AAC(拡大代替コミュニケーション)について知っておくべきいくつかのこと。

作業療法の現場では“失語症”や“構音障害”といったコミュニケーション障害と関わることも少なくありません。
治療的な介入も必要ですが、同時に代替手段の検討も必要となります。
ではその代替手段はどのようなものがあって、何を基準に選べばよいのでしょうか?
そんな時は“AAC”の発想を基礎に代替手段を考えることが、解決策かもしれません!

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“AAC”とは?



AACとは『Augmentative & Alternative Communication』 の略で、拡大(補助)代替コミュニケーションという意味になります。
話すこと・聞くこと・読むこと・書くことなどのコミュニケーションに障害のある人が、残存能力(言語・非言語問わず)とテクノロジーの活用によって、自分の意思を相手に伝える技法のことです。
AACの技法の種類には、大きく分けて“ノンテク”、“ローテク”、“ハイテク”の3つがあります。

“AAC”なんて略称でいうと何か特別な方法のようだけど、
普段僕たちが行っているコミュニケーション手段にもAACに当てはまるものがたくさんあるんだよ!
なるほど!

標準的なAACテクニックについて

クライアントが抱えている問題が、言語活動(Language)の問題なのか、話す活動(Speech)の問題なのか見極める必要があります。
また成人のように言葉を一度は獲得したケースなのかどうかによっても、そのAACテクニックの組み合わせが異なってきます。

以下の表は支援テクニックを「音声」と「言語」に分けて示したものです。
自分が生活を送っている中でも、自然と使っているものが多く含まれているのではないでしょうか?

音声(VOCAL) 非音声(NONVOCAL)
言語非補助系 話し言葉 手話・マカトンサイン・身振り記号
言語補助系 VOCA・AACエイド かな文字50音表・コミュニケーションボード(ブック)
非言語 泣き・笑い・音声・音量変化・抑揚の変化 指さし・身振り動作・表情

参考:福祉情報技術コーディネーターテキスト

AACの分類について

AACテクニックは大きく分けるとノンテク技法(非エイドコミュニケーション技法)、ローテクコミュニケーション技法、ハイテクコミュニケーション技法の3つになります。

ノンテク技法(非エイドコミュニケーション技法)

特定の物品や器具を使用しない方法です。
自分の身体を使ってコミュニケーションをする方法なので、“ボディランゲージ”と考えるとイメージしやすいと思います。

行動や反応について、周囲が意図を読み取る

手を叩いたり足をバタバタさせたり、人によっては大声を出したり…なんてのも実は立派なノンテク技法のひとつと言えます。
自分の意思を周囲の人に伝える、気づいてもらうという点では、一番基礎的なコミュニケーション手段なのかもしれません。

指さし、モノを渡す・示す、ハンドリング(クレーン)等


欲しいものを指さしたり、なにか物を渡したりすることも自分の意思を相手に伝えるコミュニケーション手段の一つです。
自閉症に多い相手の手を持って要求するハンドリング(クレーン)も同じと言えます。

身振り、ジェスチャー、サイン


「バイバイ」や「いただきます」といった観念運動と呼ばれる日常的な身振りから、頭を叩いて「帽子」というような身体部位と対応した身振りも当てはまります。
加えて、イギリスで考案された『マカトンサイン』や聴覚障害の人のための『手話』といった体系化された身振りもノンテク技法といえます。

残存音声

かなり不明瞭で一部しか発話できなくても、近くにいる人は発話の状況と合わせて理解することが可能です。

視線

ALSといった運動障害が重度の場合でも視線によって意図を伝えることは可能です。
もちろん視線のみでは意思の詳細までは伝わりにくいため他の方法と組み合わせるといった工夫が必要です。

YES/NO応答

瞬き1回なら『Yes』、瞬き2回なら『No』、瞬き3回なら『もう一度』というようなルールを決めることで可能ですが、この場合クローズ質問に限って有効なので注意が必要です。

空文字(空書)

空中で文字を書き意図を伝える手段のことを言います。
相手の掌に書く場合もあります。

ローテクコミュニケ―ション技法

文字盤




参考画像:対面式会話補助具「フィンガーボード」 ひらがな版

五十音表が書いてある文字盤で、指(もしくは棒など)で直接文字を選ぶことで意思を伝えます。

透明文字盤




参考画像:DLM コミュニケーションボード KK1250

対象者と支援者が透明文字盤を挟んで向かい合って使用します。
四肢運動機能障害の方に対して有効なローテクコミュニケーション技法と言えます。

コミュニケーションボード

記号やイラストなどを使用し普段使う会話例などに合わせてカスタマイズすることが可能です。

筆談ボード




参考画像:電子パッド 電子メモ帳 8.5インチ (黒)

特に大きな準備や訓練が必要ないので簡単に導入できる技法といえます。
最近では画像のような電子メモ帳も安価で手に入るので選択肢の幅が広がったと言えます。

ハイコミュニケ―ション技法

VOCA


VOCA(ヴォカ)とはVoice Output Communication Aidsの略称で、日本語では音声出力会話補助装置と呼ばれています。
自分の考えや意思を相手に伝えるためのツールになりますが、音声出力機能が備わっているのが特徴です。

コミュニケーションエイド “VOCA”の特徴と使い方、 種類についてまとめてみた!

意思伝達装置


意思伝達装置といっても様々な種類で、単体で使用可能なものから、パソコンにソフトとしてインストールして使用するものなどがあります。
ただ使用できるまではかなりの訓練が必要なことや、導入するためのコストが障壁となる場合があるので、導入する際には注意が必要です。
購入の場合は市区町村の補装具制度である『重度障害者用意思伝達装置』に該当するので、市区町村に申請することでコストの負担を軽減することもできます。
きちんと区別できる?日常生活用具給付制度と補装具支給制度の違いについて!

アプリ

スマートフォンやタブレット機器の普及に伴って、AACのアプリも多数リリースされています。
無料から有料のものまで様々ですが、何と言っても通信環境さえ整っていればすぐにダウンロードして使用することができること、複数のソフトを試すことができることなどがメリットとしてあげられます。

注意点

これらAACと言われる技法を用いる場合『受けて側の歩み寄りが必要』という注意点があります。
特にハイコミュニケーション技法を用いる際に多い傾向があるようですが、これらはあくまでも代替手段ということ。
その技法、機器の性能ひとつだけに頼りきりに、かつ妄信的にならずに相手の発する意図を「くみ取ろうとすること」が必要なのかと思います。

まとめ

コミュニケーションが取れない、ということがその人自身だけではなく家族や周囲の人にとっても非常に大きな問題となります。
本人のコミュニケーション能力や機能の向上をリハビリテーションによって改善するよう介入することも必要ですが、
『他者とのコミュニケーションを図る』という目的を果たすためには、AACといった代替手段も用いることが必要となってくると言えます。

作業療法士は語りたい!

“コミュニケーション”のカテゴリーはADLの一つにも枠組みされている点からも、
OTにとっては大事にしたい領域といえるね。
自分の意思を「伝えられない」ってのは、すごい怖いことですからね…。