アルツハイマーの方には馴染みの音楽が有効ということを事例を通して学んだ件

認知症の分類でも近年多くなっているというのが『アルツハイマー型認知症』と言われています。アルツハイマー型認知症の予防の方法や進行を遅らせる方法については様々ですが、音楽が効果的なことはあまり知られていないように感じます。
今回はアルツハイマー型認知症に対して音楽がもたらす効果について、自身の臨床経験にも触れてまとめてみました!

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アルツハイマー型認知症について



アルツハイマー型認知症は、脳にアミロイドβやタウと呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まり、神経細胞が壊れて死んでしまい減っていく為に、認知機能に障害が起こると考えれています。また徐々に脳全体も委縮していき身体の機能も失われていきます。
引用:認知症ねっと

認知症の中でも最も多い疾患がこのアルツハイマー型認知症になります。
性別によっても差があるようで、男性よりも女性の方が多いとのデータもあるようです。
近年、脳血管性認知症の患者数については大きな変化はないのですが、このアルツハイマー型認知症に至っては増加の傾向があるようです。

アルツハイマー型認知症に音楽が有効な理由




一般的には『音楽療法』としてアルツハイマー型認知症の方に音楽は利用されていることが多いようです。
その内容も、
・好きな音楽を聴く
・簡単な楽器を演奏する
・カラオケを行う
・歌に合わせて踊る
と、様々な方法がとられているようです!

音楽をどのように利用するか、方法や手段は様々ですが共通するのは「脳の活性化」という点と言えます。

どんな音楽でもよいわけではない理由



音楽をアルツハイマー型認知症の方に治療目的で利用する場合には、どんな音楽でもいいというわけではありません。
本人にとって馴染みのある曲…幼少の頃や若い青春時代に聴いていた、歌っていた、好きだった曲を利用することで、『回想法』と同じ効果を期待することができます。

とある認知症の方の実際のケースでの実例

ここでこのアルツハイマー型認知症と音楽について、筆者自身の臨床経験を少しお話したいと思います。

80代アルツハイマー女性との関わり

OTとして担当になった80代アルツハイマー型認知症の女性の方がいらっしゃいました。
認知機能としてはかなり重度で、HDS-RもMMSEも実施困難なレベル。
簡単な指示入りは可能ですが、多弁であり感情の起伏も激しいような方で病棟のスタッフも対応に困っていました。

頻繁に起こる転倒…

運動機能は特に問題ないため歩きだしが多く転倒も頻繁に起こっていました。
そのため病棟では常にスタッフの監視がついて、それに対して本人も不満を感じているようでもありました。

OTの介入も難しい…

OTの介入も、アクティビティは拒否、簡単な運動はできるが持続はできず…なかなか継続的な介入に難渋を示すようなケースでした。
「何かしたいこと、興味があることは?」と聞いても曖昧な返事ではっきり自分の意思を伝えるようなことがなく、「どのように介入したらよいか?」と悩むことが多くありました。

アクティビティとして歌を導入

ある日、ふとギターが得意な後輩OTを誘い、病院の屋上で一緒に『上を向いて歩こう』を歌うアクティビティを行いました。
特に何か明確な目的も確信もあるわけではなかったのですが、
「まあ、聴いてくれるだけでもなにか良い効果はあるだろう」
程度の気持ちで行ったアクティビティでした。

歌による驚くべき反応!

ところが、そのアルツハイマー型認知症の女性の方は一緒に(小さな声ですが)歌い始めました!
歌詞もところどころ間違えたり、少しテンポがずれたりもしましたが、初めての反応でした!

そして歌い終わるとゆっくり

「昔、一番上の兄がよく歌ってくれたんだ・・・」

と、懐かしむような表情で静かに語ってくれたのを今でも覚えています。

その後みるみる認知症の症状が改善した…となればよかったのですが、「以前よりは少し落ち着いたかな?」程度の変化のみでしたが、この経験は非常に貴重といえるものでした!

さらによい効果を狙うには?

この症例では、偶然こちらが選んだ曲とその方の持つエピソードが一致したためこのような反応を引き出せたのかもしれませんが、今後作業療法士が音楽をもっと治療的に利用するためには、その対象の方のエピソードにまで配慮して行うことで、もっとより良い効果を期待することができると思います。

この時は本当にいい意味でびっくりしたねー。
「お兄さんが歌ってくれた曲だった」ってエピソードが、なんだかグッときますね~

映画「パーソナル・ソング」のすゝめ



音楽によって認知症の方の症状改善を図ることができるという事例を集めたドキュメンタリー映画で、『パーソナル・ソング』というものがあります。
これは認知症に関わる作業療法士としては「勉強」の意味でも観ておく必要がある映画と言えます!

音楽を聴かせただけで、驚くほどの変化を見せるお年寄りたち。その姿を目の当たりにした監督マイケル・ロサト=ベネットは、3年の月日をかけて丁寧な取材を重ね、この作品を完成させた。彼が追うのは音楽療法プログラムを普及させるために奮闘を続けるダン・コーエン氏の姿、そして高齢者の尊厳がないがしろにされる現代アメリカの社会の現状だ。
介護施設で暮らすお年寄りは時として人間性が無視され、自分の存在意義を見失い、孤独の中に生きている。介護をする立場の人たちも明日への希望を見いだせずに心身を磨り減らす。そこには出口の見えない厳しい現実が立ちふさがる。しかし、薬ではなく、音楽のチカラで認知症患者の心の目を覚まし、人生の喜びと、人との繋がりと、活力とを取り戻すことは可能なのだ。
引用:「パーソナル・ソング」紹介文

まとめ

作業療法士がアルツハイマー型認知症の方に関わる際には「音楽」という作業活動の利用が非常に効果的と言えます。
その方の「馴染みの音楽」がなんなのか、何がその人の脳…というよりは「心」を揺さぶるのか。
それを見つけ、引き出していくのもOTの役割と言えるのではないでしょうか?

作業療法士は語りたい!

実際臨床や現場で音楽療法士の方が活躍するってのは
日本ではまだまだ少ないからね。
現時点でその役割の一端を担うのはOTってわけですね!
そういうこと!

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