半側空間無視の優秀な検査?BITの特徴と方法、カットオフ値について!

半側空間無視の評価の方法に、BITという検査方法があります。
この検査は実際の日常生活を模した行動検査も含むことから、非常に作業療法において有益な検査方法だと思っています。
そこで今回はこのBITの特徴や検査方法、カットオフ値といったことについてまとめてみました!

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BITの特徴について


クライアントの行動面に対する系統的検査をおろそかにしがちなものだったと問題視されていたようです。
現在はこのBITは半側空間無視の国際的な検査法として広く使用されています。

ちなみに『BIT行動性無視検査日本版』は日本の高齢者に適応しやすいように作成されているのも特徴です。

線分抹消試験ではだめなの?

半側空間無視の検査では、線分末梢試験や簡単な描画、模写化課題などが多く使用されていますので、「これだけでいいのでは?」と思われがちです。
たしかにこれらの検査では半側空間無視の症状があるかどうかを判断することはできます。
しかし、日常生活においてクライアントに怒り得る問題の予測には役立たせることができにくい検査法です。
そこでBITを使用することで、半側空間無視に関連した日常生活能力を客観的に評価することができOTの訓練に反映することができます。

BITは通常検査と行動検査で構成されている!

BITは大きく分けて『通常検査』と『行動検査』の二つで構成されています。
通常検査は線分末梢検査や文字末梢検査といった古典的な検査方法によって、行動検査は日常生活をデモンストレーションした場面設定をしたうえでの課題によって検査します、

検査の内容について

所要時間




BITを行うための所要時間としては概ね、
・通常検査:約20分
・BIT全体(行動検査含む):45分程度
この程度のまとまった時間が必要になります。

実施条件

BITによって半側空間無視の症状を検査するには様々な能力が必要となってきます。

・指示理解が可能
・視力障害がない(視野障害は問わない)
・注意障害がない
・記憶障害がない(HDS/MMSE15点以上)
このような条件が必要になります。

通常検査について

BITにおける通常検査は以下6種類になります。

線分抹消試験

長さが25mmで様々な方向を向いた短い線分(40本)が印刷された検査用紙を使用します。
この線分すべてに印をつける課題になります。
最初に検者が線分が印刷された範囲を示した後、方法の見本として中央にある4本の線分のうち、2本に印をつけて示します。
その後クライアントにすべての線分に印をつけるよう指示します。

線分の印刷範囲を示しちゃったら検査結果に影響しないんですか?
この程度の刺激では無視の症状は消えないから特に問題ないとされているね。

文字抹消試験

5行の文字列が印刷された検査用紙を使用します。
文字には「え」と「つ」を含む無意味な平仮名がランダムに並んでおり、そのなかから「え」と「つ」のみを選らんで印をつける課題になります。
先ほどの線分末梢試験同様、最初に文字列の範囲を示したあと、検者が実際に見本として用紙の下部の「え」と「つ」に印をつけて示します。
その後全ての「え」と「つ」に印をつけるように指示します。

星印抹消試験

大きい星が52個、無作為に配置された13文字と10単語の間に小さい星が56個印刷されている検査用紙を使用します。
この中から小さい星のみに印をつける課題になります。
最初に大きい星、小さい星を示し、見本として検者が実際に用紙中央の矢印の真上にある小さい星に印をつけて示します。
その後すべての小さい星に印をつけるよう指示します。

模写試験

星、立方体、花、3つの幾何学図形が描かれた検査用紙を使用します。
この図形をみながらそれぞれ模写してもらう課題になります。
左右のバランスなど正しく描かれているかどうかを評価し、採点します。

線分二等分試験

204mmの水平な線分3本が階段状に印刷された検査用紙を使用します。
この3本の線分の範囲を示した後、それぞれの真ん中に印をつけてもらうよう指示します。

描画試験

被験者に白紙を提示し、以下のものを描かせるよう指示します。

①数字が書いてある時計の文字場盤
②正面から見た、立っている人の絵
③蝶の絵

行動検査について

BITにおけ行動検査は以下の9種類になります。
各課題における見落とし数や誤反応数から換算表によって評価点を算定しますが、点数だけでなく見落としの偏りといった「どのような工程を辿って課題遂行したか?」という点も注意して観察する必要があります。

写真課題

3枚の大きなカラー写真を一枚ずつ提示します。内容は、

①皿に乗った食べ物
②洗面台と洗面用具
③様々なものが置いてある窓辺
この3枚の写真それぞれにみられる主要な物品を指さしてその名前を呼称するよう指示します。
ちなみに名前が分からない場合でも、その物を指でさせればOKとします!

電話課題

実際の電話機(プッシュ式orダイヤル式)を使用します。
数字(電話番号)がかかれた3枚のカードを1枚ずつ提示し、実際に電話をかけてもらうように指示します

メニュー課題

被験者には閉じたままのメニューを渡し、その後にメニューを開き、書いてある品物を全てもらさないように読み上げるよう指示します。
採点対象にはなりませんが、文字の偏の見落としなどによる“読み誤り”も同時に観察することも重要です。

音読課題

3段からなる短い記事を私、それを読むように指示します。
音読の課題になるため失語症があるクライアントにとっては実施困難になるので適応外として扱われます。

時計課題

この時計課題は3つの部分から構成されており、

①デジタル時計の写真に示された時刻を読ませる
②アナログ時計の文字盤に示された時計を読ませる
③検者が告げた時刻にアナログ時計の針を合させる

になります。

硬貨課題

まず被験者には台紙の上に決められた通りに配置し並べた硬貨(500円、100円、50円、10円、5円、1円)を示し、告げられた種類の硬貨を指さすように指示します。

書写課題

提示した住所と文章を書き写させる課題になります。
採点対象にはなりませんが、漢字や書字の誤りも観察しておく必要があります。

地図課題

与えられた平仮名の順番にしたがって地図の道をたどる課題になります。

トランプ課題

付属のトランプカードを採点用紙の配置模式図に従って並べる課題です。
この際は数字が合っていればよいのでスペード、クローバー、ハート、ダイヤといった札の種類は特に問題ありません。

BITの結果解釈について

以下にBITにおける半側空間無視の解釈について説明します。

通常検査のカットオフ値と最高点

課題 カットオフ値 最高点
線分末梢試験 34 36
文字末梢試験 34 40
星印末梢試験 51 54
模写試験 3 4
線分二等分試験 7 9
描画試験 2 3
合計点 131 146

行動検査のカットオフ値と最高点

課題 カットオフ値 最高点
写真課題 6 9
電話課題 7 9
メニュー課題 8 9
音読課題 8 9
時計課題 7 9
硬貨課題 8 9
書写課題 8 9
地図課題 8 9
トランプ課題 8 9
合計点 81 68

通常検査と行動検査の解釈の違いと応用の違い

BITは『通常検査』と『行動検査』の2種類で構成されていますが、その結果の解釈はそれぞれ異なります。
結論から言えば、

通常検査:半側空間無視の有無の診断
行動検査:日常的問題の予測、OTによるリハビリテーション課題選択の手がかりとして

このように通常検査、行動検査の結果解釈の違いを理解することで、クライアントの半側空間無視の判断から問題抽出、リハ訓練への応用、日常生活動作への汎化と一定のプロセスを踏むことができます。

点数以外の観察ポイント

BITはその点数のみならず、課題遂行の際の様子やパターンを観察することでどのような半側空間無視の症状でもそのクライアント特有の「個性」を抽出することができます。
例としては、
・検査用紙(検査カード)の右側or中央付近から課題を開始する→典型的な左空間無視の症状
・不規則な走査(用紙のは片側から急に反対側に跳躍する)
・注意を向けた空間内において標的に2回以上印をつけようとする
・描画や模写の課題で用紙の一端に寄って描かれている

といったことがあげられます。

通常検査でカットオフ以下なら行動検査を行うべき

通常検査と行動検査の目的や意味を考えると、BITによる半側空間無視の検査を行う場合は、まず通常検査を行い合計得点がカットオフ値である131点以下の場合には「半側空間無視の症状がある」と判断し、その後行動検査による精査を行う…という流れが理想と言えます。
もしくは、カットオフ値が131点を超えていても、通常検査の個々の課題得点で一つでもカットオフ値を下回るような場合も、日常生活を送る上で半側空間無視の症状が問題になると考えられるので行動検査による精査を行う必要があるとも言えます。

BITだけで判断することは危ういこと

BITは半側空間無視の検査方法ではありますが、もちろん他の高次脳機能障害によって点数が左右される場合もあります。
BITの点数がカットオフ値以下だからといって100%「半側空間無視」と判断することは危険と考えられます。
実際に通常検査の結果は正常範囲なのに、行動検査の結果がカットオフ値以下…というケースもあるようです。
この場合は半側空間無視だけではなくそれ以外の注意障害といった高次脳機能障害が混在している場合があるので、他の検査も行ってその症状と課題をしっかりと抽出する必要があります。

まとめ

半側空間無視を紙面上の検査だけでなく、実際の日常生活場面に模した行動検査も含めて標準化している点にBITが作業療法場面で非常に有用な検査方法であるといえます。
半側空間無視はADL動作遂行の問題になるだけでなく、歩行や移動動作の際の転倒リスクにもつながる重要な因子です。
半側空間無視の症状があるかどうか疑わしいクライアントには積極的にこのBITを用いて、症状と課題の抽出を行うことがOTにとって必要な介入とも言えますね!

作業療法士は語りたい!

BITのように通常検査→行動検査という流れは
作業療法が関わる様々な事象にも応用できると思うんだよね!
たしかに机上や紙面上のテストだけでなく、
実際の「行動」や「動作」における評価につなげていく、って発想は必要ですよね!
OTは頭でっかちになりがちだけど、
どんどん実際に行動してなんぼってことかもね!