職場復帰を意識した介入」の必要性を感じています。
これは急性期、回復期の病院での作業療法場面でも同じことです。

「まだ歩けないうちから職場復帰のことを考えても仕方がない」
「ADLが自立してから、ゆっくり仕事のことを考えましょう」

では正直言って遅すぎます。
これはあらゆる研究でも言われています。

精神疾患の方を対象とした復職支援プログラムである“IPS”で謳われている「Train-Placeアプローチ」よりも「Place-Trainアプローチ」が復職支援の成功につなぎやすいという事実は、
脳卒中だけでなく様々な障害を持つ人への復職支援にも当てはめることができるはずです。

少なくても、クライアントの目標が復職であるなら、早期から復職をイメージしたトップダウンアプローチによる作業療法支援を行うべきだと思います!

②雇用主の柔軟性



とは言っても、復職はクライアントや支援者だけで成り立つものではありません。
受け入れる雇用主によって左右されることも事実と言えます。

この雇用主の柔軟性についてですが、どのような雇用形態を取るか?ということになります。
一般的な9:00~17:00のフルタイム勤務ではなく、パートタイムなら可能なのか?それとも業務の一部を任せることで可能なのか?
もちろんこれは雇用主の経営的な損害を受けない範囲での配慮を考えないといけませんので“両者の折衷案”の部分が理想なのかもしれません。

③社会保障



この場合の社会保障は、雇用主への助成といった社会保障になるんでしょうかね?
前述したように、障害を持ったクライアントを企業が雇用することにおいては、なにかしらの「メリット」がないといけません。
それは企業の社会貢献的な意味合いとしてや、国から受給される助成金もあるでしょうが、やはり障害者が働くことでの企業経営への貢献できるというメリットを見出さないといけなくなります。
法律で決められた義務である障害者雇用を、法律に関係なく積極的に障害者を雇用することで生まれるメリットを見出していくことも、広義の意味では作業療法士の業務と筆者は考えています。

④家族や介護者からのサポート



復職や職業生活への理解だけでなく、生活面、精神面でのサポートも必要です。
これは長い職業生活において必要不可欠なことであるため、作業療法士はこの人的環境へのサポートや支援も必要と言えます。

まとめ

今回は脳卒中後の方が復職をスムーズに行う為に必要なクライテリアについて、“本人”と“環境”という2つの方向からの論文を基礎にまとめてみました。
多少の私見も入っていますが、復職という社会参加に至るには本人・環境の“どちらか”ではなく“どちらも”支援が必要と言えます。
その為には作業療法士が持つ知識や技術を使うこと、病院や医療職に限らず他職種を巻き込んで支援していく体制を作っていくことが必要と言えるのではないでしょうか?

作業療法士は語りたい!

今回のテーマの“クライテリア”についてだけど、
数値的な基準がまだはっきりわかっていないから、これは今後の研究テーマかもしれないね!
定量化できることはできるだけしたほうがエビデンスを確立しやすくなりますからね!
ただあくまでも作業療法は数値だけを基準で見てはいけないってことを忘れないようにしないとね!
定性的に見る視点に重きを置いたうえで、定量化を試みる…ってイメージが重要でしょうね!

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【参考論文】
脳卒中発症後の職場復帰
両立支援事業 脳卒中後の復職

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
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