アクティビティ

塗り絵は片麻痺のリハビリ治療効果も期待できる?イラストレーター“門馬朝久”さんの事例

 

作業療法場面で使われているアクティビティのうち、「塗り絵」は比較的多くの病院や施設で使われているかと思います。
でも、「なぜ塗り絵という作業を提供したのか?」ってなると、結構曖昧だったりしませんか?
今回ご紹介する脳卒中による片麻痺だった“門馬朝久”さんの事例から、その人にとってリハビリとしての治療効果が高い作業を選ぶ大切さを学ぶことができました!

作業療法での『大人の塗り絵』について



最近ブームにもなっている『大人の塗り絵』はその細かい作業から脳の活性化を促し、“認知症予防”を目的としたアクティビティとして活用されていることが多い印象を受けます。
また、医療・介護領域以外でも手軽に“瞑想”に近い効果を得られるため、高齢者のリハビリ目的ではなく、一般の方も普段から大人の塗り絵を行っていることも多いようです。


大人の塗りは片麻痺の治療効果としても有効?




『大人の塗り絵』シリーズを20冊以上出版している風景画・イラストレーターである門馬朝久さんは、5年前に『大人の塗り絵 九州の風景編』を準備中に脳出血を発症、右片麻痺の障害を有してしまったようです。
その段階では絵を諦めてしまうことも考えたようですが、

「ふだん自分は原画を描いているけれど、塗るほうもやってみよう」

と、リハビリ目的で塗り絵を始めたそうです。

麻痺側上肢での塗り絵の実施




その時の塗り絵によるリハビリは、非麻痺側である左上肢ではなく、麻痺側である右上肢に色鉛筆を握らせ、左手を添えて塗る方法だったようです。

この本が出来上がるまで半年もかかってしまいました。実はもう少しで完成する直前、脳出血で倒れてしまったのです入院した直後は右半身不随になり後は左手しか望みはないと思われたのですが、リハビリで塗り絵を続けていると右手が徐々に動く様になりました。左手を添えながら何とか筆を持てるようになり、ようやく残りの絵も完成しました。
引用:門馬朝久公式サイト

その後麻痺側上肢である右手の機能が回復していき、いまでは片麻痺の障害を感じさせないような絵を描けるくらいまで回復し、また絵の仕事に復帰できたようです。

門馬朝久さんの塗り絵によるリハビリ効果を考える


画像引用:門馬朝久公式サイト

門間さんの脳卒中による片麻痺の程度がどのくらいだったかはインタビュー記事からはわかりませんでしたが、3か月の入院生活だったことからも比較的軽度の脳出血だったのかもしれません。

以下に門間さんが塗り絵によって麻痺側上肢の機能回復に至った要因を、作業療法の観点から考えてみます。

1.塗り絵は元々馴染みのあった作業で目的も明確であった

なによりも重要なのは「馴染みがあった作業」であること、「また絵の仕事に戻る!」という明確な目標があった点と言えます。
作業療法として上肢機能訓練にアクティビティを用いても、本人が意欲的になれず「やらされている作業」では決して大きな効果を期待することはできません。
ましてや中枢系の疾患の機能回復を促すためには、何よりも本人の意欲と、明確な目標が提供する作業に合致していないといけないのです。

2.門間さんの脳は“絵を描くのに適した脳”だった

その人にとって得意な作業、好きな作業はそれぞれ他多種多様です。
この違いって「脳にとってどんな感覚入力が心地よいのか?」によって変わってくると考えています。
門間さんの場合、絵を描く仕事は生活するためだけの「やらされている仕事」ではなく、非常に前向きで楽しい“クリエイティブな仕事”だったように感じます。
言い換えれば、絵を描く仕事自体、脳にとっては「報酬」だったことになります。
『大人の塗り絵がもたらす脳科学と心理的効果と、行う際の注意点について!』でも触れたように、大人の塗り絵がもたらす脳科学的な効果としては、視覚を司る後頭葉を始め、脳全般を活性化できます。
でもこの刺激が脳にとって「ワクワクする」ようなポジティブな刺激でなければ、大きな効果は期待できません。
門間さんにとっては、麻痺側の手で塗り絵を完成させる!という作業は、脳にとっては非常にクリエイティブな刺激だったのかもしれません!

3.入院中、塗り絵を教えることが門間さんの役割になった

インタビュー記事を読むと、3か月の入院中に塗り絵に興味を持った他の入院患者さんや看護師さんたちに教えることもしていたようです。
これは「役割」「社会参加」「自己評価」という点からも非常に有益なことであり、この「塗り絵を教える」という作業自体にも、本人への高い治療効果があったと考えられます。

まとめ

脳卒中による片麻痺を有する人へ提供する作業として、「馴染みがある作業」であることはもちろんですが、今回の門間さんのように明確な目標があり、意欲的に取り組むことができる作業、という観点も非常に重要だと考えられます。
結果として門間さんは再びイラストレーターとして復職、社会復帰できましたが、これは単に「麻痺が軽かったからできた!」ということだけではないと思います。
OTとして、クライアントの能力と、“脳力”を最大限に引き出せる作業活動を見つけ提供することも非常に重要と言えます!

作業療法士は語りたい!

“クリエイティブ”な作業って言い方を変えれば“創造的”な作業だから、
決して言われたことをただ受け身的に行っているような作業とはわけが違うんだよね!
同じ作業でもそれが「意欲的」か「受け身的」かによって、脳の活性に大きな差ができるんでしょうね!

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【参考記事】
門馬朝久公式サイト
「大人の塗り絵」シリーズ最新刊発売。著者は半身不随から「塗り絵」で復活!

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
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