福祉用具

神経難病のコミュニケーションとAACの3段階のテクニックについて

 

作業療法士が臨床で関わる疾患としては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィー、ギランバレー症候群、重症筋無力症といった神経難病も挙げられます。
今回はこういった神経難病のクライアントに対してのコミュニケーションの獲得、特にAACの3段階のテクニックについてまとめてみました!

神経難病のコミュニケーションについて



神経難病のクライアントの場合、なによりも念頭に置いて考えなければならないことは“進行性”という点です。
現段階では可能な方法も、日が経つにつれて困難になっていくことが多々あるため、一度コミュニケーション方法を獲得たり、機器を導入したとしても、定期的にアフターフォローをしていく必要があります。

ノンテク(非エイド)コミュニケーションについて

ここでは神経難病のクライアントへのノンテク(非エイド)コミュニケーション手段についての例をあげてみます。

Yes/Noサイン


これは残存している機能によってどのような方法をとるのかが変わってきます。
指でOKサインをする場合もあれば、まばたき2回で「NO」の意思表示をするといった方法もあります。
そのクライアントの残存機能に合わせた方法を試していく必要があります。

読唇(口型)


発声ができなかったとしても、構音運動機能が残存していればその口の形から何を言おうとしているのかは推測ができます。
「あいうえお」といった母音は口の形がはっきりしていることからも理解しやすいですが、子音のパ行/バ行/マ行のような両唇音、タ行/ダ行/ナ行/ラ行のような歯茎音などは、
唇や舌の先の動き方を見ることで、ある程度の推測が可能です。

空書


指先でベッドの上や相手の手に文字を書くことで意思を伝える方法です。

視線


何かを指し示す際に、手指が使用できない場合は視線で見つめて伝えることが可能です。

身振り


指さしや簡単なジェスチャーによって意思を伝えます。

残存音声


残存音声の発生が可能でしたら、読唇と合わせて意思を伝えることも可能です。

ローテクコミュニケーションエイドについて

書字


書字の機能が残存している場合はなにより先決してこの筆談の方法を選ぶとよいかもしれません。
音声に次いで、患者側も受けて側も特別な訓練が必要なく、ペンと紙、もしくはホワイトボードといった手に入りやすい物品で可能なコミュニケーション手段だからです。
ただし、前述したように症状の進行によってはペンを握ることが困難になってくる場合もあります。
そういった際にはペンホルダーといった自助具を使用し解決できるかどうか試してみる必要があります。

コミュニケーションボード

小児に対してのコミュニケーションがイラストやシンボルが主に使われていたのに対し、成人の神経難病の場合は文字を使った方ボードを使用したほうが的確に意思が伝わるケースが多いようです。

透明文字盤




画像引用:DLM コミュニケーションボード KK1250

透明な文字盤を使うことで意思を伝える方法ですが、通常のコミュニケーションボードではなく透明文字盤を使用する場合とは、患者側の上肢機能が完全に失われており、視線で文字を選択する場合がほとんどと言えます。
その方法としてはおおっく分けると2つあります。

直接選択(Eyelink)

この方法は介助者が対面で文字盤を構え、患者の視線の方向を手掛かりにお互いの目と目標の文字が一直線上に並ぶまで文字盤を動かして患者のみつめている文字を読み取っていく方法です。


順次選択

視線が動いた方向で文字のグループを決定し、徐々にその文字を絞っていき選んでいく方法(“Etan”とよばれる方法)です。
この場合、Eyelinkで使用するような文字列ではなく、文字群を大まかに分けて記してある透明文字盤を使用するといった方法もあります。

行列スキャン

介助者があ行から順に指さしをしていき、目標の行で患者が合図をして絞り込んでいく方法です。
意思伝達装置のオートスキャンを介助者が手動で行うような方法といえます。

ハイテクコミュニケーションエイドについて

VOCA

自分の声の代わりにVOCAを使用して意思を伝える方法も有効です。
特別な訓練が必要ないので機器さえあればすぐに導入できるのがメリットでしょうね。

意思伝達装置

有名な装置に『伝の心』があります。

まとめ

このようにコミュニケーション上の課題がある神経難病のクライアントに対してAACテクニックを導入する場合、「残存機能」を把握したうえで導入しやすいAACテクニックを選択する必要があります。
加えて、クライアントの疾患や障害の特徴、年齢や性格、そして家族構成や居住環境といったものにまで視野を広げ評価したうえで、「使いやすく、使い続けやすいもの」を導入することが必要と言えます!

作業療法士は語りたい!

AACテクニックにも3つのカテゴリーに分けられるんですね!
ただ、AACの場合「3つのカテゴリー」という捉え方よりは「3つの段階」と捉えたほうが導入がスムーズになるかもしれないね!
…3つの段階というのは?
特に道具や準備が必要ない「ノンテク(非エイド)」から評価していって、徐々に「ローテク」→「ハイテク」に段階を上げていくってこと!
どうしてもハイテクのAACだと準備期間もコストもかかってしまいますからね!
こういった機器を導入する場合は、作業療法士は“ボトムアップ”の心構えが必要と言えるね!
…奥が深い。
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OT愛東

臨床15年目の作業療法士。
作業療法士としてのキャリアと同時に、音楽関係、アパレル関係、ナイトビジネスなどの経験を経て現在ウェブ事業の展開も行っている。
現在は作業療法士のキャリアアップを目的としたウェブメディア『作業療法プレス』をはじめ、複数のブログメディアを運営。
また、自身の様々なキャリアから、改めて「働き方」を考え、支援するために“働きにくさをリハビリする”産業作業療法研究会を設立。
日本作業療法士協会会員・日本職業リハビリテーション学会員・両立支援コーディネーター

OT若菜

臨床3年目の新人作業療法士。
手先が器用なため、手工芸を用いたアクティビティでの介入が得意。
これといった趣味はなく休日は家でダラダラしている。
現在彼氏募集中。
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