自動車運転

障害を持つ人の自動車運転における4つの目的を考えてみた!

 

自動車運転という活動を、認知症や高次脳機能障害といった何かしらの障害によって行うことができなくなった場合、単純に「じゃあ公共交通機関を使えばいいのでは?」という発想にはならないのが特徴だと思います。
そこには“手段”なのか“目的”なのかという視点での捉えかたが必要なのですが、今回はこの“自動車運転における4つの目的”についてまとめてみました!

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自動車運転という活動の目的



ではこの自動車運転という活動の目的について考えてみます。
主に自動車を運転する目的としては、以下の3つに大別できます。

①業務のため
②通勤・通学のため
③日常生活のため
④レジャーのため

今回この項目分けとして参考にしたのは、自動車運転の保険料算定基準にもなる“使用目的の区分”を基礎にそこから考えてみました。

①業務のため



まずは自動車運転の目的を“業務”とする場合があげられます。
例としてはトラックバスの運転を生業にしている方が当てはまります。
仕事で車を使うという場合は、他の目的で車に乗る場合よりも大幅に運転時間や距離が長くなります。
そうすると運転機会が多くなる分、事故などのリスクが高くなってしまいます。
また、他の目的に比べて代替手段がないのも特徴です。
自動車運転を業務目的として使用している人が、障害によって継続困難になった場合は非常に現在の生活の破たんを招く要因になりやすいとも言えます。

ちなみに自動車保険の分野ではこの基準は『年間を通して週5日以上、または月に15日以上、車を業務に使用する』場合に当てはまるようです。

②通勤・通学の為



自動車運転を“通勤・通学”を目的として使用する場合も比較的自己のリスクが高い項目として扱われるようです。
生活に欠かせない仕事や学校へ移動するための欠かせない手段ですが、“①業務のため”に運転するよりは運転時間や距離が短くなります。
また特徴としては、代替手段の検討が可能ということもあげられます。
時間や手間、金銭的な負担など別の問題に移行する可能性もありますが、通勤、通学のために自動車運転をしていた人が障害を持つことで継続困難になった場合、
“公共交通機関を利用する”、“運転を他の人に頼む”といった代替手段を選択することで、目的である“通勤・通学”は達成する可能性があります。

ちなみに自動車保険の分野では、『“業務”目的以外に、年間を通じて週5日以上、または月15日以上通勤・通学に車を運転する』場合に当てはまるようです。

③日常生活のため



自動車運転を近所の“スーパーに買い物に行く”といったIADL(手段的日常生活動作)として使用するのが目的の場合は、“①業務のため”、“②通勤・通学のため”に比べると、運転機会や距離が少なくなるため事故のリスクは低いと判断されます。
この場合も比較的代替手段を設定しやすく、“公共交通機関を使用する”、“家族に頼む”、“自宅まで宅配してもらう”といった手段があげられます。
ただ、この場合“買い物”という活動を手段ではなく目的として価値を置いているクライアントの場合は少し変わってくるのが特徴です。
“新鮮な野菜を自分で選びたい”、“馴染みのスーパーで買い物ついでにお友達とおしゃべりしたい”なんて場合は、単純に代替手段を提案してもクライアントの本来の目的と乖離してしまう場合があります。
クライアントの役割や価値観といった背景にまで注目して、自動車運転で買い物に行く…というのが手段なのか目的なのかを明確にしておく必要があります。

ちなみに自動車保険の分野では、この目的の場合の運転時間や運転距離の参考基準は定められていませんが、“①業務のため”、“②通勤・通学のため”以外の人が当てはまるようです。

関連記事:『APDLとIADLの違いを考えてたら、ICFの概念に落ち着いたって話。

④レジャーのため



自動車運転を休日のレジャーの為に使用するといった、“運転自体が目的”の場合も考えられます。
この場合“③日常生活のため”と同様、運転機会や距離の少なさから事故リスクは低いと判断されます。
しかし、前述したように自動車運転自体が目的化しているため、代替手段を提案しにくくなるという特徴もあります。
障害を持って自動車運転継続が困難になったクライアントが、”車を運転するのが楽しい”、“趣味はドライブ”という場合、身勝手に「バス旅行も楽しいですよ~」とは言えなくなってしまいます。
この場合は代替手段を提案する前に、クライアントの価値観変容のステップを踏んでからでないと、作業療法士の提案に対して拒否の反応を示すことが多くなってしまいます。

自動車保険の分野では、“③日常生活のため”と同じ括りにされるようです。

大事なのは“手段”なのか“目的”なのかを見極める視点



このように作業療法士にとってクライアントの自動車運転に関わる場合、その運転という活動が他の活動のための“手段”なのか、それとも運転自体に価値を見出す“目的”なのかを明確に把握しておく必要があります。
そのためには、クライアントの生活歴や趣味、価値観、家族内・社会内での役割といったバックグラウンドも理解しておく必要があります。

まとめ

作業療法士が自動車運転の支援に関わる機会は今後ますます増えていくと思います。
もちろんクライアントの障害の種類や程度によっては自動車運転が継続困難になり、代替手段を提案する必要性が現れることも多くなると思います。
その時に今回示した自動車運転の4つの目的を基礎に、クライアントが自動車運転をどの目的を中心として考えているのか、自動車運転が“手段”なのか“目的”なのかを明確に把握しておいた上での支援でないと、
とても温度差が出来てしまうのではないでしょうか?

作業療法士は語りたい!

少し調べると、バブル経済が終わるまでは自動車は社会的なステータスの代表だったと言われてるね!
バブル経済の終わりって1991年~1993年ごろですから、いまから25年くらい前ですよね!
そう考えると今の50代以上の人は自動車の所有や運転に社会的なステータスの価値感を持っている傾向が強いのかもしれないね!
そういうクライアントに「車なんてたんなる移動手段じゃないですかー」なんては言えませんね。
その人がどんな価値観を持っているのか、ってとこまでしっかりと作業療法士は把握する必要があるんだろうね!

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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
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